江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2024年1月31日祈祷会(第二コリント6章、異なった福音に惹かれていく教会への手紙)

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1.和解の福音

 

・コリント教会はパウロから背き、「異なった福音」を信じようとしている。「異なった福音」とは、「割礼を受ければ救われる」、「戒めを守れば祝福される」というエルサレム教会の信仰だ。しかし、「人間が努力すれば救われる」のであれば、神は不要だ。イエスが伝えられた福音とは、「神が私たちを愛し、救ってくださる事を信じていく」ことだ。その「正しい福音に帰れ」とパウロは呼びかける。

-第二コリント5:20-21「神が私たちを通して勧めておられるので、私たちはキリストの使者の務めを果たしています。キリストに代わってお願いします。神と和解させていただきなさい。罪と何の関わりもない方を、神は私たちのために罪となさいました。私たちはその方によって神の義を得ることができたのです」。

・世は人間関係の破れの中にある。父と子、男と女、夫と妻、嫁と姑、彼らは何故争いあうのか、神と和解していないからだ。あなた方は福音を聞いたのに、まだ昔のように世と同じ生活をしている。

-第二コリント6:1-2「私たちはまた、神の協力者としてあなたがたに勧めます。神からいただいた恵みを無駄にしてはいけません。なぜなら『恵みの時に、私はあなたの願いを聞き入れた。救いの日に、私はあなたを助けた』と神は言っておられるからです。今や、恵みの時、今こそ、救いの日」。

・パウロは「自分は使徒である」という誇りを持っていたが、コリント教会からは「偽使徒」と呼ばれていた。人が真実の使徒であるかどうかは、「困窮と苦難」の中でこそ明らかになるとパウロは語る。パウロは奉仕の務めを果たすために、多くの苦難に耐えてきた。

-第二コリント6:3-7「私たちはこの奉仕の務めが非難されないように、どんな事にも人に罪の機会を与えず、あらゆる場合に神に仕える者としてその実を示しています。大いなる忍耐をもって、苦難、欠乏、行き詰まり、鞭打ち、監禁、暴動、労苦、不眠、飢餓においても、純真、知識、寛容、親切、聖霊、偽りのない愛、真理の言葉、神の力によってそうしています」。

・パウロは事実、あらゆる種類の苦難を経験した(11:24-27)。しかし同時に苦難に勝つ力を神からいただいた。神に導かれている、そのことこそが自分が使徒である証明ではないかと彼は語る。

-第二コリント6:8-10「栄誉を受ける時も、辱めを受ける時も、悪評を浴びる時も、好評を博する時にもそうしているのです。私たちは人を欺いているようでいて、誠実であり、人に知られていないようでいて、よく知られ、死にかかっているようで、このように生きており、罰せられているようで、殺されてはおらず、悲しんでいるようで、常に喜び、物乞いのようで、多くの人を富ませ、無一物のようで、すべてのものを所有しています」。

・キリストの弟子が、主が負われた十字架を負うのは当然なのだ。それは忍苦ではなく喜びなのだ。

-ローマ5:2-4「このキリストのお陰で、今の恵みに信仰によって導き入れられ、神の栄光にあずかる希望を誇りにしています。そればかりでなく、苦難をも誇りとします。私たちは知っているのです、苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを」。

 

2.コリント教会との和解の願い

 

・パウロは使徒の誇りを捨て、率直に「あなた方と和解したいのだ」と訴える。

-第二コリント6:11-13「コリントの人たち、私たちはあなたがたに率直に語り、心を広く開きました。私たちはあなたがたを広い心で受け入れていますが、あなたがたは自分で心を狭くしています。子供たちに語るように私は言いますが、あなたがたも同じように心を広くしてください」。

・14節から突然文脈が変わる。6:13は7:2につながり、間に6:14-7:1が挿入されている。6:14-7:1の挿入句が告げることは、不信者との断絶と信仰者の聖化だ。失われた「涙の手紙」がここに編集されているようだ。

-第二コリント6:14-15「あなたがたは、信仰のない人々と一緒に不釣り合いな軛につながれてはなりません。正義と不法とにどんなかかわりがありますか。光と闇とに何のつながりがありますか。キリストとベリアルにどんな調和がありますか。信仰と不信仰に何の関係がありますか」。

・牛とろばを、同じくびきにつなげば統制が取れなくなる。信仰者が不信仰者と交われば、信仰が曲がる。パウロはエルサレム教会からの伝道者を偽使徒、サタンと呼び(11:13)、彼らと縁を切れ(あの者どもの中から出て行き、遠ざかるように)と勧める。激しい言葉だ。

-第二コリント6:16-7:1「神の神殿と偶像にどんな一致がありますか。私たちは生ける神の神殿なのです・・・だから、あの者どもの中から出て行き、遠ざかるようにと主は仰せになる。『そして、汚れたものに触れるのをやめよ。そうすれば、私はあなたがたを受け入れ、父となり、あなたがたは私の息子、娘となる』と全能の主は言われる・・・愛する人たち、私たちは、このような約束を受けているのですから、肉と霊のあらゆる汚れから自分を清め、神を畏れ、完全に聖なる者となりましょう」。

・パウロはこの挿入句で、「エルサレム教会と縁切りしなさい」と勧めている。このパウロの激しさが、彼を誤解させる一因になった。しかし、この激しさは、人々への燃える愛から来ている「このままではあなたがたは滅ぶ。滅ぶな。神と和解させていただきなさい」とパウロは叫んでいる。

-第二コリント7:2-3「私たちに心を開いてください。私たちは誰にも不義を行わず、だれをも破滅させず、誰からもだまし取ったりしませんでした。あなたがたを責めるつもりでこう言っているのではありません」。

 

3.第二コリント6章の黙想

 

・パウロは「あなた方を生んだのは私だ」と言い、「あなた方のためなら私自身を使い果たしてもよい」とさえ語る。しかし、いつの間にか、人々の気持ちが、パウロから離れて行った。パウロはコリントを再訪し、話し合いの場を持つが、事情は好転せず、逆にパウロは非難・中傷を浴び、傷ついて、エペソに戻ってきた。そのエペソから、パウロは「涙の手紙」と呼ばれる問責の手紙を書く。コリント第一の手紙と第二の手紙の間に書かれたとされる手紙は現存していないが、パウロに対して侮辱を加えた人物に対し、教会からの除名を求めるような激しさを持っていたとされる。パウロは教会員を責めるような手紙を出したことを後悔し、苦しむが、やがて手紙を見たコリントの人々が、パウロに謝罪し、悔い改めた事を知り、一転して、喜びに満たされる。

-第二コリント7:10「神の御心に適った悲しみは、取り消されることのない救いに通じる悔い改めを生じさせ、世の悲しみは死をもたらします」。

・「神は悲しみさえも良きものに変えて下さる」、このことを知る時、人生の意味が全く変わってくる。私たちの人生がどのような人生であっても、神はこの人生を良きものとして下さる。この一点を信じる者は、苦難が希望に変えられる。実例を通して考えてみたい。

-弁護士の岡村勲氏は山一証券の顧問弁護士だったが、山一証券の破綻で損をした投資家の逆恨みで妻を殺された。彼は犯罪被害者になって初めて、自分がこれまで知らなかったことを知ったと語る「1997年、仕事の上で私を逆恨みした男によって妻が殺害されました。弁護士生活38年目にして犯罪被害者の遺族となって、被害者や家族がどんなに悲惨で、不公正な取り扱いを受けているかということを、初めて知りました。加害者の人権を守る法律は詳細に整備されているのに、被害者の権利を守る法律はどこにもありません・・・経済面では加害者は一切国の費用で賄い、弁護士も国の費用で依頼できますが、被害者は、被った傷害の医療、介護費、生活費はすべて自己負担なのです・・・私たちは『犯罪は社会から生まれ、誰もが被害者になる可能性がある以上、犯罪被害者に権利を認め、医療・生活保障・精神的支援など被害回復のための制度を創設することは、国や社会の義務である』と考えます」(犯罪被害者の会設立趣意書から)。

-岡村氏が加害者の裁判記録の閲覧を裁判所に申請すると、「被害者に閲覧権はない」と断られた。岡村氏は2000年に文藝春秋に寄稿し(「私は見た『犯罪被害者』の地獄絵」)、それが多くの人の感動を呼び、犯罪被害者救済の運動が広がり、2004年に犯罪被害者基本法、2007年に刑事訴訟法改正(被害者の裁判参加の創設)がなされ、事態は大きく改善する。岡村さんは語った「妻があんな形で殺されたのは、妻が自らの命を犠牲にして、被害者のことを何にも知らなかった私に、『こんな悲惨なことがあるのよ』と教えてくれたのではないか。これだけ弁護士がいて、誰も犯罪被害者の悲惨な状況に思いがいたらなかった」(東大作「犯罪被害者の声が聞こえますか」)。

・岡村弁護士に与えられた苦難は、犯罪被害者として苦しむ人々を救済する成果を生み出した。「妻があんな形で殺されたのは、妻が自らの命を犠牲にして、被害者のことを何にも知らなかった私に、『こんな悲惨なことがあるのよ』と教えてくれたのではないか」という言葉は涙なしには聞けない。ただ、これは誰にもできることではないだろう。しかし苦難に意味を見出す時、その苦難さえ良きものに変わりうる。「神の御心に適った悲しみは、取り消されることのない救いに通じる悔い改めを生じさせ、世の悲しみは死をもたらします」、この言葉は深い意味を持つ。

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