江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2023年3月15日祈祷会(使徒言行録6:1-15、七人の執事の選出)

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1.ステファノたち七人の執事選出

 

・共同体が成長するにつれて、教会内部の対立が表面化してきた。もめごとの原因は「弟子の数の増加」、つまり教会の成長にあったとルカは記す。教会は最初数十人の集まりだったが、ペンテコステを機に改心者が多く与えられ、おそらくは数百人規模にまで成長してきた。数十人でうまくいっていたシステムが数百人になれば機能しなくなる、だからもめごとが起こったとルカは記す。

-使徒6:1「そのころ、弟子の数が増えてきて、ギリシア語を話すユダヤ人から、ヘブライ語を話すユダヤ人に対して苦情が出た。それは、日々の分配のことで、仲間のやもめたちが軽んじられていたからである」。

・もめごとは「ギリシア語を話すユダヤ人」と、「ヘブライ語を話すユダヤ人」の間で起こった。最初の弟子たちは「ヘブライ語を話すユダヤ人」、ユダヤで生まれ、育ってきたユダヤ人だった。その後、「ギリシア語を話すユダヤ人」たち、ヘレニストと呼ばれるギリシア系ユダヤ人たちも弟子の群れに加わってきた。イスラエルは繰り返し外国勢力に支配され、そのたびに民が散らされ、多くのユダヤ人が海外で暮らしていた。そのディアスポラの子孫たちの一部がユダヤに戻ってきていた。彼らは外国生まれの二世、三世であり、言語も習慣も国内のユダヤ人と異なる。何よりも、ギリシア思想の影響を受けて神殿や律法に対する考え方が、地元のユダヤ人たちとは異なり、地元のユダヤ人たちと対立するようになって来た。

・「日々の分配のことで、仲間のやもめたちが軽んじられていた」(6:1b)。普段からの反感が、食物の配給をめぐって不満となって出た。初代教会においては原始共産制といわれる財産共有が行われ、裕福な人々は土地や家を売って共同体に捧げ、教会ではそれらの資金を基に貧しい人々への配給を行っていた。その配給は教会の指導者である使徒たちが決定し、実務は使徒の下にあるユダヤ人たちが行っていた。人間の業だから、親しい人には多めに、そうでない人には少なめに配給していたのであろう。ヘレニストたちは不満を持った。教会は信仰共同体だが、実は地上の事柄、特にお金をめぐる争いで混乱することが多い。ヘレニストたちはユダヤ教の伝統から自由であった故に、地元のユダヤ人とは異なる信仰を持っており、食物の配給問題を契機に、その対立が表面化した。使徒たちはこの対立を賢明に解決した。祈りとみ言葉の奉仕は使徒たちに委ね、新しく選出された執事が食事の配分等の雑事を分担した。

-使徒6:2-5「そこで、十二人は弟子をすべて呼び集めた『私たちが、神の言葉をないがしろにして、食事の世話をするのは好ましくない。それで、兄弟たち、あなたがたの中から、”霊“と智恵に満ちた評判の良い人を七人選びなさい。彼らにその仕事を任せよう。私たちは、祈りと御言葉の奉仕に専念することにします。』」

・使徒たちは問題を軽視せず、そのことを教会の機能充実を図る機会として信徒集会を開催し、「日々の分配の業を担う奉仕者」を選ぶように提案した。ここに教会内において日常の世話をする「執事」と呼ばれる人たちが生まれた。日々の分配の「分配」という言葉、また食事の世話の「世話」という言葉は、原文では同じ「ディアコニア」という言葉が用いられている。その「奉仕」を担うものが「ディアコノス=執事」と呼ばれるようになる。

-使徒6:6-7「一同はこの提案に賛成し、信仰と聖霊に満ちている人ステファノと、ほかにフィリポ、プロコロ、ニカノル、ティモン、パルメナ、アンティオキア出身の改宗者ニコラオを選んで、使徒たちの前に立たせた。使徒たちは、祈って彼らの上に手を置いた。こうして、神の言葉はますます広まり、弟子の数はエルサレムで非常に増えていき、祭司も大勢この信仰に入った。」

・選ばれた執事たちはいずれもギリシア名を持つ者たちだった。「ヘブライ語を話すユダヤ人」たちに偏っていた組織が、「ギリシア語を話すユダヤ人」たちに配慮することにより、教会のバランスが保たれ、それが将来の飛躍の源泉となっていった。七人の執事が選ばれた時、使徒たちは「祈って彼らの上に手を置いた」。祈って手を置く、「按手」である。教会では人をある務めに任命するときに按手を行う。それは聖霊が働いて、その人が与えられた奉仕の務めを果たすことが出来る力が与えられるようにとの祈りだ。この執事の選任と按手を通して、教会内の指導者はどのようにして任職されるべきかが私たちに示されている。「指導者は下から生まれる」、執事の選任は信徒総会の総意でなされる。教会に仕えるために、教会が適任と思われる人々を選出した。同時に「指導者は上から任職される」、按手を通して主からの賜物をいただき、任職される。教会の指導者は「下から選ばれ、上から任職される」。

 

2.ステファノの逮捕

 

・執事に選ばれた一人ステファノは語る賜物を与えられ、戒律や神殿の伝統から自由な信仰を持っていた故に、保守的なユダヤ教徒から憎まれた。ただ知恵と聖霊によって語るステファノに対抗できず、論破されてしまった。

―使徒6:8-10「さて、ステファノは恵みと力に満ち、すばらしい不思議な業としるしを民衆の間で行っていた。ところが、キレネとアレクサンドリアの出身者で、いわゆる『解放された奴隷の会堂』に属する人々、またキリキア州とアジア州出身の人々などのある者たちが立ち上がり、ステファノと議論した。しかし、彼が知恵と“霊”とによって語るので、歯が立たなかった。」

・議論で負けた彼らは、裏から手を回し、人々を煽り立て、ステファノを捕えさせ、最高法院へ連行した。

―使徒6:11-12「そこで、彼らは人々を唆して、『私たちは、あの男がモ-セと神を冒涜する言葉を吐くのを聞いた』と言わせた。また、民衆、長老たち、律法学者たちを扇動して、ステファノを襲って捕らえ、最高法院へ引いて行った。」

・虚偽の証言が取り上げられる背景には、ヘレニスト・キリスト者に対する反感があった。

―使徒6:13-15「そして、偽証人を立てて、次のように訴えさせた。『この男は、この聖なる場所と律法をけなして、一向にやめようとしません。私たちは、彼がこう言っているのを聞いています。「あのナザレの人イエスは、この場所を破壊し、モ-セが我々に伝えた慣習を変えるだろう。」』最高法院の席に着いていた者は皆、ステファノに注目したが、その顔はさながら天使のように見えた。」

・国内のユダヤ人である使徒たちはイエスの教えをまだユダヤ教の枠内でとらえ、神殿に行って祈り、割礼を守り、律法を大事にしていた。だからユダヤ教側からの迫害はなかった。しかしヘレニストたちは神殿やユダヤ教祭儀から自由であり、そのためユダヤ主義者から憎しみを受け、迫害された。ステファノは「神殿は崩れ去るものであり、律法はイエスが来られてその意味を変えた」と述べる。これは神殿と律法を大事にするユダヤ教原理主義者には耐えられない言葉だった。イエスの福音を正しく継承したのは「使徒たち」ではなく、「ギリシア語を話すユダヤ人」たちだった。

 

3.対立を超えて成長する

 

・捕らえられたステファノは最高法院で証言する。彼の証言はイエスをメシアと認めないユダヤ教に対する激しい批判であり、ユダヤ教徒にとっては放置出来ない攻撃であった。

-使徒7:52-53「あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、一人でもいたでしょうか。彼らは、正しい方が来られることを預言した人々を殺しました。そして今や、あなたがたがその方を裏切る者、殺す者となった。天使たちを通して律法を受けた者なのに、それを守りませんでした」。

・ステファノは殺され、教会に対する大迫害が始まる。しかし、迫害でエルサレムを追われたのはヘレニストたちだけであり、ペテロたち伝統主義者はエルサレムに留まっている。使徒たちはユダヤ教の枠内にいたため、迫害する必要がなかったからである。

-使徒8:1「その日、エルサレムの教会に対して大迫害が起こり、使徒たちのほかは皆、ユダヤとサマリアの地方に散って行った」。

・散らされたヘレニストたちはその先々で福音を述べ伝える。世界宣教を担ったのは、十二使徒たちではなく、迫害を受けたヘレニストたちであった。神は迫害さえも善きものに変えてくださる。

-使徒8:4-5「散って行った人々は、福音を告げ知らせながら巡り歩いた。フィリポはサマリアの町に下って、人々にキリストを宣べ伝えた」。

・教会内で、ギリシア系とユダヤ系の人々の間に対立が起こり、牧会の必要性から執事が選ばれた。執事たちは教会の役割を担うことを通してその信仰が強められ、そのことによってユダヤ教原理主義の人々からの迫害を招き、エルサレムを追われた。しかし迫害を通して福音がエルサレムから異邦の地に述べ伝えられるようになった。紀元70年のエルサレム滅亡後、エルサレム教会は滅び、異邦人教会が主力として福音宣教を担っていく。

・神は教会内の争いを福音伝道の力に変えられた。このことは私たちに、「教会内の争いや対立を恐れるな」と教える。教会には必ず争いや対立が起きる。起きた時にはそれを隠さないで表に出す。具体的には執事会や信徒会での討議を求める。そのことによって、主は必要な道を示して下さる。神は悪をも善に変えられる(創世記50:19-20)方であり、愚かな私たちの争いをも良きものに変えてくださる方だ。この方を信じて、私たちはこの教会を形成していく。

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