江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2021年6月16日祈祷会(マタイ12:33-50、しるしを求める人々)

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1.木とその実

 

・ファリサイ人はイエスの為された悪霊追放を、悪霊の頭の仕業と非難した。しかし、イエスの業は弱者を救うためのものであり、その業が良い実を結んでいることは、癒された人々の感謝と喜びでわかる。イエスは「木の良し悪しはその実で分かる」と言われた。

-マタイ12:33-34「木が良ければその実も良いとし、木が悪ければその実も悪いとしなさい。木の良し悪しは、その結ぶ実で分かる。蝮の子らよ、あなたたちは悪い人間であるのに、どうして良いことが言えようか。人の口からは、心にあふれていることが出て来るのである」。

・イエスはファリサイ人らを「蝮の子らよ」と呼び捨てにされる。彼らの言動が悪意という毒を含んでいるからだ。イエスが悪霊つきの人を癒しても、彼らはイエスを中傷するだけで、癒された者の喜びを共には喜ばない。イエスは「善い倉と悪い倉の例話」で、ファリサイ人を戒められた。

-マタイ12:35-37「善い人は、良いものを入れた倉から良いものを取り出し、悪い人は、悪いものを入れた倉から悪いものを取り出してくる。言っておくが、人は自分の話したつまらない言葉についてもすべて、裁きの日には責任を問われる。あなたは自分の言葉によって義とされ、また、自分の言葉によって罪ある者とされる。」

 

2.人々はしるしを欲しがる

 

・イエスが悪霊を追い出された時、ファリサイ人は悪霊の力で癒したと批判した。それに対してイエスは「神の力がここに働いている」と反論された。ファリサイ人は納得せず言う「あなたが神から遣わされたメシアならば、そのしるしを見せよ」。「あなたが救い主だと主張するなら、その証拠を見せて欲しい。それが納得できるものだったら信じよう」と彼らは要求し、イエスは拒否される。

-マタイ12:38-39「すると、何人かの律法学者とファリサイ派の人々がイエスに、『先生、しるしを見せてください』と言った。イエスはお答えになった。『よこしまで神に背いた時代の者たちはしるしを欲しがるが、預言者ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられない』」。

・ヨナのしるしとは、預言者ヨナが三日三晩魚の腹の中にいて、そこから救い出された事を指す。人の子、イエスも三日三晩地の底にいた後で救い出される。ヨナの時代の人々はヨナの説教を聞いて悔い改めたが、あなた方はヨナに勝る者の説教と業を見ながら信じない。

-マタイ12:40-41「ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子は三日三晩、大地の中にいることになる。ニネベの人たちは裁きの時、今の時代の者たちと一緒に立ち上がり、彼らを罪に定めるであろう。ニネベの人々は、ヨナの説教を聞いて悔い改めたからである。ここに、ヨナにまさるものがある」。

・南の女王とはシバの女王のことである(列王記上10:1-10)。彼女はソロモンの知恵を聞こうとして、地の果てから旅をしてエルサレムに来た。しかし、イエスの時代の人々は、「ソロモンよりもまさった」イエスを目の前にしながら、その宣教を聞こうとしなかった。

-マタイ12:42「また、南の国の女王は裁きの時、今の時代の者たちと一緒に立ち上がり、彼らを罪に定めるであろう。この女王はソロモンの知恵を聞くために、地の果てから来たからである。ここに、ソロモンに勝るものがある。」

・しるしを求める信仰とは、救いの保証を求める信仰だ。「納得できたら信じよう」という時、それを判定するのは自分だという主張を含んでいる。私たちの中にも、しるしを求める信仰がある。教会に来て、礼拝し、献金もしているのだから、救いを与えられて当然だ、病気が癒されて当然だと思っている。ところが病気は治らない、幸いどころか災いが来ると、私たちはつぶやく「神は本当におられるのか」。人々は教会に来ても何も変わらない、神に対してしるし=救いの保証を求め続け、与えられないなら去って行く。しるしを求める時、信仰が取引になってしまう。教会を通して与えられるものは「御言葉」だ。神は聖書を通して、あるいは説教を通して、御言葉を語られ、私たちはそれを聞く。その言葉が私たちの願いと異なっていても、聞いて、従っていく。その時、神は喜んで下さる。それが教会で与えられる救いだ。それがわからない時、人は教会から離れていく。

・12:45以下の喩えは、人々が、信仰の迷いから、あのラビ、このラビと求め歩き、さらにヨハネに、あるいはイエスにと右往左往するが、どこへ行っても信仰に身が入らず、真の信仰を得られないまま終わってしまうという喩えであろう。迷い迷って信仰を無くし、空き家のようになった心に、世の物欲や快楽が押し入り、人の心は前より悪い状態になる。教会から教会に遍歴する現代の信徒に対する戒めでもある。

-マタイ12:43-45「汚れた霊は人から出て行くと、砂漠をうろつき、休む場所を探すが、見つからない。それで、『出て来たわが家に戻ろう』と言う。戻ってみると、空き家になっており、掃除をして、整えられていた。そこで、出かけて行き、自分より悪いほかの七つの霊を一緒に連れて来て、中に入り込んで、住み着く。そうなると、その人の状態は前よりも悪くなる。この悪い時代の者たちもそのようになろう。」

 

3.イエスの母、兄弟とはだれか

 

・ヨハネは「(イエスの)兄弟も、イエスを信じていなかった」(ヨハネ7:5)と記し、マルコでは家族が、イエスを「気が変になった」と思い、引き止めたと記す(マルコ3:21)。マタイは記す。

-マタイ12:46-50「イエスがなお群衆に話しておられるとき、その母と兄弟たちが、話したいことがあって外に立っていた。そこで、ある人がイエスに、『御覧なさい。母上と御兄弟たちが、お話ししたいと外に立っておられます』と言った。しかし、イエスはその人にお答えになった。『私の母とはだれか。私の兄弟とはだれか。』そして、弟子たちを指して言われた。『見なさい。ここに私の母、兄弟がいる。だれでも、私の天の父の御心を行う人が、私の兄弟、姉妹、また母である。』」

・イエスは母や兄弟は「イエスは気が変になっている」として受け入れなかった。それにもかかわらず、イエスは神の国の宣教を続けられた。それはイエスの中に「神の国が来た、世の中が根本から変わろうとしている」という緊迫感があったからであろう。イエスは実の家族に対して、「私はあなた方を知らない」と言われた。これは血縁を大事にし、家族が共同体として暮らしていたユダヤ人には受け入れがたい言葉であり、その過激さえ故に記憶され、伝承されたイエスの肉声と思われる。イエスは彼の話を聞いていた人々の顔を見つめながら言われる「神の御心を行う人こそ、私の兄弟、姉妹、また母なのだ」。血の繋がった者だけが家族ではなく、信仰で繋がった家族、「神の家族」がここにいると宣言された。

・イエスの家族はイエス生前には、彼を受け入れることは出来なかった。イエスは彼に従う弟子たちにも家族を捨てるように求められた「私よりも父や母を愛する者は、私にふさわしくない」(マタイ10:37)、「私のため、また福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子供、畑を捨てた者はだれでも・・・後の世では永遠の命を受ける」(マルコ10:29-30)等の厳しい言葉の背景には、実の家族に理解されないイエスの悲しみがある。イエスが捕らえられ、処刑された時も、家族はその場にいなかった。しかしそれで終わらなかった。神はイエスを死から復活させられ、この復活を通して、イエスこそ神の子と信じる群れが起こされ、教会を形成して行く。その群れの中に、かつてはイエスを受け入れることが出来なかったイエスの家族も招かれている。

-使徒言行録1:13-14「彼ら(弟子たち)は都に入ると、泊まっていた家の上の部屋に上がった・・・彼らは皆、婦人たちやイエスの母マリア、またイエスの兄弟たちと心を合わせて熱心に祈っていた」。

・十字架と復活の出来事が、かたくなだったイエスの家族たちの心を砕いていった。イエスの弟ヤコブは復活のイエスと出会って変えられ、やがてはエルサレム教会の指導者となり、紀元62年にはユダヤ教徒の迫害の中で殉教している。かつてはイエスに激しく反発していた弟ヤコブが、「イエスの名」のために死んでいく者になった。彼は後に手紙の中で述べる。「神と主イエス・キリストの僕であるヤコブ」(ヤコブ1:1)。十字架と復活が肉の家族を超える新しい家族を形成するという出来事が起こった。

・神の家族が集う場所、それが教会だが、地上の教会は不完全な群だ。イエスの下に集まった人々が十字架の現場では逃げ去ったように、教会に集まった人々の中にもやがて教会を離れる人もいる。しかし、離散した弟子たちが再び集められたように、教会を離れた人々もやがて戻って来る。その戻り先がこの教会でなくとも良い。また、教会に集うすべての人々が互いに愛し合っているわけではない。嫌いな人もいるだろうし、無理解や仲違いもある。それでもなお、「神の御心を行う人こそ、私の兄弟、姉妹、また母なのだ」という御言葉は崩れない。「神の御心を行う人」とは、イエスに繋がることを通して神の家族とされた人々であり、イエスを通して神と繋がる縦の関係が基本になる家族であり、神と繋がるからこそ、お互いが神の子として家族になり、お互い同士の横の関係が崩れても、家族関係は崩れない。私たちは、「血筋によらず、ただ神によって生まれた」者として、イエスの兄弟、姉妹、として生き、「神の家族」という共同体を形成していく。

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