1.終末は来たと混乱する教会への手紙
・テサロニケ教会のある人々は、迫害の激化の中で「すぐに終末が来る。いや、来たのだ。仕事をしている時などではない」と熱狂し、教会を混乱に巻き込んでいた。パウロはそのような教会を心配し、惑わされるなと伝える。
−?テサロニケ2:1-2「主イエス・キリストが来られることと、その御許に私たちが集められることについてお願いしたい。霊や言葉によって、あるいは、私たちから書き送られたという手紙によって、主の日は既に来てしまったかのように言う者がいても、すぐに動揺して分別を無くしたり、慌てふためいたりしないでほしい」。
・世の終わりの時には悪の力が強まり、信仰者は迫害されるだろうとイエスは言われた。ある者たちは、自分たちに加えられる迫害や弾圧を、終わりの時のしるしと見たのかもしれない。
−マルコ13:6-13「私の名を名乗る者が大勢現れ、『私がそれだ』と言って、多くの人を惑わすだろう。・・・民は民に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に地震があり、飢饉が起こる。・・・あなたがたは地方法院に引き渡され、会堂で打ちたたかれる。・・・兄弟は兄弟を、父は子を死に追いやり、子は親に反抗して殺すだろう。 また、私の名のために、あなたがたはすべての人に憎まれる」。
・人はこの世の成り行きから終末を考え、戦争・地震・飢饉・迫害等をその前兆と考える。歴史上、終末運動、あるいは再臨運動が繰り返されてきた。しかし、それらは前兆でも何でもない、終末は悪の力を神が滅ぼされる時なのだとパウロは戒める。
−?テサロニケ2:3-8「まず、神に対する反逆が起こり、不法の者、つまり、滅びの子が出現しなければならないからです。この者は、すべて神と呼ばれたり拝まれたりするものに反抗して、傲慢にふるまい、ついには、神殿に座り込み、自分こそは神であると宣言するのです。・・・今、彼を抑えている者があることは、あなたがたも知っているとおりです。それは、定められた時に彼が現れるためなのです。不法の秘密の力は既に働いています。ただそれは、今のところ抑えている者が、取り除かれるまでのことです。その時が来ると、不法の者が現れますが、主イエスは彼を御自分の口から吐く息で殺し、来られるときの御姿の輝かしい光で滅ぼしてしまわれます」。
・これらの表現を文字通りにとる必要はない。文字通りに取る時、過ちが起こる。これは旧約以来の黙示的表現であり、私たちの知りうる範囲を超えている。終末や死の問題を無理に解釈する必要はない。
−?コリント13:12「私たちは、今は、鏡におぼろに映ったものを見ている。だがそのときには、顔と顔とを合わせて見ることになる。私は、今は一部しか知らなくとも、そのときには、はっきり知られているようにはっきり知ることになる」。
2.どのように終末を迎えるべきなのか
・人々は悪の支配が終わって、神の国が来る事を待望する。イエスの弟子たちもそうだった。イエスは言われた「その時は神が定められるのであるから、あなたたちはそれを待て。そしてやるべき事をしなさい」。
−使徒行伝1:6-8「使徒たちは集まって『主よ、イスラエルのために国を建て直してくださるのは、この時ですか』と尋ねた。イエスは言われた『父が御自分の権威をもってお定めになった時や時期は、あなたがたの知るところではない。あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至るまで、私の証人となる』」。
・終末は信じない者には怖れかも知らないが、信仰者には救いの完成の時だ。その事をあなたがたは私の福音宣教を通して知り、受け入れたではないか。
−?テサロニケ2:13-14「あなたがたを聖なる者とする“霊”の力と、真理に対するあなたがたの信仰とによって、神はあなたがたを、救われるべき者の初穂としてお選びになったからです。神は、このことのために、即ち、私たちの主イエス・キリストの栄光にあずからせるために、私たちの福音を通して、あなたがたを招かれたのです」。
・神に招かれたものに相応しく生きよ。つまらぬうわさや宣伝に迷わされることなく、教えを守って生きなさい。
−?テサロニケ2:15「兄弟たち、しっかり立って、私たちが説教や手紙で伝えた教えを固く守り続けなさい」。
・混乱期には、「今は地上の仕事などしている時ではない」とか「終末に備えて行動すべきだ」という者が必ず現れる。その人々に、「毎日の生活の中で御言葉に従って生きることこそ求められることである」を伝えていく。
−?テサロニケ3:12-15「自分で得たパンを食べるように、落ち着いて仕事をしなさい。・・・たゆまず善いことをしなさい。・・・従わない者がいれば、その者には特に気をつけて、かかわりを持たないようにしなさい。そうすれば、彼は恥じ入るでしょう。しかし、その人を敵とは見なさず、兄弟として警告しなさい」。