江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2022年12月1日祈祷会(詩篇127編、主が建ててくださるのでなければ)

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1.主が建ててくださるのでなければ

 

・詩篇127編はバビロン捕囚からの帰還者がエルサレム神殿再建中に歌った詩とされる。帰還した人々は廃墟となった神殿再建に取り組んだが、多くの困難の中で、主が神殿再建を許して下さった事に感謝した。

-詩篇127:1「都に上る歌。ソロモンの詩。主御自身が建ててくださるのでなければ、家を建てる人の労苦はむなしい。主御自身が守ってくださるのでなければ、町を守る人が目覚めているのもむなしい」。

・「ソロモンの歌」と表題があるのは、ソロモンが最初に神殿を建てたからであろう。しかし、その神殿は戦火で焼かれ、エルサレムの城壁も破壊された。神の護りがなければ町は焼け、神殿は廃墟となる。人々は敗戦と捕囚を通じてそれを知った。家を建て、町を守るのは人であるが、それは神の許しのもとになされること、人はそれを忘れて朝早くから夜遅くまで働き、焦慮してパンを食べる。それは虚しいではないかと詩人は歌う。

-詩篇127:2「朝早く起き、夜おそく休み、焦慮してパンを食べる人よ。それは、虚しいことではないか、主は愛する者に眠りをお与えになるのだから」。

・家を建て、町を守り、生活のために働く。仕事が生活を支えるが、仕事だけでは消耗してしまう。「せめて夜は安め、神の与える眠りこそ祝福ではないか」と詩人は訴える。現代人は夜を忘れ、コンビニは24時間営業し、犯罪の温床となり、過剰電力消費を招いている。売上拡大=利益拡大という経済論理が優先しているからだ。思い煩うなというイエスの教えを社会化するために何をしたら良いのだろうか。

-マタイ6:34「だから、明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」。

 

2.人間を救うのは人間ではない

 

・家を建てるのは家族を形成するためだ。家庭を持つ者に子が与えられる。子こそ主より与えられる嗣業、財産である。私たちの生活は仕事により支えられるが、家族によって整えられる。

-詩篇127:3「見よ、子らは主からいただく嗣業。胎の実りは報い」。

・子は文字通り働き手、財産、であり、老後を支える人材であった。子を詩人は「勇士の手の中の矢」と歌う。

-詩篇127:4-5「若くて生んだ子らは、勇士の手の中の矢。いかに幸いなことか、矢筒をこの矢で満たす人は。町の門で敵と論争するときも恥をこうむることはない」。

・現代人は子を産まなくなった、あるいは産めなくなった。合計特殊出生率は1.35人となり、日本は人口減少社会になり、50年後人口は現在の13,000万人が、9,000万人まで減少するという。子が社会にあふれる喜びを現代の日本人は無くしてしまった。その原因の一つは労働における不平等であろう。今日労働人口の40%は非正規であるが、非正規という働き方では家庭を維持する安定収入が望めない。

-創世記1:27-28「神は御自分にかたどって人を創造された・・・神は彼らを祝福して言われた『産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ』」。

・同時に現代社会においては離婚が一般化し、それに伴い、親と子との関係も希薄化する。「父母を敬え」という戒めは今日では通用しにくい。

-出エジプト20:12「あなたの父母を敬え。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる」。

・この詩にあふれる考え方は「人間を豊かにするのは主の祝福である。人間が苦労しても何も加えることはできない」(箴言10:22)という信仰である。現代人はこの信仰を失くした。今回の東北大震災に際して日本赤十字社は、「人間を救うのは人間である」というポスターを作ったが、そうだろうか。

-日本赤十字社ホームページから「赤十字国際会議は、4年に1度、世界中の赤十字関係者とジュネーブ条約締約国政府の代表が参加して開催される赤十字の最高意思決定機関です。今回で30回を数える同会議は、昨年11月26日からスイスのジュネーブで開催され、会議の最後に “Together for humanity”と題したスローガンが採択され、参加者が今後4年間の取り組みについて決意を新たにしました・・・Together for humanityのスローガンにあわせて日本赤十字社が打ち出したキャッチコピーが「人間を救うのは、人間だ」です。赤十字の原点、すなわち「人道」という普遍的なテーマを世の中の人々と協力して取り組んでいくというメッセージをこめて、日本赤十字社は「人間を救うのは、人間だ。Together for humanity」をこれから広く発信していきます」。

・これは聖書の思想と対立する考え方だ。本質的に利己的な人間は他者に無関心なのではないか。東北震災に涙する人間が自己の町での瓦礫置き場の設置には反対する。放射能危険があるからだ。人間の本質はエゴであり、人は罪人であることを認識しない時、物事は進まないのではないか。

-ローマ3:10-18「正しい者はいない。一人もいない。悟る者もなく、神を探し求める者もいない。皆迷い、だれもかれも役に立たない者となった。善を行う者はいない。ただの一人もいない。彼らののどは開いた墓のようであり、彼らは舌で人を欺き、その唇には蝮の毒がある。口は、呪いと苦味で満ち、足は血を流すのに速く、その道には破壊と悲惨がある。彼らは平和の道を知らない。彼らの目には神への畏れがない」。

 

3.詩篇127編の黙想

 

・127編前半では、「主によって支えられた家庭の祝福」が、後半では「主によって子が授かった家庭の祝福」が歌われる。月本昭男はこの詩は、新しく家庭を築き始めた若い夫妻に対する祝婚歌ではなかったかと語る。神殿祭司からエルサレム神殿に詣でる新郎新婦にこれが歌い与えられた可能性が高いとする。

・子が与えられるのは祝福である。しかし、子が与えられない時、その人は神の祝福にないのかという疑念が起こる。古代社会では、子を持てない女性は「恥ずべき女」とされていた。

-ルカ1:24-25「その後、(ヨハネの母)エリサベトは身ごもって、五か月の間身を隠していた。そして、こう言った。『主は今こそ、こうして、私に目を留め、人々の間から私の恥を取り去ってくださいました。」

・信仰の祖と言われたアブラハム夫妻も不妊により苦しめられている。アブラハムが100歳、サラが90歳の時に、子を与えるとの神の約束があったが、アブラハムは信じない「百歳の者にどうして子が生れよう。サラはまた九十歳にもなって、どうして産むことができようか」(創世記17:17)。妻のサラも言う「私は衰え、主人もまた老人であるのに、私に楽しみなどありえようか」(創世記18:12)。

・現代の不妊家庭では自分たちの子を持つために、不妊治療に取り組み、その結果、働く女性が仕事を辞めたり、短期雇用に変えたりするが、必ずしも子が与えられるわけではない。今日では第三者から精子・卵子の提供を受け体外受精させた胚を利用して、子どもをもつことも技術的には可能である。しかし、その時、誰が親であるかをめぐって様々な問題が生まれている。

・自分の子でなければいけないのか、社会の子という視点からは、養子縁組にもっと積極的に取り組むべきではないかと思える。奈良バプテスト教会ではそのためにNPO法人を作り、第二種社会福祉登録をして、特別養子縁組の働きと妊娠で悩みを抱える人の相談業務を始め、奈良県より養子縁組あっせん事業許可を受け事業を行っている。これも教会の業の一つであろう。

・パール・バックは宣教師の子として中国に育ったが、子供時代に見た中国の貧しい母子の死について回想する「今、自分の国に住み、クリスマスの喜びの中で、私は彼らを想い出す。あの母と子は物乞いではなかった。泥棒でもなく、浮浪者でもなかった。ただ、『身を横たえる場所がなかった』のである・・・クリスマスが来るたびに私はあの母と子を思い出し、改めて誓いを新たにする。彼らは今も生きている。飢えに悩まされ、戸口で倒れて死んでいくこの地上の多くの人々の中に、今も生きている」(パール・バック「わが心のクリスマス」から)。

・この悲しいクリスマスを体験したパール・バックは、戦後アメリカ人将兵と東洋女性の間に生まれ、棄てられた混血児たちを養うための「ウェルカム・ハウス」を造り、作品の印税のほとんどを捧げて、孤児たちの養母になっていく。日本でも戦後、占領米軍兵士と日本人女性の間に多くの混血児が生まれ、社会問題になった。そのような出来事がアジア各地で起こり、子どもたちは混血故に棄てられていった。パール・バックは語る「私たちも祖先をたどれば多かれ少なかれ、混血児です」。

・現代人は「家を建てるのは自分の力だ」と考える。しかし聖書はそうではないと語る。家を建てた後に離婚すれば、家はもはや家族が安らう場所に成りえない。また勤め先が破綻し、職を失えば、住宅も手放さざるを得ない。住宅ローン破産を申請する人が年間数万人いる。こうなると「家」は呪いになる。まさに「主御自身が建ててくださるのでなければ、家を建てる人の労苦はむなしい」のである。

-申命記8:17「あなたは、「自分の力と手の働きで、この富を築いた」などと考えてはならない。むしろ、あなたの神、主を思い起こしなさい。富を築く力をあなたに与えられたのは主であり、主が先祖に誓われた契約を果たして、今日のようにしてくださったのである」。

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