2019年10月31日祈祷会(列王記上20章、主の言葉に逆らう罪)

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1.アラムとの戦い

 

・主はエリヤに新しい使命を与えられる「ダマスコのハザエルに油を注いで彼をアラムの王とせよ。ニムシの子イエフにも油を注いでイスラエルの王とせよ。アベル・メホラのシャファトの子エリシャにも油を注ぎ、あなたに代わる預言者とせよ」。この三人がエリヤによって始められた偶像礼拝との戦いを勝利させるであろうと示された。

-列王記上19:15-18「行け、あなたの来た道を引き返し、ダマスコの荒れ野に向かえ。そこに着いたなら、ハザエルに油を注いで彼をアラムの王とせよ。ニムシの子イエフにも油を注いでイスラエルの王とせよ。またアベル・メホラのシャファトの子エリシャにも油を注ぎ、あなたに代わる預言者とせよ。ハザエルの剣を逃れた者をイエフが殺し、イエフの剣を逃れた者をエリシャが殺すであろう。しかし、私はイスラエルに七千人を残す。これは皆、バアルにひざまずかず、これに口づけしなかった者である」

・主の預言通りに、アハブ王の首都サマリアに、アラム軍が大連合を組み、攻めてきた。イスラエル王アハブは当初は降伏を決意するが、アラムの要求が増大するに従い、これを拒絶し、戦うことを決意する。

-列王記上20:1-8「アラムの王ベン・ハダドは全軍を集めた。三十二人の王侯、軍馬と戦車をそろえてサマリアに軍を進め、これを包囲し、攻撃を加えた。彼はこの町にいるイスラエルの王アハブに使者を送り、こう言わせた『・・・明日のこの時刻に、私は家臣をあなたに遣わす。彼らはあなたの家、あなたの家臣の家の中を探し、あなたの目が喜びとしているものをすべて手に入れ、奪い取る』。イスラエルの王は、国中のすべての長老を召集して言った『彼は使者をよこして、私の妻子と、銀と金を求めてきた。私はそれを断り切れなかった』。長老と民は皆、王に言った『求めを聞き入れないでください。承諾しないでください』」。

・その時、預言者が立ち、主が戦われる故に恐れずに戦えと励ます。この預言者は宮廷預言者であろう。

-列王記上20:13「一人の預言者がイスラエルの王アハブに近づいてこう言った「主はこう言われる『この大軍のすべてをよく見たか。私は今日これをあなたの手に渡す。こうしてあなたは、私こそ主であることを知る』」。

・預言どおり、戦いはイスラエルの勝利に終わった。

-列王記上20:19-20「諸州の知事に属する若者たち、更に後続部隊が町から出て来た。それぞれがその相手を打ち、アラム軍は敗走した。イスラエルの人々は追い打ちをかけたが、アラムの王ベン・ハダドは馬に乗り、騎兵を伴って逃げ去った」。

・翌年、アラム軍は体制を整えなおして、再度攻めてきた。圧倒的な敵軍の前にイスラエルは小さな山羊の群れのようであった。しかし、主は預言者を立て、この大軍を「恐れるな」といわれた。

-列王記上20:26-28「ベン・ハダドはアラム軍を召集し、イスラエルと戦うためにアフェクに上って来た。イスラエルの人々も召集され、兵糧を支給されて、敵を迎え撃つため進んだ。イスラエルの人々は、敵に向かって二つの小さな山羊の群れのように陣を敷いたが、アラム軍はその地に満ちていた。そのとき、神の人が近づいて、イスラエルの王に言った「主はこう言われる『アラム人は主が山の神であって平野の神ではないと言っているので、私はこの大軍をことごとくあなたの手に渡す。こうしてあなたたちは、私こそ主であることを知る。』」

 

2.主の言葉に逆らうアハブ王への呪い

 

・戦いはイスラエルの圧倒的な勝利に終わった。アラム王はイスラエル王の前に助命を願ってきた。

-列王記上20:29-30「両軍は、陣を張って七日間対峙した。七日目になって戦いを交え、イスラエル軍は一日でアラムの歩兵十万人を打ち倒した。敗残兵はアフェクの町に逃げ込んだが、その敗残兵二万七千人の上に城壁が崩れ落ちた。ベン・ハダドも逃げてこの町に入り、部屋から部屋へと逃げ回った」。

・アハブ王は勝利に気が大きくなり、アラム王を許して、彼と和平協定を結ぶ。それは主が望んでおられた事ではなかった。何故ならば、主は「禍根を絶て」と命じられていた。

-列王記上20:34「ベン・ハダドはアハブに言った『私の父があなたの父から奪った町々をお返しいたします。また、私の父がサマリアで行ったように、あなたもダマスコで市場を開いてください』。アハブは言った『では、協定を結んだうえで、あなたを帰国させよう』。アハブはベン・ハダドと協定を結び、彼を帰国させた。

・ここで求められているものは「聖絶」だ。将来の禍根を取り除くために主はアハブにアラム王の聖絶を命じられた。申命記において、7つの異邦の民の聖絶が命じられているが、それは主の民が,入植地カナンの宗教によって腐敗させられないためであるとされる。

-申命記7:1-2「あなたが行って所有する土地に、あなたの神、主があなたを導き入れ、多くの民、すなわちあなたにまさる数と力を持つ七つの民、ヘト人、ギルガシ人、アモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人をあなたの前から追い払い、あなたの意のままにあしらわさせ、あなたが彼らを撃つときは、彼らを必ず滅ぼし尽くさねばならない。彼らと協定を結んではならず、彼らを憐れんではならない」。

・アハブは交易の利に目がくらみ、アラム王を許した。彼は主の勝利を自分の勝利に変え、主に逆らう罪を犯したと列王記はアハブ王を批判する。しかし神が聖絶を命じられたとは考えにくい。

-列王記上20:42「預言者は王に言った「主はこう言われる。『私が滅ぼし去るように定めた人物をあなたは手もとから逃がしたのだから、あなたの命が彼の命に代わり、あなたの民が彼の民に代わる』」。

・預言どおり、アラムとの戦いは再度起こり、アハブ王はその戦いで命を落とす。

-列王記上22:34-35「一人の兵が何気なく弓を引き、イスラエル王の鎧の胸当てと草摺りの間を射貫いた。・・・その日、戦いがますます激しくなったため、王はアラム軍を前にして戦車の中で支えられていたが、夕方になって息絶えた。傷口から血が戦車の床に流れ出ていた」。

 

3.聖絶をどう考えるか

 

・列王記に出てくる聖絶の考え方は受け入れることが難しい。以下はウィキペディアを参照した記述である。「元来、聖絶(ヘーレム)は神への奉納・奉献・聖別を表すために用いられている。イスラエルに敵対する異民族に対して聖絶が用いられる時は、『神への奉納物として、異教の神を拝む者とそれに関連する事物をことごとく滅ぼし尽くす』こと、全ての戦利品を滅却することを意味した。聖絶の対象とされた敵対異民族は全員が剣で殺され、また家畜も含め生けるものは全て殺戮された。通常の戦闘では許される女子どもの捕虜も、また家畜などの戦利品も、聖絶においては自分たちの所有物とすることは許されず、全てが神への捧げ物とされなければならなかった」。一例がサムエル記上15章にある。

-サムエル記上15:1-3「サムエルはサウルに言った。『主は私を遣わして、あなたに油を注ぎ、主の民イスラエルの王とされた。今、主が語られる御言葉を聞きなさい。万軍の主はこう言われる。イスラエルがエジプトから上って来る道でアマレクが仕掛けて妨害した行為を、私は罰することにした。行け。アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切、滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も、牛も羊も、駱駝も驢馬も打ち殺せ。容赦してはならない』」。

・聖絶という慣習はイスラエルのみならずモアブやアッシリアのような近隣諸国にも共通して見られた宗教儀礼であったが、実際にこの規定が適用されたことは現実問題としてかなり稀なことであったとみられる。敵対する異民族を聖絶の捧げ物とした場合でも、相手を滅ぼしてもイスラエルの民には物質的には何の利益にもならないため、当然ながら違反者が続出した。また、一民族を全て根絶やしにすることは現実問題としても無理であった。

・それに対して、バビロン捕囚以後に聖書を編纂した歴史家たちは(申命記記者)、「このように聖絶が不徹底であったため、バアル信仰がイスラエルの中に蔓延り、神の怒りを招いた結果、自分たちは異民族に支配されなければならなかったのだ」という反省及び歴史解釈した。現在の歴史学では、「聖書に書かれた虐殺の記述は歴史を正しく伝えたものではなく、後代のバビロン捕囚前後の時代にイスラエル中心主義の影響で書かれた」ものとされる。

・ユダヤ人歴史家も聖絶についての理解は分かれる。マルティン・ブーバーは「神がこのような命令をしたはずがないか、あるいはイスラエルの神の命令が誤っていた」と解釈する。彼はある時「サムエル記上15章」の記述について問われて、「私はそれを神のお告げであるとは信じない。私はサムエルが神の言葉を聞き間違ったのだと信じる」と答えたと晩年の自伝的な著書の中で記している。

・これに対して、ユダヤ人ラビのレヴィナスは聖書を「書物の中の書物」と捉え、ブーバーは聖書の権威よりも自分の良心の方を上に置いたとして非難する。ちなみにレヴィナスにおいては、出エジプト直後にイスラエルを最初に攻撃したアマレクは根源的な悪の象徴であり、ナチスやアウシュビッツと同等視されるため、上記のブーバーの見解に対して、「ブーバーはこの時ホロコーストについて考えていなかった」として極めて批判的な感想を表明している。なお、レヴィナスは聖書のこの箇所における聖絶について、アマレクを「地図と歴史の上から抹殺する行為」と表現している。

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