1.アタルヤの悪の中で生き延びるヨアシュ
・南王国のアハズヤ王が北王国イエフの反乱の巻き添えで死ぬと、アハズヤの母アタルヤは後継の王子たちを殺して自らが即位した。アタルヤはイスラエルにバアル礼拝を持ち込んだアハブ王の妻イゼベルの娘であり、母イゼベルがイエフに殺されたことに危機感をいだいた。歴代誌はアタルヤを稀代の悪女として描く。
−?歴代誌24:7「悪女アタルヤとその子たちが神殿を損い、主の神殿の聖なる物もすべてバアルの物としていた」。
・しかしヨラム王の娘で、祭司ヨヤダに嫁いでいたヨシェバの機転で、王子ヨアシュだけは助けられ、神殿の中で育てられた。こうして、ダビデの血が残された。
−?列王記11:2-3「ヨラム王の娘で、アハズヤの姉妹であるヨシェバが、アハズヤの子ヨアシュを抱き、殺されようとしている王子たちの中からひそかに連れ出し、乳母と共に寝具の部屋に入れておいた。人々はヨアシュをアタルヤからかくまい、彼は殺されずに済んだ。こうして、アタルヤが国を支配していた六年の間、ヨアシュは乳母と共に主の神殿に隠れていた」。
・ヨアシュが7歳になった時、反アタルヤの祭司たちが中心になって反乱が起こされ、ヨアシュが王に任命される。
−?列王記11:9-16「百人隊の長たちは、すべて祭司ヨヤダが命じたとおり行い・・・部下を引き連れ、祭司ヨヤダのもとに来た。・・・近衛兵たちはおのおの武器を手にして、祭壇と神殿を中心に神殿の南の端から北の端まで王の周囲を固めた。そこでヨヤダが王子を連れて現れ、彼に冠をかぶらせ、掟の書を渡した。人々はこの王子を王とし、油を注ぎ、拍手して、「王万歳」と叫んだ。アタルヤは近衛兵と民の声を聞き、主の神殿の民のところに行った・・・祭司ヨヤダは、軍を指揮する百人隊の長たちに『彼女を隊列の間から外に出せ。彼女について行こうとする者は剣にかけて殺せ』と命じた。・・・ 彼らはアタルヤを捕らえ・・・彼女はそこで殺された」。
・祭司ヨヤダはバアル神殿の破壊を命じ、ユダ王国から偶像礼拝が一掃された。
−?列王記11:17-18「国の民は皆、バアルの神殿に行き、それを祭壇と共に破壊し、像を徹底的に打ち砕き、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺した」。
2.ヨアシュの宗教改革
・ヨアシュは7歳で王位につき、祭司ヨヤダと共に、ユダ王国の宗教改革に勤めた。ただ、依然として、民の間には偶像礼拝の風習があった(聖なる高台=偶像を祭る聖所)。
−?列王記12:3-4「ヨアシュは、祭司ヨヤダの教えを受けて、その生涯を通じて主の目にかなう正しいことを行った。ただ聖なる高台は取り除かれず、民は依然として聖なる高台でいけにえを屠り、香をたいた」。
・ヨアシュは主の神殿の補修にも努めた。彼は祭司たちを励まして、献金を集めさせ、神殿補修に用いた。
−?列王記12:10-13「祭司ヨヤダは一つの箱を持って来て、その蓋に穴をあけ、主の神殿の入り口の右側、祭壇の傍らにそれを置いた。入り口を守る祭司たちは、主の神殿にもたらされるすべての献金をそこに入れた。・・・確かめられた献金は、主の神殿の役人である工事担当者に渡され、主の神殿で働く大工、建築労働者、石工、採石労働者たちに支払われ、また神殿の破損を修理するための木材や切り石の買い入れに用いられた」。
・しかしヨヤダが死ぬと、ヨアシュもまた部下の追従の声に従い、正しい者たちの声に聞かなくなる。
−?歴代誌24:17-22「ヨヤダの死後、ユダの高官たちが王のもとに来て、ひれ伏した。そのとき、王は彼らの言うことを聞き入れた。彼らは先祖の神、主の神殿を捨て、アシェラと偶像に仕えた・・・彼らを主に立ち帰らせるため、預言者が次々と遣わされた。・・・神の霊が祭司ヨヤダの子ゼカルヤを捕らえた。彼は民に向かって立ち、語った。『神はこう言われる。なぜあなたたちは主の戒めを破るのか。あなたたちは栄えない。あなたたちが主を捨てたから、主もあなたたちを捨てる』。ところが彼らは共謀し、王の命令により、主の神殿の庭でゼカルヤを石で打ち殺した。ヨアシュ王も、彼の父ヨヤダから寄せられた慈しみを顧みず、その息子を殺した」。
・ヨアシュもまた神の怒りの中で、部下に殺されて、その生涯を終えていく。
−?歴代誌24:24-25「ユダとエルサレムの人々が先祖の神、主を捨てたので、主は極めて大きな軍隊をアラム軍の手に渡された。こうして彼らはヨアシュに裁きを行った。彼らがヨアシュに重傷を負わせて去ると、家臣たちは、祭司ヨヤダの息子の血のゆえに、共謀し、ヨアシュを寝床で殺した」。
・主はヨアシュをアタルヤの手から守られたが、そのヨアシュもまた偶像礼拝に落ちていく。しかし主はあくことなく人間の罪の歴史に介入されていく。初代教会の人々はその罪の世にあって御言葉を語る力を求めていった。
−使徒言行録4:29「主よ、今こそ彼らの脅しに目を留め、あなたの僕たちが、思い切って大胆に御言葉を語ることができるようにしてください」。