1.青年サウルへの油注ぎ
・民は外敵に対抗するために王を求め、サムエルは王となるべき人に油を注ぐため、自分の故郷ラマに帰っていった。王になるべく選ばれたのは、ベニヤミン族のサウルだった。彼は容姿が美しく、体も大きい屈強の若者だった。
―?サムエル9:1-2「ベニヤミン族に一人の男がいた。名をキシュといい、家系をさかのぼると、アビエル、ツェロル、ベコラト、ベニヤミン人のアフィアに至り、勇敢な男であった。彼には名をサウルという息子があった。美しい若者で、彼の美しさに及ぶ者はイスラエルには誰もいなかった。民の誰よりも肩から上の分だけ背が高かった」。
・サウルの家のろばが行方不明になった。サウルと召使はろばを追って、ユダのラマまで来た。
―?サムエル9:4「彼はエフライムの山地を越え、シャリシャの地を過ぎて行ったが、ろばを見つけ出せず、シャアリムの地を越えてもそこにはおらず、ベニヤミンの地を越えても見つけ出せなかった」。
・ラマには預言者サムエルが住んでいた。二人はろばの行方を尋ねるために預言者を訪ねていった。他方、サムエルは王となるべき人物が訪ねてくるとの啓示を受けていた。
―?サムエル9:15-17「サウルが来る前日、主はサムエルの耳にこう告げておかれた「明日の今ごろ、私は一人の男をベニヤミンの地からあなたのもとに遣わす。あなたは彼に油を注ぎ、私の民イスラエルの指導者とせよ。この男が私の民をペリシテ人の手から救う。民の叫び声は私に届いたので、私は民を顧みる」。サムエルがサウルに会うと、主は彼に告げられた「私があなたに言ったのはこの男のことだ。この男が私の民を支配する。」
・サムエルはサウルの頭に油を注いだ。油を注ぐ=マーシャ、油注がれた者=メシア。サウルは神に選ばれ、油を注がれて王にさせられる。ペリシテからイスラエルを解放するには、サウルのように武力に優れた者が必要だった。
―?サムエル10:1「サムエルは油の壺を取り、サウルの頭に油を注ぎ、彼に口づけして、言った。「主があなたに油を注ぎ、御自分の嗣業の民の指導者とされたのです」。
2.神の選びと導き
・油注がれたサウルに主の霊が下る。聖霊を受けて、彼は新しい人とされた。
―?サムエル10:9-10「サウルがサムエルと別れて帰途についたとき、神はサウルの心を新たにされた。以上のしるしはすべてその日に起こった。ギブアに入ると、預言者の一団が彼を迎え、神の霊が彼に激しく降り、サウルは彼らのただ中で預言する状態になった」。
・預言する=ナービー、この言葉が英語navigate(舵を取る、導く)の語源になっている。主の霊はダビデにも下っている。イエスもバプテスマの時に霊の降臨を経験されている。霊を受けて私たちも行く道を示される。
―マタイ3:16「イエスは洗礼を受けると、すぐ水の中から上がられた。そのとき、天がイエスに向かって開いた。イエスは、神の霊が鳩のように御自分の上に降って来るのを御覧になった」。
・彼はミツパで民の承認を得て、王になる。
―?サムエル10:23-24「サウルが民の真ん中に立つと、民のだれよりも肩から上の分だけ背が高かった。サムエルは民全体に言った「見るがいい、主が選ばれたこの人を。民のうちで彼に及ぶ者はいない。」民は全員、喜び叫んで言った「王様万歳」」。
・サウルは自分が王に選ばれるとは予想もせず、また自信もなかった。彼はおじに会った時に「油を注がれた」ことを話していないし、民の一部が「こんな男に我々が救えるか」と嘲笑した時も何も言わなかった。神は「自分はその資格がない」と思う者を選ばれる。
―申命記7:6-8「主は地の面にいるすべての民の中からあなたを選び、御自分の宝の民とされた。主が心引かれてあなたたちを選ばれたのは、あなたたちが他のどの民よりも数が多かったからではない。あなたたちは他のどの民よりも貧弱であった。ただ、あなたに対する主の愛のゆえに・・・主は力ある御手をもってあなたたちを導き出し、エジプトの王、ファラオが支配する奴隷の家から救い出されたのである」。
・王になったサウルはペリシテ人を抑え、国は軍事的に安定する。その時、サウルは主を忘れ、選びは彼から去る。
―?サムエル15:22-23「主が喜ばれるのは、焼き尽くす献げ物やいけにえであろうか。むしろ、主の御声に聞き従うことではないか。・・・主の御言葉を退けたあなたは王位から退けられる」
・選ばれた者も罪を犯す。そのとき、悔い改めて神の前にひざをかがめる者だけが選ばれ続ける。
―?サムエル12:13-14「ダビデはナタンに言った「私は主に罪を犯した」。ナタンはダビデに言った「その主があなたの罪を取り除かれる。あなたは死の罰を免れる。しかし、このようなことをして主を甚だしく軽んじたのだから、生まれてくるあなたの子は必ず死ぬ。」