江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2007年7月1日説教「使徒言行録11:4-18、共に喜ぶ」

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1.違うものを受け入れる困難

・先週、私たちは一人の姉妹の葬儀を教会で執り行いました。彼女は20才の時に、フィリッピンから日本に働きに来られ、日本人男性と結婚され、子が与えられましたが、病気のため45歳の若さで召天されました。姉妹は25年間日本で生活されましたが、言葉や習慣の異なる国での生活は苦労が多かったと思います。差別や偏見にも悩まされたと思います。私たちの教会には最後の5年間関っていただきましたが、その間、私たちが姉妹と主にある交わりを十分にすることが出来たかは悔いが残ります。日本で生活されるフィリッピンの方々とどのように信仰の交わりをすればよいかが、今後の課題として残ったような気がします。
・人間は異なる人を受け入れることが難しい存在です。初代教会は異なる人々との壁を、聖霊の導きで乗り越えていきました。本日、共に読みます使徒言行録11章の記事がそれを示しています。使徒言行録は10章、11章の2章を割いて、ローマ人の百人隊長コルネリウスの回心物語を記します。本題に入る前に、10章からの流れを簡単に見ていきましょう。「カイサリアにコルネリウスという人がいた。・・・百人隊長で、信仰心あつく、一家そろって神を畏れ、民に多くの施しをし、絶えず神に祈っていた」。カイサリアにはローマ総督とその軍隊が駐留していましたが、その町に、コルネリウスという軍人がいました。彼はローマ人でしたが、信仰心の厚い人でした。この人が祈っている時、主の使いが現れて言います「ヤッファへ人を送って、ペトロと呼ばれるシモンを招きなさい」(10:5)。コルネリウスはペテロを迎えるための使者を送ります。
・同じころ、ペテロにも幻が下ります。「天が開き、大きな布のような入れ物が、四隅でつるされて、地上に下りて来るのを見た。その中には、あらゆる獣、地を這うもの、空の鳥が入っていた。“ペトロよ、身を起こし、屠って食べなさい”と言う声がした。ペトロは言った“主よ、とんでもないことです。清くない物、汚れた物は何一つ食べたことがありません”。すると、また声が聞こえてきた“神が清めた物を、清くないなどと、あなたは言ってはならない”」(10:9-16)。ユダヤ人は律法によって、汚れた食べ物を食することを禁じられていますが、神は今、「神が清めた物を、清くないと言ってはならない」と命じられました。ペテロが幻の意味を思い巡らしていた時、コルネリウスの使いが来ます。ペテロは、幻の意味が、「ユダヤ人が汚れた者として交わらない異邦人の家に行きなさい」ということだったと悟り、迎えの人たちとコルネリウスの家に赴きます。
・ペテロはコルネリウスに会い、彼が幻を聞いてペテロを招いた事を知り、この出会いを神が起こされたことを知りました。だからペテロは語ります「神は人を分け隔てなさらないことが、よく分かりました」。ユダヤ人は異邦人と交際しませんでしたが、そのユダヤ人ペテロが、神の働きかけの中に、異邦人コルネリウスに、福音を語って行きました。ペテロが語り続けていると、一同の上に聖霊が下りました。ペテロの言葉を聞いていた、コルネリウスとその家族が神を讃美し始めたのです。ペテロは言います「私たちと同様に聖霊を受けたこの人たちが、水でバプテスマを受けるのを、一体だれが妨げることができますか」(10:47)。ペテロはコルネリウスと家族にバプテスマを授け、ここに初めて異邦人クリスチャンが生まれていきました。

2.その困難を聖霊は崩した

・ペテロにとって、異邦人の家を訪ねることは、モーセの律法に反する行為でした。“異邦人と交わるな、交われば汚れる”と教えられて育ったペテロに、聖霊は「神が清めたものを、清くないと言ってはならない」と導きました。ペトロは異邦人コルネリウスの家に行き、彼の回心という喜びを得ましたが、このことを喜ばない者たちもいました。11章1節以下は次のように記します「使徒たちとユダヤにいる兄弟たちは、異邦人も神の言葉を受け入れたことを耳にした。ペトロがエルサレムに上って来たとき、割礼を受けている者たちは彼を非難して、“あなたは割礼を受けていない者たちのところへ行き、一緒に食事をした”と言った」。エルサレム教会の人々は異邦人の回心を喜ぶどころか、ペテロが無割礼の人と食卓を共にしたことを非難したのです。
・ペテロは人々に事の次第を説明します。ペテロが言ったことは、「神が幻を通じて“神が清めたものを清くないといってはならない”と示されたゆえに、私は異邦人であるコルネリウスの家に行きました。そして語り始めると、聖霊がコルネリウスの上に下るのを見ました」。そしてペテロは言います「私たちに与えてくださったのと同じ賜物を、神が彼らにもお与えになったのなら、私のような者が、神がそうなさるのをどうして妨げることができたでしょうか」(11:17)。神が清いとされたものを私が清くないといって、拒否することが出来るでしょうかとペテロは言いました。この言葉に人々は黙り、そして賛美を始めました「神は異邦人をも悔い改めさせ、命を与えてくださったのだ」。聖霊の働きにより、ユダヤ人と異邦人という隔ての壁が崩されました。

3.教会はどうすれば、差別の壁を乗り越えることが出来るのか

・今日の招詞にガラテヤ3:27-28を選びました。次のような言葉です「バプテスマを受けてキリストに結ばれたあなたがたは皆、キリストを着ているからです。そこではもはや、ユダヤ人もギリシア人もなく、奴隷も自由な身分の者もなく、男も女もありません。あなたがたは皆、キリスト・イエスにおいて一つだからです」。
・パウロは人間を区別する三つの大きな要素として、男と女の性の区別、奴隷と自由人の社会的身分の区別、ユダヤ人とギリシア人の区別を挙げています。性と身分と人種、この三つはいろいろな形で、人間同士の争いを招いてきましたし、これからも招くでしょう。しかし、パウロは、教会はこの差別を乗り越えることが出来るといいます。「キリスト・イエスにおいて一つ」になることが出来るからです。使徒言行録11章も、聖霊の導きによって、教会が異邦人差別を乗り越えることが出来たことを示しています。
・それにもかかわらず、教会はこの後も異邦人差別を続けます。エルサレム教会は「割礼なしに救いなし」として、その後も異邦人に割礼を受けるように強制します。パウロがガラテヤ書の中で、「キリストにおいては、ユダヤ人もギリシア人もない」とのべたのは、ガラテヤ教会の人々に対して、「あなた方も割礼を受けてユダヤ人にならなければ救われない」と主張する人々がいたからです。コルネリウスにバプテスマを授けたペテロも、やがてエルサレム教会保守派の圧力で、無割礼の人と食事を共にするのを避けるようになります(ガラテヤ2:12)。このことが示しますことは、使徒言行録11章におけるユダヤ人と異邦人の和解も一時的なものであった、差別は人間の本質的な罪の一つであり、肉の体を持つ限りなくならないという事実です。私たちはこの事実を見つめた上で、「主において一つになる」ことを求めていく必要があります。
・人は異なるものを受け入れることが難しい存在であり、異なる者を差別し搾取する存在です。日本では、3Kと呼ばれる「きつい、汚い、危険」な仕事の多くを、アジアや南米から出稼ぎに来ている人々に行わせています。日本の中小企業は研修生という名目で中国から若い労働者を大量に受け入れ、彼らに法定賃金を下回る過酷労働を課しています。さらに現在、介護労働を外国人にさせようという動きがあります。介護は体力・気力を必要とする重労働ですが、賃金が安いため、日本人の介護労働希望者が少なくなり、政府は不足の労働力をフィリッピンから導入しようと動いています。戦時中の日本は、韓国や中国から多くの労働者を強制連行して、鉱山や工場での重労働に従事させましたが、同じことが現在も行われているのです。私たちはこの現実を見つめる必要があります。この現実の中で、私たちは外国から来た人々とどのように交わればよいかを模索する必要があるのです。
・私たちの教会のある江戸川区には、数万人を超えるフィリッピン婦人たちが住んでおられます。日本人と結婚された婦人たちです。先日の姉妹の葬儀にも50名を越えるフィリッピンの婦人たちとそのご家族が参列されました。葬儀を通して痛感したのは、私たちの教会にはこの在日フィリッピンの人々に対する伝道の責任があるということです。外国人伝道は容易なことではありません。言葉の壁だけでなく、習慣や考え方の相違があります。さらに、人々は聖書の解き明かしだけでなく、生活改善の問題も教会に求めて来られるでしょう。イエスが行われたようないやしの業です。彼女たちを教会に迎える時、混乱が生じると思います。この4月に在日ブラジル人ご一家が教会を出て行かれるきっかけになったのも、ブラジルと日本の教会形成の違いがあったためだと思います。違いが混乱を生みます。しかし、その混乱を通して、何かが生まれていきます。
・伝道とは、異質な人との出会いにより私たちが変えられ、その違いが豊かさとなる出来事です。私たちは何度も失敗して来ましたが、それでもこの課題に取り組んで行きたいと願います。そのためには、パウロの言う信仰の確信が必要です。パウロは言います「私たちは、ユダヤ人であろうとギリシア人であろうと、奴隷であろうと自由な身分の者であろうと、皆一つの体となるためにバプテスマを受け、皆一つの霊をのませてもらったのです」(〓コリント12:13)。初代教会は異邦人伝道を自分たちの使命と考えて取り組みました。主イエスが言われたように「福音を地の果てまで伝える」ためです。今異邦の人々が日本に、この江戸川区におられます。この人々への福音宣教をこの教会の課題にしていきたいと心から願います。

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