1.ステパノの証し
・ユダヤ教徒たちはステパノが律法と神殿を冒涜したと告発し、ステパノは最高法院で裁判にかけられた。ステパノはまず、ユダヤ人の先祖たちは神が民を救う為に派遣されたモーセを信じなかったと記す。そのことを通してステパノは、メシア・イエスを受け入れなかったのも同じだと主張している(ルカ4:22-29)。
−使徒行伝7:23-25「四十歳になったとき、モーセは兄弟であるイスラエルの子らを助けようと思い立ちました。・・・モーセは、自分の手を通して神が兄弟たちを救おうとしておられることを、彼らが理解してくれると思いました。しかし、理解してくれませんでした」。
・神はモーセを立てて先祖をエジプトから救い出されたが、それでも民はモーセを拒否して偶像礼拝にふけった。
−使徒行伝7:39-41「先祖たちはこの人に従おうとせず、彼を退け、エジプトをなつかしく思い、アロンに言いました『私たちの先に立って導いてくれる神々を造ってください。エジプトの地から導き出してくれたあのモーセの身の上に、何が起こったのか分からないからです』。彼らが若い雄牛の像を造ったのはそのころで、この偶像にいけにえを献げ、自分たちの手で造ったものをまつって楽しんでいました」。
・モーセを冒涜したのはユダヤ人なのだと論証した後、ステパノは神殿の問題に切り込む「あなたがたは私が神殿を冒涜したというが、人の造った神殿に神が住まわれないと最初に言ったのはソロモン王ではなかったか」と。
−使徒行伝7:47-50「神のために家を建てたのはソロモンでした。けれども、いと高き方は人の手で造ったようなものにはお住みになりません。これは、預言者も言っているとおりです。『主は言われる。“天は私の王座、地は私の足台。お前たちは、私にどんな家を建ててくれると言うのか。私の憩う場所はどこにあるのか。これらはすべて、私の手が造ったものではないか。”』」。(列王記上8:20-27参照)
・最後にステパノはユダヤの指導者を告発する「モーセと神殿を冒涜しているのは、まさにあなたたちなのだ」。
−使徒行伝7:51-53「かたくなで、心と耳に割礼を受けていない人たち、あなたがたは、いつも聖霊に逆らっています。あなたがたの先祖が逆らったように、あなたがたもそうしているのです。いったい、あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、一人でもいたでしょうか。彼らは、正しい方が来られることを預言した人々を殺しました。そして今や、あなたがたがその方を裏切る者、殺す者となった。天使たちを通して律法を受けた者なのに、それを守りませんでした。」
2.ステパノの殉教とそれがもたらしたもの
・人々はこの告発を聞いて怒り、ステパノを石で撃ち殺す。ステパノは逃げることなく、この苦難を受けていく。彼の最後は十字架のイエスと重なる(ルカ23:34)。
−使徒行伝7:54-60「人々はこれを聞いて激しく怒り、ステファノに向かって歯ぎしりした。ステファノは聖霊に満たされ、天を見つめ、神の栄光と神の右に立っておられるイエスとを見て『天が開いて、人の子が神の右に立っておられるのが見える』と言った。人々は大声で叫びながら耳を手でふさぎ、ステファノ目がけて一斉に襲いかかり、都の外に引きずり出して石を投げ始めた。・・・人々が石を投げつけている間、ステファノは主に呼びかけて『主イエスよ、私の霊をお受けください』と言った。それから、ひざまずいて『主よ、この罪を彼らに負わせないでください』と大声で叫んだ。ステファノはこう言って、眠りについた」。
・その場にはパウロがいた。ある神学者は考える「教会にパウロが与えられたのは、ステパノの祈りによる」。
−使徒行伝7:58-8:1「証人たちは、自分の着ている物をサウロという若者の足もとに置いた。・・・サウロは、ステファノの殺害に賛成していた」。
・ステパノの殉教を機に教会に対して迫害が起こり、多くの人々がエルサレムを追われ、そのことによって福音がエルサレムの外に広がり始める。迫害が福音伝道の起爆剤になっていった。
−使徒行伝8:1-5「その日、エルサレムの教会に対して大迫害が起こり、使徒たちのほかは皆、ユダヤとサマリアの地方に散って行った。・・・散って行った人々は、福音を告げ知らせながら巡り歩いた」。
・殉教が福音をエルサレムの外に押し出した。その後も多くのキリスト者が最初はユダヤ教徒に、次にはローマ帝国の迫害により死んでいった(帝国の原理=この世界を支配しているのは皇帝である。従わない者は殺す。キリスト者の原理=この世を支配しているのは神である。人間に従うよりは神に従う(使徒5:29))
・ギリシャ語の殉教者=マルテュスの語源は証人だ。私たちは今、無風の中にいるが、それは証しすべき事を証ししていないからではないか。ヨハネ16:33は私たちに何かを迫る。
−ヨハネ16:33「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。私は既に世に勝っている」。