・知恵の教師は自らの子供時代、父から知恵を学んだことを自伝風に告白しています。
−箴言4:1-6「子らよ。父の諭しを聞け、分別をわきまえるために、耳を傾けよ。わたしは幸いを説いているのだ。わたしの教えを捨ててはならない。わたしも父にとっては息子であり、母のもとでは、いとけない独り子であった。父はわたしに教えて言った。『わたしの言葉をお前の心に保ち、わたしの戒めを守って命を得よ。わたしの口が言い聞かせることを、忘れるな。離れ去るな。知恵を獲得せよ。分別を獲得せよ。』
・旧約時代のイスラエルには初等教育をほどこす学校はまだなく、発育期の子供にとって父親が教師で、ほとんどの子供にとって、それが唯一の教育でした。従ってたいていの、子供にとって父の成長の足跡を辿ること、つまり父が経験から蓄積した知恵を学ぶことが、人生最初の学びであり、並行して道徳や宗教を学ぶことが教育でした。
−申命記6:5-7「聞け、イスラエルよ。我らの神、主は唯一の主である。あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、あなたの神を愛しなさい。今日わたしが命じるこれらの言葉を心に留め、子供たちに繰り返し教え、家に座っているときも、道を歩くときも、寝ているときも、起きているときも、これを語り聞かせなさい。」
・ここでは知恵を伴侶としての女性になぞらえ、意味づけています。知恵は生涯の良き伴侶であり、添い遂げれば彼女の内助により、知恵の冠を得るであろうと価値づけています。
−箴言4:6-9『知恵を捨てるな、彼女はあなたを見守ってくれる。分別を愛せよ。彼女はあなたを守ってくれる。知恵の初めとして知恵を獲得せよ。これまでに得たものすべてに代えても、分別を獲得せよ。知恵をふところに抱け、彼女はあなたを高めてくれる。分別を抱きしめよ、彼女はあなたに名誉を与えてくれる。あなたの頭に優雅な冠を抱かせ、栄冠となってあなたを飾る。』」
・知恵の教師は、知恵の学びを人の生きる道、生きるべき道になぞらえました。そのうえで、彼は言葉を尽して「知恵の道」を「生きるべき道」として選ぶよう生徒に勧めました。
−箴言4:10-13「わが子よ、聞け。わたしの言うことを受け入れよ。そうすれば、命の年月は増す。わたしはあなたに知恵の道を教え、まっすぐな道にあなたを導いた。歩いても、あなたの足取りはたじろがず、走っても、つまずくことはないであろう。諭しをとらえて放してはならない。それを守れ、それはあなたの命だ。」
・人の生きる道に表と裏があるとしたら、間違いなく「神に逆らう者の道」は裏の道です。知恵の教師は言葉を強めて、裏の道を選ばぬよう教えています。
−箴言4:14-19「神に逆らう者の道を歩くな。悪事をはたらく者の道を進むな。それを避けよ、その道を通るな。そこからそれて、通り過ぎよ。彼らは悪事をはたらかずには床に就かず、他人をつまずかせなければ熟睡できない。背信のパンを食べ、不法の酒を飲む。神に従う人の道は輝き出る光、進むほどに光は増し、真昼の輝きとなる。神に逆らう者の道は闇に閉ざされ、何につまずいても、知ることはない。」
・14-19節において「神に逆らう者の道」と「神に従う者の道」、二つの道を示し、知恵の教師は二者択一を強く迫っています。この警告は善悪の境が曖昧になりがちな、現代社会に対する厳しい警告でもあります。さらに善悪をその心に併せ持つ、矛盾だらけの人間の姿を、この警告は浮き彫りにしています。
−箴言4:20-24「わが子よ。わたしの言葉に耳を傾けよ。わたしの言うことに耳を傾けよ。見失うことなく、心に納めて守れ。それらに到達する者にとって、それは命となり、全身を健康にする。何を守るよりも、自分の心を守れ。そこに命の源がある。曲がった言葉をあなたの口から退け、ひねくれた言葉を唇から遠ざけよ。」
・神はそのとき、イスラエル人に、知恵の道と愚かの道、どちらを選ぶか迫りました。。
−申命記30:15-18「見よ。わたしは今日、命と幸い、死と災いをあなたの前に置く。わたしが今日命じるとおり、あなたの神、主を愛し、その道に従って歩み、その戒めと掟と法を守るならば、あなたは命を得、かつ増える。あなたの神、主は、あなたが入って得る土地で、あなたを祝福される。もしあなたが心変わりして聞き従わず、惑わされて他の神々にひれ伏し仕えるならば、わたしは今日あなたたちに宣言する。あなたたちは必ず滅びる。ヨルダン川を渡り、入って得る土地で、永く生きることはない。」
−箴言4:25-27「目をまっすぐ前に注げ。あなたに対しているものに、まなざしを正しく向けよ。どう足を進めるかをよく計るなら、あなたの道は常に確かなものとなろう。右にも左にも偏ってはならない。足から悪を避けよ。」
・イエスは今もわたしたちに選択を迫っています。
−マタイ7:13-14「狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、その道は広々して、そこから入る者が多い。しかし、命に通じる門はなんと狭く。その道も細いことか。それを見いだす者は少ない。」
2012年8月29日祈祷会、箴言4:1-27「父の諭し(五)」
投稿日:2019年8月21日 更新日: