江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2023年5月17日祈祷会(使徒言行録15:1-41、エルサレム使徒会議)

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1.エルサレム使徒会議の開催

 

・アンティオキアは様々な人種が住む国際都市であり、教会も様々な人種が集う国際教会であり、そこではユダヤ人と異邦人の区別もなく、異邦人の入会に際し、「割礼を受けてユダヤ人になることが条件である」の要求も生まれなかった。ところが、エルサレム教会の人々は「救われるためには割礼を受けるべきだ」と考え、異邦人に強制した。アンティオキア教会のパウロとバルナバは強く反論し、意見は対立した。

-使徒15:1-2「ある人々がユダヤから下って来て、『モ-セの慣習に従って割礼を受けなければ、あなたがたは救われない』と兄弟たちに教えていた。それで、パウロやバルナバとその人たちとの間に、激しい意見の対立と論争が生じた。この件について使徒や長老たちと協議するために、パウロとバルナバ、その他数名の者がエルサレムに上ることに決まった。」

・エルサレム使徒会議は紀元49年に開かれた最初の世界会議であった。そこではユダヤ人の主張する「割礼や律法を異邦人にも適用すべきか」が協議された。エルサレム教会は「異邦人信徒も律法を順守し、割礼を受けるべきだ」と主張し、アンティオキア教会側は「福音は律法から自由である」と主張した。

-使徒15:4-5「エルサレムに到着すると、彼らは教会の人々、使徒たち、長老たちに歓迎され、神が自分たちと共にいて行われたことを、ことごとく報告した。ところが、ファリサイ派から信者になった人が数名立って、『異邦人にも割礼を受けさせて、モ-セの律法を守るよう命じるべきだ』と言った。」

・激しい議論の後、ペトロが立ち、律法を知らず割礼を受けていない異邦人に、神は聖霊を与えられたと証言した。この証言はペトロが異邦人コルネリオを導いた体験に基づいていた(使徒11章)。ペトロの証言は会衆を黙らせる十分な力があった。

-使徒15:6-8「そこで、使徒たちと長老たちは、この問題について協議するために集まった。議論を重ねた後、ペトロが立って彼らに言った。『兄弟たち、ご存知のとおり、ずっと以前に、神はあなたがたの間で私をお選びになりました。それは、異邦人が、私の口から福音の言葉を聞いて信じるようになるためです。人の心をお見通しになる神は、私たちに与えてくださったように異邦人にも聖霊を与えて、彼らをも受け入れられたことを証明なさったのです。』」

・ペトロは問題の核心に迫った「人は自分自身の努力で律法を守り、生きて行くことが出来ない。我々は、先祖も我々も負いきれなかった律法の重荷を、異邦人に背負わせて良いのだろうか」と。

-使徒15:9-11「『また、彼らの心を信仰によって清め、私たちと彼らの間に何の差別もなさいませんでした。それなのに、なぜ今あなたがたは、先祖も私たちも負いきれなかった軛を、あの弟子たちの首に懸けて、神を試みようとするのですか。私たちは、主イエスの恵みによって救われると信じているのですが、これは、異邦人も同じことです。』」

・会衆が静かになった時、ヤコブが立ち上がり、アモス書9:11-12、イザヤ書45:22を引用して、異邦人への宣教は人の意志ではなく、神の御心であると語った。

―使徒15:12-15「すると全会衆は静かになり、バルナバとパウロが、自分たちを通して神が異邦人の間で行われた、あらゆるしるしと不思議な業について話すのを聞いていた。二人が話し終えると、ヤコブが答えた。『兄弟たち、聞いてください。神が初めに心を配られ、異邦人の中から御自分の名を信じる民を選び出そうとなさった次第については、シメオンが話してくれました。預言者たちが言ったことも、これと一致しています』」。

・ヤコブは異邦人信徒の立場を考慮したうえで、守るべき四つの条件を議場に提示した。イエスの弟ヤコブがエルサレム教会を代表して、妥協案をまとめた。

-使徒15:19-21「『それで、私はこう判断します。神に立ち帰る異邦人を悩ませてはなりません。ただ偶像に供えて汚れた肉と、みだらな行いと、しめ殺した動物の肉と、血を避けるようにと、手紙を書くべきです。モ-セの律法は、どの町にも告げ知らせる人がいて、安息日ごとに会堂で読まれているからです。』」

 

2.使徒会議の決議

 

・ヤコブの提案は全員に受け入れられ、アンティオキア教会へ報告の使者を送ることになった。

-使徒15:22「そこで、使徒たちと長老たちは、教会全体と共に、自分たちの中から人を選んで、パウロやバルナバと一緒にアンティオキアに派遣することを決定した。選ばれたのはバルサバと呼ばれるユダおよびシラス(後のシルワノ)で、兄弟たちの中で指導的な立場に居た人たちである。」

・使徒会議の結論は口頭だけでなく、「使徒指令」として書面化された。

-使徒15:23-29「使徒たちは、次の手紙を彼らに託した。『使徒と長老たちが兄弟として、アンティオキアとシリア州とキリキア州に住む、異邦人の兄弟たちに挨拶いたします。私たちのある者がそちらへ行き、私たちから何の指示もないのにいろいろなことを言って、あなたがたを騒がせ動揺させたとのことです。それで、人を選び、私たちの愛するバルナバとパウロとに同行させて、そちらに派遣することを、私たちは満場一致で決定しました・・・聖霊と私たちは、次の必要な事柄以外、一切あなたがたに重荷を負わせないことに決めました。すなわち、偶像に献げられたものと、血と、絞め殺し動物の肉と、みだらな行いを避けることです。以上を慎めばよいのです』」。

・使徒会議の報告はアンティオキア教会の異邦人たちにも喜んで受け入れられ、彼らは励まされた。

-使徒15:30-31「さて、彼ら一同は見送りを受けて出発し、アンティオキアに到着すると、信者全体を集めて手紙を渡した。彼らはそれを読み、励ましに満ちた決定を知って喜んだ」。

・使徒15章では、ペテロとヤコブの仲裁によって、保守派のエルサレム教会と改革派のアンティオキア教会に合意が成立し、教会の分裂が防がれたとルカは記す。しかしその後も割礼問題は尾を引き、繰り返し争いの種になる。パウロはその後に起きたアンティオキア事件を報告する(ガラテヤ2章)。使徒会議で割礼不要の立場に立ったペトロやバルナバでさえ、やがて無割礼異邦人との会食をためらうようになる。

-ガラテヤ2:11-12「ケファがアンティオキアに来たとき、非難すべきところがあったので、私は面と向かって反対しました。なぜなら、ケファは、ヤコブのもとからある人々が来るまでは、異邦人と一緒に食事をしていたのに、彼らがやって来ると、割礼を受けている者たちを恐れてしり込みし、身を引こうとしだしたからです。そしてほかのユダヤ人も、ケファと一緒にこのような心にもないことを行い、バルナバさえも彼らの見せかけの行いに引きずり込まれてしまいました。」。

 

3.使徒15章の黙想

 

・「割礼強要」の問題は、バプテスト教会においては「浸礼強要」の問題となる。一部のバプテスト教会は他教派の「滴礼のバブテスマ」を認めず、入会時に再度「浸礼のバプテスマ」を受けるように求める。私たちは、洗礼は大切だと思うが、その形が浸礼であれ、滴礼であれ、許容可能な問題だと思う。パウロが語るように「洗礼によってキリストと共に葬られ、その死にあずかるものとなる」(ローマ6:4)、「イエスの死を共に死ぬ」、その告白として洗礼を受けるという理解こそが大事である。

・アメリカの神学者W.H.ウィリモンは、この使徒15章に「教会はその議論をどのようになすべきかのモデルがある」と語る。「教会は指導者の言葉を傾聴する。パウロはガラテヤ書で異邦人の割礼の問題についてペテロと衝突したことを述べており、使徒15章に描かれているほど、ペテロが快くパウロに賛成したわけではない。それにもかかわらず、教会は指導者を信頼する」。彼は続ける「教会は勇気ある明晰な議論が出来る、大胆な幻を持ったパウロのような人々を必要としている。しかし教会が正しい活動方針を決定する時、必要なものは、『経験による確証』、『聖書による検証』、それに『新しい啓示』である。この三つを共通の権威とする時、教会は正しい決定が出来る」(現代聖書注解「使徒言行録」から)。

・教会内で意見の相違があるのは当然だが、その相違を教会は御言葉と祈りで解決して行く。多数決は教会においては必ずしも望ましい解決法ではない。多数決は少数者を分派に追い込み、やがて教会を分裂させるからだ。私たちはこれからどのようにして教会を形成していくのか。先に紹介したウィリモンは語る「成長する教会とは、大胆に御言葉を宣教し、文化的現状にあえて挑戦し、現実の政治制度を永久に所与のものとして受け入れることを拒否し、その宣教の真理を確信し、真理のために喜んで苦しむ教会である。神はこのような教会を成長させるのである」。

・無割礼者と食卓を共にしないという問題は、日本における「主の晩餐式は洗礼を受けた会員に限る」という日本基督教団問題を思い起こさせる。日本基督教団では「未受洗者を聖餐に預からせた」として北村慈郎牧師(紅葉坂教会牧師)を会規違反で免職処分とした。私たちはこの問題をどう考えるべきだろうか。エルサレム教会は割礼と食物戒律を捨てることが出来ないばかりに滅んでいった。「洗礼なしには救いはない」、「洗礼を受けない人は主の晩餐に預かることが出来ない」とする態度は、「割礼なしに救いはない」、「食物戒律を守らない異邦人は汚れている」として滅んでいったエルサレム教会と同じではないだろうか。「新しい人々を福音に招く」ために、不要な伝統は捨てる勇気を持つ教会を形成したい。

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