江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2022年12月28日祈祷会(ルカ22:31-62、ゲッセマネの祈り)

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1.ペトロの離反予告

 

最後の晩餐の席上で、イエスはペテロの裏切りを予告された。それに対してペテロは、「主よ、あなたのためならば、死をも覚悟しています」と反論した。

-ルカ22:31-34「『シモン、シモン、サタンはあなたがたを、小麦のようにふるいにかけることを神に願い、聞き入れられた・・・シモンは、『主よ、ご一緒になら、牢に入って死んでもよいと覚悟しております』と言った。イエスは言われた。『ペトロ、言っておくが、あなたは今日、鶏が鳴く前に三度私を知らないと言うだろう。』」

・ペテロへの裏切り予告はイエス逮捕時に実現した。その時、ペテロは泣いた。ペテロはイエスを裏切った。ペテロは砕かれ、何も無くなり、ただイエスの言われた言葉だけが残った。ここにはつまずきの予告と同時に赦しの予告が為されている。

-ルカ22:31-32「サタンはあなたがたを小麦のようにふるいにかけることを神に願って聞き入れられた。しかし、私はあなたのために、信仰が無くならないように祈った。だから、あなたは立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい」。

 

2.ゲッセマネの祈り

 

・イエスは厳しい試練が迫っているのを直感し、弟子たちと離れ、一人祈り始められた。

-ルカ22:39-40「イエスがそこを出て、いつものようにオリ-ブ山に行かれると弟子たちも従った、いつもの場所に来ると、イエスは弟子たちに、『誘惑に陥らないように祈りなさい』と言われた。」

・若い体は生きることを求め、心は死を恐れた。「これが本当に神の御心なのか」、「死ぬことに意味があるのか」という疑問もあられたであろう。ルカは苦しみを「汗が血の滴るように地に落ちた」と表現する。

-ルカ22:42-44「『父よ、御心なら、この杯を私から取りのけてください。しかし、私の願いではなく、御心のままに行ってください』。〔すると、天使が天から現れて、イエスを力づけた。イエスは苦しみもだえ、いよいよ切に祈られた。汗が血の滴るように地面に落ちた〕」。

・43-44節は重要な写本にはなく、本文批評上の問題があるため〔括弧〕がつけられている。イエスが苦悶されたのは事実であろう。神の子さえ、「理解できないことを受入れること」が難しかったことは、私たちを励ます。しかしイエスは最後に勝たれた。「私の願いではなく、御心のままに行ってください」とは、キリスト者の祈りの中核だ。

-ヘブル2:18「御自身、試練を受けて苦しまれたからこそ、試練を受けている人たちを助けることがおできになるのです」。

・ある婦人から相談を受けたことがある。彼女は38歳であったが、24歳の時、脳腫瘍を発病され、腫瘍の摘出手術を受けたが、後遺症が残り、以来14年間、自宅で療養されている。後遺症のために視覚障害があり、またてんかんの発作が起こるため、外で働くことは出来ず、この先、病気が回復する見通しもない。学生時代の友人たちは大半結婚し、子供たちもいるが、彼女には結婚など考えられない。朝起きても特にやるべき事もなく、誰からも音信がない。「生きるのが空しい」、彼女はそう訴えられた。彼女はクリスチャンではない。だから「父よ、この杯を私から取り除けてください」と祈ることは出来ても、「御心のままに」と祈ることは出来ない。

・私たちも、何故神がこのような苦しみを与えられるのか、わからない時がある。しかし、わからないままに「御心のままに」と祈った時、外的状況は何も変わらないのに、平安が与えられる経験をした。イエスのゲッセマネの祈りは私たちの生き方の根底を変えうる祈りなのだ。「御心のままに」という祈りは、諦めではない。それは現実をありのままに受け入れる勇気を与えてくれるものだ。

-ニーバーの祈り「変えることの出来るものを変える勇気を、変えることの出来ないものを受け入れる平静さを、そして何が変えることが出来、何が出来ないかを見極める知恵を」。

・キリストは苦しまれた。血の汗を流すほどに苦しんで祈られた。そして、苦しみに勝たれた。だから私たちの生きる苦しみを理解されるし、私たちの弱さもそのまま受け入れてくださる。私たちはこのような人を自分の人生の同伴者として与えられている。だから、私たちがどのような苦しみの中にあっても、またその苦しみの意味が判らなくとも、「しかし、御心のままに」と祈ることが出来るのだ。私たちは、その女性が何故脳腫瘍という重い十字架を背負わなければいけないのかは知らない。何故かは知らないけれど、神がその重い病気を通して彼女を祝福されようとしていることは知っている。それはイエスが十字架を通して祝福を受けられ、私たち自身が苦しみを通して主に出会った経験を持つからだ。彼女にこの十字架の福音を伝えたい。ここに命のパンがあることをわかってほしい。

・ペテロの絶望の涙を私も流したことがある。私は50歳で勤務先を辞めて東京神学大学に入った。4年間夜間神学校で学び、牧師としての必要な訓練は受けたとの自負があったため、大学で学びながら、伝道所の牧師に就任した。しかし1年で挫折した。伝道所の信仰とそぐわないとの理由で、数名の方から牧師辞任を迫られた。その時、泣きながら祈った「あなたがそうしろと言われるから職を捨てて牧師になったのに、1年で辞めろと言われるのですか。何のために職を捨てたのですか」。東神大の二年目は学びに専念し、卒業と同時に篠崎キリスト教会に招かれた。牧師を1年で辞めたことは辛い経験だったが、この挫折を通して、教会とは何か、牧師はどうあるべきかの基本を、学んだように思う。「牧師になるために一度砕かれなければならなかった」、今ではこの挫折を恵みとして受け取っている。

 

3.イエスの逮捕とペテロの裏切り

 

・ユダが神殿兵士たちを連れて来た。ペテロはイエスを守るため、剣をとって相手に反撃した。

-ルカ22:49-50「イエスの周りにいた人々は事の成り行きを見て取り、『主よ、剣で切りつけましょうか』と言った。そのうちのある者が大祭司の手下に打ちかかって、その右の耳を切り落とした」。

・ペテロの行為は勇敢であるが正しくない。物事を神に委ねず、自分で打開しようとしている。彼は自分の力の限界を知る必要がある。だからイエスはペテロを止められた。

-ルカ22:51「そこでイエスは、『やめなさい。もうそれでよい』と言い、その耳に触れていやされた。」

・人々はイエスを捕らえて大祭司の屋敷に連れて行った。ペテロはイエスを心配してついて行った。

-ルカ22:54-55「人々はイエスを捕らえ引いて行き、大祭司の家に連れて入った。ペトロは遠く離れて従った。人々が屋敷の中庭の中央に火をたいて一緒に座っていたので、ペトロも中に混じって腰を下ろした」。

・人々はペテロに「お前も仲間だ」と告発する。ペテロは三度イエスを知らないと否認する。

-ルカ22:56-60「女中が、ペトロがたき火に照らされて座っているのを目にして、じっと見つめ、『この人も一緒にいました』と言った。しかし、ペトロは『私はあの人を知らない』と言った・・・他の人がペトロを見て『お前もあの連中の仲間だ』と言うと、ペトロは『いや、そうではない』と言った・・・また別の人が『確かにこの人も一緒だった。ガリラヤの者だから』と言い張った。だが、ペトロは『あなたの言うことは分からない』と言った」。

・私たちがいざと言う時には愛する人さえも容易に裏切る存在である。イエスはそのことをご存知だ。イエスが全てをご存知であれば、私たちは嘘をつくことも、自分を良く見せることも、自分を正当化する必要もない。何よりも、私たちがイエスを捨ててもイエスは私たちを捨てられない。この赦しに接して、挫折からの回復が始まる。ペテロの涙は彼の洗礼の水だ。

-ルカ22:61-62「主は振り向いてペトロを見つめられた。ペトロは、『今日、鶏が鳴く前に、あなたは三度私を知らないと言うだろう』と言われた主の言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた。」

・イエスを裏切ったイスカリオテのユダは首をくくって死んだ。彼はイエスに絶望し、自分の力で何とかできると考え、破滅した。ペテロは自分に絶望したが、自分の弱さを泣き、主を求めた。ペテロが自分の弱さを認めて泣いた時、彼にイエスの言葉がよみがえる「あなたは立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい」。主を求め続ける時、その悲しみは「救いに通じる悔い改めを生じさせ」、主に背を向ける時、その悲しみは「死をもたらす」のではないだろうか。

・ペテロはイエスを裏切った。イエスの後に従ったからだ。他の弟子たちはイエスを裏切らなかった。イエスの後に従わなかったからだ。イエスが、「私の羊を飼いなさい」と群れを委託されたのはペテロであって、他の弟子たちではなかった。

-ヨハネ21:17「三度目にイエスは言われた『ヨハネの子シモン、私を愛しているか』。ペトロは、イエスが三度目も『私を愛しているか』と言われたので、悲しくなった。そして言った『主よ、あなたは何もかもご存じです。私があなたを愛していることを、あなたはよく知っておられます』。イエスは言われた『私の羊を飼いなさい』」。

・従う故に挫折があり、挫折があるゆえに恵みがある。ペテロの挫折は「勇気ある挫折」だ。私たちは挫折を恐れる必要などない。むしろ挫折を通して私たちは主に出会う。ペテロが弟子の手本とされているのは彼が失敗しなかったからではなく、彼が挫折から立ち直ったからだ。神の国では失敗や挫折は恥ずべきことではない。「教会は神のもたらす罪の赦しによって創られる」のだ。

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