江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2021年10月27日祈祷会(マタイ21:12-27、宮清めと権威問答)

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1.神殿から商人を追い出す

 

・エルサレムに入られるとイエスはすぐに神殿に行かれ、宮清めをされる。この記事はマタイ・マルコ・ルカの共観福音書だけでなく、ヨハネ福音書にも記されている。4福音書全てに記載されていることは、初代教会にとって重要な出来事であることを示す。

-マタイ21:12-14「それから、イエスは神殿の境内に入り、そこで売り買いをしていた人々を皆追い出し、両替人の台や鳩を売る者の腰掛けを倒された。そして言われた『こう書いてある。「私の家は祈りの家と呼ばれるべきである。ところが、あなたたちは、それを強盗の巣にしている」』。境内では目の見えない人や足の不自由な人たちがそばに寄って来たので、イエスはこれらの人々をいやされた」。

・イエスが言われた「私の家は祈りの家と呼ばれるべきである、ところがあなたたちはそれを強盗の巣にしている」。これはイザヤ、エレミヤからの預言の引用である。祈りの家であるべき神殿で、両替商や生贄の犠牲獣を売る者たちの叫び声が、神殿の神聖を損ねていた。強盗の巣のようであった。

-イザヤ56:7「私は彼らを聖なる私の山に導き、私の祈りの家の喜びの祝いに、連なることを許す。彼らが焼き尽す献げ物と生贄をささげるなら、私の祭壇で私はそれを受け入れる。私の家は、すべて民の祈りの家と呼ばれる。」

-エレミヤ6:11「私の名によって呼ばれるこの神殿は、お前たちの目に強盗の巣と見えるのか。その通り。私にはそう見える、と主は言われる」。

・イエスが糾弾された両替や犠牲の鳩を売る商行為は、当時の人にとって当然の行為だった。神殿税を払うためには、流通しているロ-マ貨幣をユダヤ貨幣に替えねばならなかったし、犠牲の動物を遠隔地から持参することも不可能だった。それでもなお、イエスが宮清めをされたのは、もっと根本的なこと、「犠牲を捧げれば救われる」というユダヤ教の根本教理に対する告発だった。イエスが処刑された最大の理由がここに(神殿否定=ユダヤ教の根本教理の否定)あった。

-ヨハネ2:18-21「ユダヤ人たちはイエスに『あなたは、こんなことをするからには、どんなしるしを私たちに見せるつもりか』と言った。イエスは答えて言われた『この神殿を壊してみよ。三日で建て直して見せる』。それでユダヤ人たちは『この神殿は建てるのに四十六年もかかったのに、あなたは三日で建て直すのか』と言った。イエスの言われる神殿とは、御自分の体のことだったのである」。

・当時のエルサレム神殿は壮大な伽藍や建物を持ち、数千人の祭司たちが働いていた。建物の維持費や人件費は膨大になり、そのために神殿内で犠牲の動物の売買や両替等の商いが公然と行われ、神殿の収益源になっていた。そのことに憤りを覚えられたイエスは宮清めをされた。

-ヨハネ2:15-16「イエスは縄で鞭を作り、羊や牛をすべて境内から追い出し、両替人の金をまき散らし、その台を倒し、鳩を売る者たちに言われた『このような物はここから運び出せ。私の父の家を商売の家としてはならない』」。

・神殿から商人を追い出したのも、信仰の指導者であるべき祭司が神殿を利用して利益を貪り、本来のあり方から逸脱していることを批判する象徴行為だった。神殿崩壊の預言は、たとえエルサレムに主の神殿があったとしても、信仰がなければそれは崩れるとの預言だった。

-マタイ24:12「イエスが神殿の境内を出て行かれると、弟子たちが近寄って来て、イエスに神殿の建物を指さした。そこで、イエスは言われた。『これらすべての物を見ないのか。はっきり言っておく。一つの石もここで崩されずに他の石の上に残ることはない』」。

 

2.イエスと祭司長たちの対立

 

・イエスは神殿粛清の後で、盲人や足萎えの人を癒された。神殿には「盲人や足萎えは入ってならない」という規定があった(サムエル下5:8)。彼らを癒すことによって彼らも神殿参拝が出来るようになった。

-マタイ21:14「境内では目の見えない人や足の不自由な人たちがそばに寄って来たので、イエスはこれらの人々を癒された」。

・イエスの神殿粛清は神殿体制を脅かすものだった。神殿の責任者である祭司長たちがイエスを攻撃するために来た。彼らはイエスを批難したが、イエスは反問されて神殿を出、ベタニヤ村に行かれた。

-マタイ21:15-17「他方、祭司長たちや、律法学者たちは、イエスの不思議な業を見、境内で子供たちまで叫んで、『ダビデの子にホサナ』と言うのを聞いて腹を立て、イエスに言った『子供たちが何と言っているか、聞こえるか』。イエスは言われた『聞こえる。あなたたちこそ、「幼子や乳飲み子の口に、あなたは賛美を歌わせた」という言葉をまだ読んだことがないのか』。それから、イエスは彼らと別れ、都を出てベタニヤに行き、そこにお泊まりになった」。

・後に、イエスが神殿で教えておられる時にも、祭司長たちが「何の権威で教えているのか」と詰問する。人々は外的権威を求める。イエスは律法学者としての学びもしておらず、どこの教派にも属していない。

―マタイ21:23「イエスが神殿の境内に入って教えておられると、祭司長や民の長老たちが近寄って来て言った。『何の権威でこのようなことをしているのか。だれがその権威を与えたのか』」。

・権威を求める人々はイエスを無資格者とした。故郷ナザレの人たちも外的権威のないイエスにつまずいた。「この人はヨセフの子ではないか」、「同じ村人なのに何を偉そうに」と彼らはつぶやいた。

―ルカ4:22「皆はイエスをほめ、その口から出る恵み深い言葉に驚いて言った。『この人はヨセフの子ではないか。』」

 

3.いちじくの木を呪う

 

・イエスは空腹を覚えられて、いちじくの木に近づかれたが、実はなく、いちじくの木を呪われた。

-マタイ21:18-19「朝早く、都に帰る途中、イエスは空腹を覚えられた。道端にいちじくの木があるのを見て、近寄られたが、葉のほかは何もなかった。そこで、『今から後いつまでも、お前には実がならないように』と言われると、いちじくの木はたちまち枯れてしまった。」

・いちじくは6月ごろに実を熟すが、過ぎ越しの祭りのころには(3-4月)、季節が早すぎるため実を結ばない。それなのにイエスはいちじくの木を呪われた。

-マタイ21:20-22「弟子たちはこれを見て驚き、『なぜ、たちまち枯れてしまったのですか』と言った。イエスはお答えになった。『はっきり言っておく。あなたがたも信仰を持ち、疑わないならば、いちじくの木に起こったようなことができるばかりでなく、この山に向かい、立ち上がって、海に飛び込めと言っても、そのとおりになる。信じて祈るならば、求めるものは何でも得られる』」。

・イエスがエルサレムに入城されたのは、過越祭の時、3月から4月にかけての時期であり、いちじくは葉が繁っていても実のなる季節ではない。実のなる季節でもないのにいちじくの実がないからと呪い枯らせるのは、理不尽ではないかとだれもが思う。イギリス人哲学者バ-トランド・ラッセルもこの物語に違和感を覚えた。彼は随筆「私はなぜキリスト教徒とならないか」の中で、イエスがいちじくの木を呪う箇所を取り上げ、「聡明さの点でも、徳の高さでも、他の歴史上の有名な人ほどに、キリストが高いと私は思えない」と、イエスが理不尽な行為をされたことを、彼がキリスト教徒とならない理由の一つとしている。

・この出来事は預言者の象徴行為であることを覚える必要がある。いちじくはイスラエルを象徴する果物であり、珍重されてきた。その神の民が今は葉ばかりが茂り、神に対して実りなき者となっており、その結果、破滅しかない。この厳粛な事実を示すために、イエスはあえていちじくの木を枯らすという異常な行動に出られた。その証拠に、マルコでは神殿粛清の記事を囲むように配置されている。この物語は本来、神殿粛清の物語の一部なのである。

-マルコ11:12「翌日、一行がベタニヤを出るとき、イエスは空腹を覚えられた。そこで、葉の茂ったいちじくの木を遠くから見て、実がなってはいないかと近寄られたが、葉のほかは何もなかった。いちじくの季節ではなかったからである。イエスはその木に向かって、『今から後いつまでも、お前から実を食べる者がないように』と言われた。弟子たちはこれを聞いていた~中略(神殿粛清)~翌朝早く、一行は通りがかりに、あのいちじくの木が根元から枯れているのを見た。そこで、ペトロは思い出してイエスに言った。『先生、御覧ください。あなたが呪われたいちじくの木が、枯れています』」。

・聖書にはもう一つの「実のならないいちじくの喩え」がある。私たちの信じるイエスは「実がならないいちじくの木を呪う」方ではなく、「何とか実がなるように取りなしの祈りをされる」方だ。バートランド・ラッセルが、このもう一つの「いちじくの物語」を知っていたら、彼はクリスチャンになったかも知れない。

-ルカ13:6-9「ある人がぶどう園にいちじくの木を植えておき、実を探しに来たが見つからなかった。そこで、園丁に言った。『もう三年もの間、このいちじくの木に実を探しに来ているのに、見つけたためしがない。だから切り倒せ。なぜ、土地をふさがせておくのか。』 園丁は答えた。『御主人様、今年もこのままにしておいてください。木の周りを掘って、肥やしをやってみます。そうすれば、来年は実がなるかもしれません。もしそれでもだめなら、切り倒してください』」。

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