江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2020年11月25日祈祷会(マタイによる福音書2:1-12、占星術の学者たちの訪問)

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1.占星術の学者たちの訪問

 

・イエス、ヘロデ王治世下(前37年-前4年)にユダヤで生まれられた。当時のユダヤはロ-マ総督の統治のもとに、ヘロデ王は民政を、最高法院(サンへドリン)は宗教行政を任されていた。これはロ-マ帝国における占領地懐柔策であり、ヘロデもロ-マ帝国に操られる傀儡政権の王に過ぎなかった。そのような状況下、ヘロデは東方(バビロン)から来た博士たち(原語マゴス、魔術師・占星術師)が、今生まれたユダヤの王を探していると知り、自らの王位を脅かされる恐れを感じた。

-マタイ2:1-3「イエスはヘロデ王の時代にユダヤのべツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、言った。『ユダヤ人の王としてお生まれなった方はどこにおられますか。私たちは東方でその方の星を見たので拝みに来たのです。』これを聞いてヘロデは不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった。」

・「ヘロデは不安を抱いた」、何故ならばヘロデはエドム人であり、本来はユダヤ王になる血筋ではないからである。彼は出自を正すために、ユダヤ王家の血筋であるハスモン家の王女マリアンメと結婚し、王家と姻戚関係を結ぶ。同時にヘロデはロ-マの支配層に取り入り、ロ-マ元老院から「ユダヤ王」の称号を得ていた。王位に就いたヘロデが最初にしたことは、前政権ハスモン家の血縁者抹殺で、ハスモン家の当主アンテイゴノスを処刑し、妻マリアンネとその間に生まれた二人の息子を手にかけ、妻の弟アリストブロス、妻の母アレクサンドラまでも殺害した。当時の人々はユダヤ人ではなく、かつ残酷なヘロデ王を嫌い、「ユダヤ人の王」(メシア)を求めていた。

-マタイ2:4-6「王は民の祭司長や律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているかと問いただした。彼らは言った「ユダヤのべツレヘムです。預言者はこう書いています。『ユダの地ベツレヘムよ。お前はユダの指導者の中で、決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、私の民イスラエルの牧者になる。』」

・祭司長と律法学者がヘロデに預言者の言葉として伝えたのはミカ5:1であった。「エフラタ」は「ベツレヘム」の旧名である。マタイは「ユダの氏族」を「ユダの指導者」に、「小さき者」を「小さい者ではない」に、「ユダの指導者」と「イスラエルの牧者」を「ユダの指導者、牧者である」とまとめている。ベツレヘムはエルサレムの南方10キロのところにある小さな村で、ダビデの出身地として知られていた。

-ミカ5:1「エフラタのベツレヘムよ、お前はユダの氏族の中でいと小さき者。お前の中から、私のために、イスラエルを治める者が出る。」

・ヘロデは「ユダヤ人の王の誕生」と聞いて危機感を募らせたが、その場をさりげなく取り繕って、「私も行って拝もう」と本心を隠して学者たちを見送った。彼はユダヤ人の王を探し出して殺そうと考えていた。

-マタイ2:7-8「そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。そして、『行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。私も行って拝もう』と言って送り出した。

・東方の博士たちはヘロデから別れた後、最初見た星が再び彼らを導くのを見て喜んだ。星は幼子の生まれた所で留まり、彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝物箱を開け黄金、乳香、没薬を捧げた。

-マタイ2:9-12彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。学者たちはその星を見て喜びにあふれた。家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。ところが『ヘロデのところへ帰るな』と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分たちの国へ帰って行った。」

 

2.マタイの視点から見た物語の意味

 

・マタイは、「東から来た占星術師たちはその星を見て喜びにあふれた」と書く。東とは、多くのユダヤ人たちが寄留し、メシア伝承を保持していたバビロンだと思われる。占星術師はマゴスで祭司や魔術師等を指す。当時、「ユダヤから世界を支配する者が現れる」との期待が広がっており、彼らは故郷バビロンで、「東方に輝くメシアの星を見た」(12:2)。だから彼らはその星に導かれてエルサレムに来て、やがてベツレヘムに向かう。その時、「東方で見た星が先立って進み、幼子のいる場所の上に止まった」(2:9)。神が彼らにメシアを啓示してくださった。だから彼らは「喜びにあふれた」とマタイは記す。

・彼らはひれ伏して幼子を拝み、「黄金、乳香、没薬」を差し出した。ある注解者は記す「この黄金、乳香、没薬は未来を占うために必要な商売道具だった。彼らはそれを捧げた。もう占う必要なくなったからだ」と。黄金は生きるために必要であり、乳香は礼拝を捧げる時に用いられ、没薬は死者を葬るときに用いられる。それらは彼らが占いをする上で必要な道具だった。学者たちは、将来何が起こるかを知るために、星占いをしていた。しかし神は彼らに救い主を啓示してくださった、その救い主は「インマムエル=神共にいます」という名の幼子であった。「将来何が起こるかわからないが、救い主がどのような時にも共にいて下さるのであれば、どのような未来も受けいれることが出来る。魔術や占星術はもはや不要となり、彼らは自分の最も大事にしているものを救い主に捧げた」とマタイは語る。そうであれば、マタイは「真の信仰との出会いにより、魔術や占星術等の迷信は廃絶された」とも語っている。

・マタイは「イエスを神の子として最初に拝んだのは、ユダヤ人ではなく、異邦人であったと語る。異邦人来訪の記事の背景には、マタイの教会が既に伝道の対象をユダヤ人から異邦人に向けていたという歴史的な事実がある。このことを通してマタイは、神はユダヤ人だけの神ではなく全ての人の神であり、イエスの救いは民族の壁を超えて全ての人にもたらされることを告げている。マタイ最終章のイエスの宣教命令(すべての民を私の弟子にしなさい)もそれを示す。

-マタイ28:16-20「十一人の弟子たちはガリラヤに行き、イエスが指示しておかれた山に登った・・・イエスは、近寄って来て言われた。『私は天と地の一切の権能を授かっている。だから、あなたがたは行って、すべての民を私の弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。私は世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」

 

3.私たちはこの物語をどう読むか

 

・マタイが2章に記したことは彼が受けた伝承で、「東方の占星術師がイエスを礼拝するために訪問した、ヘロデ王がそれを聞いて不安になりベツレヘムの幼子たちを虐殺した、危機を告げられたイエスの両親がイエスを連れてエジプトに逃れた」という内容だった。橋本滋男は記す。

-「伝承の形成段階では、イスラエルを解放に導いたモーセのイメージが強く作用していたと思われる。ユダヤ教文献では『最後の救済者(メシア)の時も最初の救済者(モーセ)の時のようになるだろう』(ミドラッシュ・伝道の書1:28)、『モーセとアロンが過ぎ越しの夜に人を救う召命を受けたように、メシアの時にも過越しの夜に救われるだろう』(タルグム・哀歌2:22)とある。終末に現れるメシアは第二のモーセであり、イエスを「終末的メシア」であると信じる原始教会が、その誕生物語をモーセ伝説になぞらえて形成したことはむしろ当然であった」。

・2章後半のイエスのエジプト逃避行とベツレヘムでの虐殺は、おそらくは史実ではなく、伝承であろう。マタイはイエスを「新しいモーセ」として記述している。当時メシア出現の期待があり、人々は「モーセがイスラエルの民をエジプトの奴隷から解放したように、新しい解放者が現れる」と希望していた。マタイは「イエスがエジプトに逃れられ、ヘロデの死後、イスラエルに戻り、ナザレに住まれた」イエスこそ、「エジプトから引き出された」新しいモーセである」と信仰告白を行っている。

・ここにマタイが記すことは、彼が受けた伝承である。その伝承は、「バビロンの地から三人の占星術師がイエスの誕生を祝うために訪問した」、「ヘロデがそれを聞いて不安になり幼子の命を狙ってベツレヘムの子供たちを虐殺した」、「危機を告げられたイエスの両親が幼子を連れてエジプトに逃れた」という内容が含まれていた。現代の私たちは、この伝承が歴史的な出来事であるのかどうかの検証はできないが、そもそも出来事の歴史性を問うことは無意味なことだ。何故ならば、マタイは歴史を記述しているのではなく、彼の受けた伝承を信仰の視点から記述しているからだ。その記述を私たちも信仰的に受け入れればよいのではないか。

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