江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2017年4月19日祈祷会(マルコによる福音書6:1−29、ナザレでの拒否と弟子の派遣)

投稿日:2019年8月21日 更新日:

1.ナザレで受け入れられない

・イエスはカペナウムを去られ、故郷ガリラヤにお戻りになった。会堂で話をされたが、故郷の人たちは「この人は大工ではないか」といってイエスにつまずいた。
−マルコ6:1-2「イエスはそこを去って故郷にお帰りになったが、弟子たちも従った。安息日になったので、イエスは会堂で教え始められた。多くの人々はそれを聞いて、驚いて言った『この人は、このようなことをどこから得たのだろう。この人が授かった知恵と、その手で行われるこのような奇跡はいったい何か。』」
・イエスが何を語られたのかマルコは記さないが、並行箇所のルカではイエスはイザヤ61章を引用して「主の霊が私の上におられる。貧しい人に福音を告げ知らせるために、主が私に油を注がれたからである」と言われたとある。「主が私に油を注がれた」、自分こそメシア(油注がれた者)だとイエスは宣言された。
-ルカ4:16-21「イエスはお育ちになったナザレに来て、いつもの通り安息日に会堂に入り、聖書を朗読しようとしてお立ちになった。預言者イザヤの巻物が渡され、お開きになると、次のように書いてある個所が目に留まった。『主の霊が私の上におられる。貧しい人に福音を告げ知らせるために、主が私に油を注がれたからである。主が私を遣わされたのは、捕らわれている人に解放を、目の見えない人に視力の回復を告げ、圧迫されている人を自由にし、主の恵みの年を告げるためである。』・・・イエスは、『この聖書の言葉は、今日、あなたがたが耳にした時、実現した』と話し始められた。」
・人々は唖然とした。人々はメシアを待望していたが、そのメシアがまさか同郷のイエスとは思わなかった。人々の驚きは次第に反感に変わって行った。イエスの家族や生い立ち、職業を良く知っている郷里の人々は、イエスの人間という面が見えるため、イエスが神の子として立てられたという真実が見えなくなっていた。彼らは自分たちの理解を超える事柄を受入れることを拒んだ。
-マルコ6:3「『この人は大工ではないか。マリアの息子で、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではないか。姉妹たちは、ここで我々と一緒に住んでいるではないか』。このように、人々はイエスにつまずいた」。
・家族はなおさらで、イエスの母や兄弟たちも生前のイエスに批判的であった。
-マルコ3:21「身内の人たちはイエスのことを聞いて取り押さえに来た。『あの男は気が変になっている』と言われていたからである。」
・村人はイエスの評判を聞いていた。しかしイエスはこの間まで彼らの仲間であった。特別な教育を受けたわけでもなく、ラビとして権威を持って帰られたのでもない。家族がつまずいたように村人もつまずいた。イエスは故郷ではいやしの業をされなかった。というより、出来なかった。
−マルコ6:4-6a「イエスは『預言者が敬われないのは、自分の故郷、親戚や家族の間だけである』と言われた。そこでは、ごくわずかの病人に手を置いていやされただけで、そのほかは何も奇跡を行うことがおできにならなかった。そして、人々の不信仰に驚かれた。」
・イエスはカペナウムで12年間出血に悩む女性をいやし、会堂長の娘を死の床からよみがえらせた。しかし、ナザレでは「何も奇跡を行うことができなかった」。イエスが奇跡を起こされる時は、いつも誰かを助けるため、誰かの必要を満たすためだ。人々に対する愛と憐れみのゆえに、神の力(デュミナス)が働いて、そこに力ある業が起きる。救いを求める人がいなければ奇跡は起こらないし、起こせない。
・現代日本の伝道者もイエスと同じ思いをする。ある牧師は入信時の体験を次のように語る「バプテスマを受けた直後に実家へ帰った時、急に生意気なことを言う息子に、両親や兄弟、旧友や友人たちは戸惑いし、扱いかねている様子だった。教会では自由にのびのびと信仰を語りあえるのに、郷里ではまるで外国に行ったように話しあえない。私は故郷のイエスと同じ体験をしたのかも知れない」。

2.弟子を派遣する

・イエスはナザレでの宣教の失敗後もその業を続けられる。そして弟子たちを各地に派遣された。
−マルコ6:6b-9「それから、イエスは付近の村を巡り歩いてお教えになった。そして、十二人を呼び寄せ、二人ずつ組にして遣わすことにされた。その際、汚れた霊に対する権能を授け、旅には杖一本のほか何も持たず、パンも、袋も、また帯の中に金も持たず、ただ履物は履くように、そして『下着は二枚着てはならない』と命じられた」。
・伝道の基本がここにある。私たちには神の杖(福音)があればそれでよい。他のものは必要に応じて与えられる。
−マルコ6:10-11「また、こうも言われた『どこでも、ある家に入ったら、その土地から旅立つ時まで、その家にとどまりなさい。しかし、あなたがたを迎え入れず、あなたがたに耳を傾けようともしない所があったら、そこを出ていく時、彼らへの証しとして足の裏の埃を払い落としなさい』」。
・伝道は同じ地に留まり続けることは大事だ。他方、私たちは宣べ伝えるだけであり、やるべきことをやってだめであれば、次の場所に行くことが求められる。現代的に言えば「牧師がある地での宣教が行き詰った時には新しい任地を求めよ」ということなのだろうか。
−マルコ6:12-13「十二人は出かけて行って、悔い改めさせるために宣教した。そして、多くの悪霊を追い出し、油を塗って多くの病人をいやした」。
・マルコは「弟子たちは多くの悪霊を追い出し、多くの病人をいやした」と書くが、マルコ9章を見ると、弟子たちは「悪霊を追い出し、病人をいやすことが出来なかった」ことが記されている。弟子たちがイエスの証人として人々を信仰に導くようになったのは、復活のイエスに出会ってからだ。しかし弟子たちの宣教はうまくいかなかった。支配者たちは彼らが邪教を伝えているとして、これを捕らえ、処刑していく。弟子たちは悪霊を追い出し、病人をいやすことは出来なかったが、死を持って脅かされても信仰を捨てず、黙って殺されていった。死を持って信仰を証した弟子たちを見て、多くの人々がイエスに出会った。
・初代教会の伝道は説教や証しという言葉によって為されたのではなく、キリスト者の生き様を通して為された。私たちも悪霊を追い出し、病気のいやしを行うことが求められているのではなく、私たちが弱肉強食というこの世の価値観=悪霊から解放されており、病気になってもそれもまた主から与えられた恵みとして喜んで受け取る、そのような生き方を示していくことが伝道なのだ。

3.洗礼者ヨハネ殺される

・この弟子派遣の記事中に、突然ヨハネの死の記事が挿入される。それはイエスの評判が高まり、人々がイエスのことを「洗礼者ヨハネの生き返りだ」とうわさし始め、そのことがヨハネを殺したヘロデ王の耳にも入ったからだ。
−マルコ6:14-16「イエスの名が知れ渡ったので、ヘロデ王の耳にも入った。人々は言っていた『洗礼者ヨハネが死者の中から生き返ったのだ。だから、奇跡を行う力が彼に働いている』・・・ヘロデはこれを聞いて、『私が首をはねたあのヨハネが、生き返ったのだ』と言った」。
・このヘロデはヘロデ大王の子ヘロデ・アンティパスである。へロデ大王の死後(紀元前4年)、ユダヤは三人の子が分割統治したが、その一人、アンティパスはガリラヤの王になった。彼はナバテヤ王アレタの娘を妻としていたが、腹違いの兄ヘロデ・ピリポの妻ヘロディアと恋仲になり、妻を離別し、ヘロディアと結婚した。これは明らかな律法違反(姦淫の罪)であり、ヨハネはこれを批判したため、ヘロデにより捕えられ、ヨルダン川東岸のマルケス要塞に幽閉されていた。そのヨハネをヘロデは殺した。
-マルコ6:19-20「ヘロディアはヨハネを恨み、彼を殺そうと思っていたが、できないでいた。なぜなら、ヘロデが、ヨハネは正しい聖なる人であることを知って、彼を恐れ、保護し、また、その教えを聞いて非常に当惑しながらも、なお喜んで耳を傾けていたからである」。
・イエスはヨハネ逮捕を契機に、独立して宣教を始められた。今また、ヨハネの死を契機に、弟子たちを派遣される。ご自身の死後のことを考え、弟子訓練の必要性を思われたからだ。
−マルコ6:30「使徒たちはイエスのところに集まって来て、自分たちが行ったことや教えたことを残らず報告した」。
・洗礼者ヨハネをヘロデ・アンティパスは殺した。ヘロデはこの世では権力を持っていたが、群衆を恐れ、ローマを恐れていた。彼はローマから任命された分権王で、民衆の支持がなくなるとローマから更迭される危険性があった。ヘロデの最後は惨めなものだった。彼はローマ皇帝から失政を咎められてガリヤに流刑となり、流刑地で処刑されたと言われている。ヘロデ・アンティパスのようにうまく世渡りをしているようであっても、人を畏れる人はいつか失敗し、惨めな最後を送る。ギボン「ローマ帝国衰亡史」によれば、歴代のローマ皇帝の65%以上が自然死以外の死因で死んでおり、死因のトップは暗殺、次が自殺だ。イエスは私たちに、「あなたたちも暗殺や自殺で終わるような人生を歩みたいのか、この世で第一人者、大いなる者になるとはそういう生涯なのだ。だから仕える者になりなさい」と言われている。
-マルコ10:42-44「あなたがたも知っているように、異邦人の間では、支配者と見なされている人々が民を支配し、偉い人たちが権力を振るっている。しかし、あなたがたの間ではそうではない。あなたがたの中で偉くなりたい者は、皆に仕える者になり、いちばん上になりたい者は、すべての人の僕になりなさい。」

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