1.玉座にある巻物
・ヨハネは霊に導かれて天に上った。彼がそこで見たのは、玉座に座る神であり、その手には、これから起こることを記した巻物が握られていたが、それは七つの封印で封じられていた。
黙示録5:1「私は、玉座に座っておられる方の右の手に巻物があるのを見た。表にも裏にも字が書いてあり、七つの封印で封じられていた」。
・当時のアジア州はローマ帝国の支配下にあり、キリスト教徒は皇帝礼拝を強制され、逆らうものは迫害されていた。いつまでこのようなことが続くのか、巻物を解く人はいず、この苦しみがいつ終わるのかが見えない。ヨハネは泣いた。将来が見えない時、人は不安に閉ざされ、途方にくれる。
―黙示録5:2-4「一人の力強い天使が『封印を解いて、この巻物を開くのにふさわしい者はだれか』と大声で告げるのを見た。しかし、天にも地にも地の下にも、この巻物を開くことのできる者、見ることのできる者は、だれもいなかった。・・・ふさわしい者がだれも見当たらなかったので、私は激しく泣いていた」。
・泣くヨハネに長老の一人が声をかけた「泣かなくともよい。勝利されたキリストが巻物を開いてくださる」。ヨハネはそこに十字架に死に、復活されたキリストがおられるのを見た。
―黙示録5:5-6「長老の一人が私に言った『泣くな。見よ。ユダ族から出た獅子、ダビデのひこばえが勝利を得たので、七つの封印を開いて、その巻物を開くことができる』。私はまた、玉座と四つの生き物の間、長老たちの間に、屠られたような小羊が立っているのを見た。小羊には七つの角と七つの目があった」。
・子羊が玉座におられる方から巻物を受け取った。地上においてはキリストの支配はまだ見えない。しかし、天上においては、世界史を記した書がキリストの手に渡され、王として即位された。天では喜びの声が上がる。
―黙示録5:7-10「小羊は進み出て、玉座に座っておられる方の右の手から、巻物を受け取った。巻物を受け取ったとき、四つの生き物と二十四人の長老は・・・新しい歌を歌った『あなたは、巻物を受け取り、その封印を開くのにふさわしい方です。あなたは、屠られて、あらゆる種族と言葉の違う民、あらゆる民族と国民の中から、御自分の血で、神のために人々を贖われ、彼らを私たちの神に仕える王、また、祭司となさったからです。彼らは地上を統治します』」。
2.子羊キリストの即位
・子羊イエスが王として即位し、イエスに従った者が地上を統治すると歌われる。神の国が地上に来る日が近いとの讃美だ。キリストの即位を祝い、最初は24人の長老たちが、次には全ての天使たちが、最後には全ての被造物が歓呼の声を上げる。5:12-13はヘンデル・メサイヤ第三部のコーラスとして有名な箇所だ。
―黙示録5:12-13「天使たちは大声でこう言った『屠られた小羊は、力、富、知恵、威力、誉れ、栄光、そして賛美を受けるにふさわしい方です』。また、私は、天と地と地の下と海にいるすべての被造物、そして、そこにいるあらゆるものがこう言うのを聞いた『玉座に座っておられる方と小羊とに、賛美、誉れ、栄光、そして権力が、世々限りなくありますように』」。
・人間は現在の延長線上でしか将来を見通せないが、実際には、常に新しい出来事が起こって、未来は変えられていく。地上の王はローマ皇帝かもしれないが、天上では既にイエスに世界史を記した書が渡されている。ローマ皇帝の支配が永遠に続くのではない。ヨハネはそこに希望を見た。
―エレミヤ33:2-3「主はこう言われる。創造者、主、すべてを形づくり、確かにされる方。その御名は主。『私を呼べ。私はあなたに答え、あなたの知らない、隠された大いなることを告げ知らせる』」。
・キリストは王として既に即位されておられる。この天上の出来事はやがて地上の出来事となる。人の目から見た真実と神の目から見た真実は異なる。私たちは見えない真実を信じていく。それが信仰だ。
―ローマ8:18-25「現在の苦しみは、将来私たちに現されるはずの栄光に比べると、取るに足りないと私は思います。被造物は、神の子たちの現れるのを切に待ち望んでいます。・・・私たちは、このような希望によって救われているのです。見えるものに対する希望は希望ではありません。現に見ているものをだれがなお望むでしょうか。私たちは、目に見えないものを望んでいるなら、忍耐して待ち望むのです」。
・巻物の封印が解かれ、歴史は子羊に委ねられる。ほふられた子羊は地上の目からは弱く無力な存在であるが、天上では歴史を終局に至るまで導くように委託されている。地上のことだけを見つめず天を見よとヨハネは記す。
―ピリピ2:10-11「こうして、天上のもの、地上のもの、地下のものがすべて、イエスの御名にひざまずき、すべての舌が『イエス・キリストは主である』と公に宣べて、父である神をたたえるのです」。