1.ピラトの裁判
・祭司長たちはイエスを尋問した後、総督官邸へ連れて行った。イエスを死刑にするためには、ローマ総督の裁判が必要だった。しかし、彼らは異邦人の家に入って汚れることを嫌い、官邸には入らなかった。
−ヨハネ18:28「人々は、イエスをカイアファのところから総督官邸に連れて行った。明け方であった。しかし、彼らは自分では官邸に入らなかった。汚れないで過越の食事をするためである。」
・彼らはあくまでも自分達の正しさを追求する。他方、「殺すな」という神の正しさを破ろうとしていることに気づかない。私たちが自分の栄光を求める時、私たちは神の栄光を捨てているのだ。
−マタイ23:2-4「律法学者たちやファリサイ派の人々は、モーセの座に着いている。だから、彼らが言うことはすべて行いまた守りなさい。しかし、彼らの行いは、見倣ってはならない。言うだけで、実行しないからである。彼らは背負いきれない重荷をまとめ人の肩に載せるが、自分ではそれを動かすために指一本貸そうともしない。」
・ピラトはユダヤ人の宗教問題には関与したくない。だから「お前達が自分で裁け」と突っ返したが、ユダヤ人たちは受入れなかった。彼らはあくまでもイエスを死刑にすることを決めていたからだ。
−ヨハネ18:31「ピラトが、『あなたたちが引き取って、自分たちの律法に従って裁け』と言うと、ユダヤ人たちは、『私たちには、人を死刑にする権限がありません』と言った。」
・ピラトの関心は政治的関心だった。ピラトは繰り返しイエスに尋ねた「お前はユダヤ人の王か」。
−ヨハネ18:33 「ピラトはもう一度官邸に入り、イエスを呼び出して、『お前がユダヤ人の王なのか』と言った。」
・それに対してイエスは「私はそうである。しかし、私の国はこの世の国ではない」と言われた。
−ヨハネ18:36-37「イエスはお答えになった。『私の国は、この世には属していない。もし、私の国がこの世に属していれば、私がユダヤ人に引き渡されないように、部下が戦ったことだろう。しかし、実際、私の国はこの世には属していない』。そこでピラトが、『それでは、やはり王なのか』と言うと、イエスはお答えになった。『私が王だとは、あなたが言っていることです。私は真理について証しをするために生まれ、そのためにこの世に来た。真理に属する人は皆、私の声を聞く。』」
2.神の国と地の国
・キリストを信じる者の共同体はこの世に属さない。
−ヨハネ17:14「私は彼らに御言葉を伝えましたが、世は彼らを憎みました。私が世に属していないように、彼らも世に属していないからです。」
・教会もこの世に存在するが、この世には属さない。教会の業はこの世的価値判断でなされてはいけないのだ。牧師の本当の資格は教育でも人格でも能力でもなく、その人が神に召され、遣わされているかどうかにある。
−?コリント1:11-13「あなたがたの間に争いがあると、クロエの家の人たちから知らされました。あなたがたはめいめい、『私はパウロにつく』『私はアポロに』『私はケファに』『私はキリストに』などと言い合っているとのことです。キリストは幾つにも分けられてしまったのですか。パウロがあなたがたのために十字架につけられたのですか。あなたがたはパウロの名によって洗礼を受けたのですか。」
・イエスは真理によって国は成り立つと言われた。しかし、人を超える存在を認めないピラトには理解できない。
−ヨハネ18:37-38「『私は真理について証しをするために生まれ、そのためにこの世に来た。真理に属する人は皆、私の声を聞く』。ピラトは言った『真理とは何か』」。
・ピラトはイエスを赦そうとするが、ユダヤ人は受入れない。ユダヤ人が求めたのはバラバの解放だった。
−ヨハネ18:38-40「『わたしはあの男に何の罪も見いだせない。ところで、過越祭にはだれか一人をあなたたちに釈放するのが慣例になっている。あのユダヤ人の王を釈放してほしいか』。すると彼らは『その男ではない。バラバを』と大声で言い返した。バラバは強盗であった。」
・バラバは抵抗運動家であり、目的を達成するためには暴力もためらわない。イエスは暴力を拒否し、人の心の中に王国を築こうとした。ユダヤ人がイエスを拒否しバラバを求めたことが、その後の国の進路を変えた。
−エルサレム崩壊とその後の歴史
「紀元70年,ユダヤの反乱を抑圧するためにエルサレムを包囲したティトゥスの大軍は143日の包囲の後,町を陥落させた.出来事はヨセフォスの著作を通して詳細に知ることができる.戦いと破壊は峻烈をきわめ,約60万人のユダヤ人が殺され,それ以上の者が捕虜として連れ去られた.しかし,イエスの預言を信じたクリスチャンたちは,その前にヨルダン川を渡り,ペラへ逃げた.」