江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2024年8月8日祈祷会(申命記33章、モーセの祝祷)

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1.モーセの遺言

 

・モーセは自らの死を前に、民を祝福する。申命記33章はモーセが死に臨んで語った遺言だ。

-申命記33:1「これは神の人モーセが生涯を終えるに先立って、イスラエルの人々に与えた祝福の言葉である」。

・32章のモーセの歌に続く。「神が守って下さるから、神の言葉を携えて新しい土地に行け」との命令だ。

-申命記32:45-47「あなたたちは、今日私があなたたちに対して証言するすべての言葉を心に留め、子供たちに命じて、この律法の言葉をすべて忠実に守らせなさい。それは、あなたたちにとって決して空しい言葉ではなく、あなたたちの命である。この言葉によってあなたたちはヨルダン川を渡って得る土地で長く生きることができる」。

・あなたたちをここまで導き、これから新しい土地を下さる方は神だ。神が戦われたからこそ、私たちの勝利があった。

-申命記33:2「主はシナイより来り、セイルから人々の上に輝き昇り、パランの山から顕現される。主は千よろずの聖なる者を従えて来られる。その右の手には燃える炎がある」。

・「神が戦われる。その方に信頼して、従って行け」。人の誤りは、「神に頼らず、自分で戦う」時に生じる。後の世の人々は、アッシリアの脅威に備えるためにエジプトに頼り、エジプトの圧力を避けるためにバビロンに頼った。人に頼る者は滅びる事を歴史は教える。

-イザヤ 31:1-8「災いだ、助けを求めてエジプトに下り、馬を支えとする者は。彼らは戦車の数が多く、騎兵の数がおびただしいことを頼りとし、イスラエルの聖なる方を仰がず、主を尋ね求めようとしない。・・・エジプト人は人であって、神ではない。その馬は肉なるものにすぎず、霊ではない。主が御手を伸ばされると、助けを与える者はつまずき、助けを受けている者は倒れ、皆共に滅びる・・・アッシリアは倒れる、人間のものではない剣によって。人間のものではない剣が彼らを食い尽くす。彼らは剣を恐れて逃げ、その若者たちは労役に服す」。

・イエスは捕らえようとする者に身を任された。全ては神の経綸の中にあるとの信頼からだ。

-マタイ26:52-54「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる。私が父にお願いできないとでも思うのか。お願いすれば、父は十二軍団以上の天使を今すぐ送ってくださるであろう。しかしそれでは、必ずこうなると書かれている聖書の言葉がどうして実現されよう」。

・パウロが私たちに勧めるのも、神の武具を手にとって戦えということだ。その武具は全て防御用だ。攻撃するのはただ「神の言葉」のみ。私たちは防具を身に着け、神の助けを待てば良いとパウロは勧める。

-エペソ6:14-17「立って、真理を帯として腰に締め、正義を胸当てとして着け、平和の福音を告げる準備を履物としなさい。なおその上に、信仰を盾として取りなさい。それによって、悪い者の放つ火の矢をことごとく消すことができるのです。また、救いを兜としてかぶり、霊の剣、すなわち神の言葉を取りなさい」。

 

2.残されるものへの祝祷

 

・モーセは各部族の為に祈る。ヨルダン川東岸で苦境にあるルベン族に対しては「彼らを滅ぼさないで下さい」と執り成し、南からの敵に攻撃されているユダ族に対しては、「彼らをお守り下さい」と祈る。

-申命記33:6-7「ルベンを生かし、滅ぼさないでください。たとえその数が少なくなるとしても。主よ、ユダの声に耳を傾け、その民のもとに彼を来させてください。御手をもって彼のために戦い、苦しめる者からの助けとなってください」。

・レビ族に対しては、祭司としての役割を果たせるように執り成しを祈る。

-申命記33:10-11「彼らはあなたの裁きをヤコブに、あなたの教えをイスラエルに示し、御前に香をたき、祭壇に完全に焼き尽くす献げ物を捧げます。主よ、彼の力を祝福し、その手の業を受け入れてください」。

・12部族それぞれのためにモーセは祈る。彼はベニヤミン族のために祈った。

-33:12「ベニヤミンのために彼は言った。主に愛される者はその傍らに安んじて住み終日、神に身を寄せて、その御守りのもとに住まう」。

・次にヨセフ一族のために祈る。ヨセフからエフライムとマナセが生まれた。両部族は北イスラエルの中核になった。

-申命記33:16-17「地とそれに満ちるものの賜物、柴の中に住まわれる方の慈しみ。それらすべての恵みがヨセフの頭に、兄弟たちから選ばれた者の頭に臨むように。彼は威光に満ちた雄牛の初子、彼の角は野牛の角。彼は諸国の民を角で突き倒し、地の果てにまで進み行く。見よ、エフライムの幾万の軍勢を。見よ、マナセの幾千の軍勢を」。

・ゼブルン族、ガド族、ダン族のための祈りが続く。

-33:18-22「ゼブルンのために彼は言った。喜べ、ゼブルンよ、海に漕ぎ出すときに。喜べ、イサカルよ、あなたの天幕の中で・・・ガドのために彼は言った。たたえよ、ガドの土地を広げられる方を。ガドは雌獅子のように待ち伏せ、獲物の腕や頭を引き裂く」。

・祈りの最後はガリラヤ北方に住むダン族、ナフタリ族、アシェル族のためである。

-33:23-25「ダンのために彼は言った。ダンは獅子の子、バシャンの野から躍り出る。彼は自分のために最上のものを選び出した。ナフタリのために彼は言った。ナフタリは主の恵みに満ち足り、その祝福に満たされ、湖とその南を手に入れる。アシェルのため彼は言った。アシェルは子らのうちで最も祝福される。兄弟に愛され、その足を油に浸す」。

・最後にモーセは、神が共におられるイスラエル12部族の幸いを讃美する。

-申命記33:26-29「エシュルン(イスラエル)の神のような方は他にはない。あなたを助けるために天を駆け、力に満ちて雲に乗られる。いにしえの神は難を避ける場所、とこしえの御腕がそれを支える。神はあなたの前から敵を追い散らし、「滅ぼし尽くせ」と言われた。イスラエルは安らかに住み、ヤコブの泉のみが絶えない、穀物と新しい酒に富み、天が露を滴らす土地に。イスラエルよ、あなたはいかに幸いなことか。あなたのように主に救われた民があろうか。主はあなたを助ける盾、剣が襲うときのあなたの力。敵はあなたに屈し、あなたは彼らの背を踏みつける」。

 

3.イスラエルの歴史と申命記(History of Israelから)

 

・申命記26章の告白において、イスラエルの先祖は「さすらいの一アラムびと」であった、と言われている。これは、イスラエルの先祖たちの置かれていた社会状況と、彼らがアラム語族に属するものであったという記憶であり、創世記の「族長物語」は、そのことを反映している。アラム人の集団は、二つの移動群の波をなして沃地に侵入した。第一波は紀元前19・18世紀頃、第二波は紀元前14・13世紀に活動し、これに乗ってエドム人、モアブ人、アンモン人、そしてイスラエル人などがパレスチナの沃地に侵入した。創世記においてアブラハムがユーフラテス河の下流の古代都市国家ウルを出て、上流のハランに移り、さらにカナンに移動した記事は、このアラム人の移動と関係がある。イスラエルの先祖たちは、社会学的に見れば、牧草を追って移動する半遊牧民に属するものでああり、彼らの生活状況は沃地の周辺部をさすらいながら放牧し、小家畜の群れを飼育して生活していた。しかし彼らは乾期になると家畜の食物を求めて沃地に入ったのである。そのような牧場交換によって、彼らは次第にカナンの地に定住していったものと思われる。

・申命記25章5-9節のイスラエルの最古の信仰告白において、「乳と蜜の流れるこの地を我々に賜りました」という一項がある。これは、イスラエルがカナン(パレスチナ)の地に侵入した出来事であり(恐らく紀元前13世紀)、ヨシュア記により詳細に叙述されている。ヨシュア記の記事によると、イスラエル人による土地取得は、一つのまとまった形で行われたように描かれている。すなわち、ヨシュアに率いられたイスラエルの一二部族はまず、最初にヨルダン川の東を占領し、ギルガルでヨルダン川を渡り、そこから一気に進軍して、まず中部パレスチナのエリコ、アイ、ベテルを征服し、さらにパレスチナの南部と北部をも取得した。そして最後に、全地がくじによってイスラエルの一二部族に分配された。しかし、その記事の通りのことが歴史的に行われたかは疑問である。

・実際には戦争によって土地を取得したのではなく、「平和的に浸透」したと考えられている。初期イスラエル民族は最初余り人の住んでいなかったパレスチナ中央高地に入り、徐々に定着し、かなりの時を経過して有力な集団になった時、カナンの都市国家と軍事的衝突を起こし土地を取得して行く。イスラエルという一二部族の連合は、カナンの土地取得以前にすでに存在していたのではなく、土地取得後に初めて構成されたとされる。出エジプトやシナイの出来事は一二部族連合のすべてではなく、個々の集団や氏族のみが関係したものであった。

・伝承過程において、出エジプト伝承とシナイ伝承が結合され、本来は個々の集団が体験したに過ぎない出来事が、イスラエル全体の上に移し変えられて行ったのであろう。イスラエルの人々の土地取得は、決して孤立した出来事ではなく、いわゆるアラム人移動群というより大きな運動の枠組の中で行われた。ヤコブの一二人の息子たちはイスラエル一二部族を表しているが、レアの息子とされている六部族が、歴史的にも早くパレスチナに定着し、ラケルの息子とされているヨセフ族とベニヤミン族は後にパレスチナに侵入した。これはすなわち、土地取得の第二の段階で、シメオン族とレビ族が何かの理由で中部パレスチナから移動した後に、ベニヤミン族とエフライム族、マナセ族が、中部パレスチナ地方に侵入したことの伝承であると思われる。

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