江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2024年6月6日祈祷会(申命記24章、人と人との法)

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1.結婚・離婚・再婚について

 

・申命記は妻に落ち度があれば、彼女を離縁することが出来ると規定する。

-申命記24:1「人が妻をめとり、その夫となってから、妻に何か恥ずべきことを見いだし、気に入らなくなったときは、離縁状を書いて彼女の手に渡し、家を去らせる」。

・規定は男の側からの一方的な離婚のみを規定し、女の立場を考慮しない。旧約の限界がここにある。イエスは「不法な結婚でもないのに勝手に妻を離縁することは女性を貪る行為だ」と、これを否定された。

-マタイ19:3-9「『創造主は初めから人を男と女とにお造りになった。人は父母を離れてその妻と結ばれ、二人は一体となる。・・・神が結び合わせてくださったものを、人は離してはならない』。すると、彼らはイエスに言った『では、なぜモーセは、離縁状を渡して離縁するように命じたのですか』。イエスは言われた『・・・言っておくが、不法な結婚でもないのに妻を離縁して、他の女を妻にする者は、姦通の罪を犯すことになる』」。

・一旦離婚して他の男と結婚した女とは最初の男と再婚するなと命じられている。婚姻の乱れが戒められている(申命記24:2-4)。基本は一夫一妻であり、離婚はやむを得ざる場合を除いては許されていない。

-マラキ2:14-15「あなたたちは、なぜかと問うている。それは、主があなたとあなたの若いときの妻との証人となられたのに、あなたが妻を裏切ったからだ。彼女こそ、あなたの伴侶、あなたと契約をした妻である。主は、霊と肉を持つ一つのものを造られたではないか。その一つのものが求めるのは、神の民の子孫ではないか。あなたたちは、自分の霊に気をつけるがよい。あなたの若いときの妻を裏切ってはならない」。

 

2.様々な人道的規定

 

・新婚男子は1年間の兵役猶予が認められた。戦争で死ねば子が産まれず、共同体が衰退するからである。

-申命記24:5「人が新妻をめとったならば、兵役に服さず、いかなる公務も課せられず、一年間は自分の家のためにすべてを免除される。彼は、めとった妻を喜ばせねばならない」。

・金を貸す時に、粉をひくための臼を質に取るなと命じられる。隣人がパンを食べることが出来なくなる。

-申命記24:6「挽き臼あるいはその上石を質に取ってはならない。命そのものを質に取ることになるからである」。

・貸付の担保として上着を取るな。上着なしでは隣人は凍えて眠れない。

-申命記24:12-13「その人が貧しい場合には、担保を取ったまま床に就いてはならない。日没には必ず担保を返しなさい。そうすれば、その人は自分の上着を掛けて寝ることができ、あなたを祝福するであろう」。

・賃金はその日の内に支払え、そうしなければ隣人と家族はその日の暮らしが立たなくなる。

-申命記24:15「賃金はその日のうちに、日没前に支払わねばならない。彼は貧しく、その賃金を当てにしているからである。彼があなたを主に訴えて、罪を負うことがないようにしなさい」。

・寄留者や孤児を貪るな。エジプトで寄留者であったあなたを神が救われた。今度はあなたが救う番だ。

-申命記24:17-18「寄留者や孤児の権利をゆがめてはならない。寡婦の着物を質に取ってはならない。あなたはエジプトで奴隷であったが、あなたの神、主が救い出してくださったことを思い起こしなさい」。

・畑の穀物を全て刈り取らず、一部は寄留者や寡婦のために残しておけ。オリーブやぶどうの実も取り尽してはならない。彼らのために一部を残せと命じられる。有名な「落穂拾い」の規定だ。

-申命記24:19-22「畑で穀物を刈り入れるとき、一束畑に忘れても、取りに戻ってはならない。それは寄留者、孤児、寡婦のものとしなさい・・・オリーブの実を打ち落とすときは、後で枝をくまなく捜してはならない。それは寄留者、孤児、寡婦のものとしなさい。ぶどうの取り入れをするときは、後で摘み尽くしてはならない。それは寄留者、孤児、寡婦のものとしなさい」。

・孤児や寡婦に惜しみなく施せ。あなたが死ねばあなたの妻は寡婦になり、あなたの子は孤児になる(出エジプト記22:21-23)。主がエジプトで奴隷であったあなたがたを救い、豊かな地に導いてくださった。だからあなたがたは、寡婦や孤児を慈しめと命じられている。

-申命記24:22「あなたは、エジプトの国で奴隷であったことを思い起こしなさい。私はそれゆえ、あなたにこのことを行うように命じるのである」。

 

 

3.申命記の人道的規定が私たちに教えるもの(2011年10月30日礼拝説教・要約から)

 

・申命記24章は人道上の規定と呼ばれ、日常生活の中で守るべき戒めが記されている。その基本が記されているのが24章17-18節だ「寄留者や孤児の権利をゆがめてはならない。寡婦の着物を質に取ってはならない。あなたはエジプトで奴隷であったが、あなたの神、主が救いだしてくださったことを思い起こしなさい。私はそれゆえ、あなたにこのことを行うよう命じるのである」。「貧しい人々に配慮して共に生きよ、あなたはエジプトで奴隷であったのに主が救われて今日の平安があるのではないか」と命じられている。

・6節「挽き臼あるいはその上石を質に取ってはならない。命そのものを質に取ることになるからである」。パンを食べるためには、まず小麦を粉に挽くことが必要だ。その粉ひきの臼を質に取られたのでは、パンが作れず、生きてゆけない。だから「命の糧を生みだすひき臼を質に取るな」と命じられる。

・エジプトを出た人々は等しく貧しかったが、約束の地に入ると、いつの間にか貧富の格差が広がり、共同体の問題になっていた。10-13節は担保にかんする規定で、貸付側が家に入り、担保品を物色したら、必ず担保に見合うだけの価値のあるものを選ぶ。だから、貸し手を室内へは入らず、担保は借り手に一方的に選ばせよと語られる。さらに日没までに担保を返せとある。規定の結びの言葉は語る「そうすればその人は自分の上着を掛けて寝ることができ、あなたを祝福するであろう。あなたはあなたの神、主の前で祝福されるであろう」とある。これは商売ではなく、信仰に基づいた行為なのである。

・14-15節は賃金支払いの規定だ。「貧しく乏しい雇い人を搾取してはならない。賃金はその日のうちに、支払わねばならない。彼は貧しく、その賃金を当てにしているからである。彼があなたを主に訴えて、罪を負うことがないようにしなさい」。日雇いで働く労働者を保護する規定である。朝から夕方まで働いて、一日の賃金を受け取り、その金で食事をして眠り、翌日また働く。もし日当が貰えなければ、彼は生活を維持できない。貧しい人の賃金を貪るとは、隣人の命を貪ることなのだと語られる。

・17-18節は寄留者・孤児・寡婦についての規定である。「寄留者や孤児の権利をゆがめてはならない。寡婦の着物を質に取ってはならない」。貧しい寡婦の着物を質に取るなという規定は、彼女たちを貪ることを禁止している。それはイスラエルの人々の善意に頼るのではない。「あなたはエジプトの地で奴隷として苦しめられていた。それを主が救って下さった。そうであれば今苦しんでいる人に手を差し出すのは当然ではないか」と言われている。慈善の規定ではなく、生き方の規定である。

・19-22節は落穂拾いの規定だ。「畑で穀物を刈りいれる時、一束畑に忘れても、取りに戻ってはならない。それは寄留者、孤児、寡婦の者としなさい・・・オリ-ブの実を打ち落とす時は、後で枝をくまなく捜してはならない。それは寄留者、孤児、寡婦のものとしなさい。ぶどうの取り入れをする時は、後で摘み尽してはならない。それは寄留者、孤児、寡婦のものとしなさい。あなたはエジプトの国で奴隷であったことを思い起こしなさい。私はそれゆえ、あなたにこのことを行うよう命じるのである」。収穫した後の畑に残った物を貧しい人のために残せよと命じているが、これは弱者を養う優れた知恵だ。

・パリ・オルセ-美術館のミレ-「落ち穂拾い」は、実在のフオンテンブロ-のシャイイ農場を描いたと言われている。絵には三人の貧しい農婦が描かれている。二人は並んで落ち穂を拾い、一人は背中を向け、落ち穂を手に持っている。フランスでは当時、自らの労働では十分な収穫が得られない寡婦や貧農たちの、命をつなぐための権利として落ち穂拾いが認められていた。申命記やレビ記の定めに従い、畑の持ち主が落ち穂を残らず回収することは戒められていた。ヨ-ロッパでは、畑に種を捲き、育った株を柄の長い大鎌で、薙ぐように刈る。これをフオ-クでかき集め脱穀するが、かき集められなかった落ち穂が残る。落ち穂は貧しい人のために残せ、3千年前のユダヤの規定が200年前のフランスにも生かされている」。

・申命記の中核の言葉が、8章17-18節にある「あなたは、自分の力と手の働きで、この富を築いたなどと考えてはならない。むしろ、あなたの神、主を思い起こしなさい。富を築く力をあなたに与えられたのは主であり、主が先祖に誓われた契約を果たして、今日のようにしてくださったのである」。私たちは自分の力で生きているのではなく、神に生かされて、今ここにいる。そして隣人に手を開いて生きることが求められている。

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