江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2023年1月5日祈祷会(詩篇132編、メシア待望の歌)

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1.捕囚帰還後の苦難の中で

 

・本編はダビデ王朝の回復を願った捕囚帰還後の歌であろう。バビロニヤによるイスラエル征服でダビデ王朝は断絶し、以降イスラエルは外国支配に甘んじてきた。人々は王朝の回復=植民地支配からの解放を願ってきたが適わなかった。最初にダビデが神の箱(契約の箱、そこに主が臨在すると信じられてきた)を安置する場所として神殿を建てる願いを強く持っていたことが想起される。

-詩篇132:1-5「主よ、御心に留めてください。ダビデがいかに謙虚にふるまったかを。彼は主に誓い、ヤコブの勇者である神に願をかけました『私は決して私の家に天幕に入らず、私の寝室に寝床に上らず、私の目に眠りを与えず、まぶたにまどろむことを許すまい。主のために一つの場所を見いだし、ヤコブの勇者である神のために、神のいます所を定めるまでは』」。

・ダビデは何度も神殿を建てようと計画したが適わず、神殿が建てられたのはソロモン時代であった。主はダビデの熱心を認め、ダビデ王家は永遠に続くと約束された。詩人はその約束を思い起こしている。

-サムエル記下7:11-16「主があなたのために家を興す。あなたが生涯を終え、先祖と共に眠るとき、あなたの身から出る子孫に跡を継がせ、その王国を揺るぎないものとする・・・あなたの家、あなたの王国は、あなたの行く手にとこしえに続き、あなたの王座はとこしえに堅く据えられる」。

・次にダビデが主の契約の箱をエフラタ(ベツレヘム)から運び出し、エルサレムに置いた次第が語られる。ダビデは契約の箱をエルサレムに運びあげた時、喜びのあまり踊ったと伝えられている(サムエル記下6:14)。

-詩篇132:6-9「見よ、私たちは聞いた。それがエフラタにとどまっていると。ヤアルの野で私たちはそれを見いだした。私たちは主のいます所に行き、御足を置かれる所に向かって伏し拝もう。主よ、立ち上がり、あなたの憩いの地にお進みください。あなた御自身も、そして御力を示す神の箱も。あなたに仕える祭司らは正義を衣としてまとい、あなたの慈しみに生きる人々は喜びの叫びをあげるでしょう」。

・ダビデは神殿を建てるだけの財政力と政治力を持っていたが、彼自身は神殿を立てなかった。主がそれを求めておられないと知らされたからだ。

-サムエル記下7:5-7「私の僕ダビデのもとに行って告げよ。主はこう言われる。あなたが私のために住むべき家を建てようというのか。私はイスラエルの子らをエジプトから導き上った日から今日に至るまで、家に住まず、天幕、すなわち幕屋を住みかとして歩んできた。私はイスラエルの子らと常に共に歩んできたが、その間、私の民イスラエルを牧するようにと命じたイスラエルの部族の一つにでも、なぜ私のためにレバノン杉の家を建てないのか、と言ったことがあろうか」。

・歴代誌によれば、神殿を立てたのはソロモンであるが、その準備をしたのはダビデであったとする。

-歴代誌上22:2-5「ダビデは、イスラエル国内の寄留民を集めるよう命じ、彼らを神殿造営に必要な切り石を切り出すための採石労働者に任じた。ダビデは門の扉の釘とちょうつがいを造るために鉄を大量に準備した。青銅もおびただしく、量ることができず、レバノン杉も、シドン人とティルス人が大量にダビデのもとに運んで来たので、その数は分からなかった。ダビデは、「わが子ソロモンは、主のために壮大な神殿を築き、その名声と光輝を万国に行き渡らせるためにはまだ若くて弱い。私が準備しなければならない」と言って、死ぬ前に多くの準備をした」。

 

2.メシア待望の歌

 

・10節から詩人は、「ダビデとの契約を思い起こして下さい。彼こそあなたが油注がれた人でありました」と主に再度の懇願を行う。11-12節はサムエル記・ダビデ契約の引用である。

-詩篇132:10-12「ダビデはあなたの僕、あなたが油注がれたこの人を、決してお見捨てになりませんように。主はダビデに誓われました。それはまこと。思い返されることはありません『あなたのもうけた子らの中から、王座を継ぐ者を定める。あなたの子らが私の契約と私が教える定めを守るなら、彼らの子らも、永遠にあなたの王座につく者となる』」。

・ダビデ王家は捕囚帰還後も再興することはなく、人々はダビデの末から生まれると約束されたメシアを待望する「主よ、シオンはあなたが住まれる所、私たちはあなたの民です。しかし今このシオンは異邦人に占領され、ダビデの裔はいません。主よ、どうかダビデの裔を、メシアを遣わしてあなたの栄光を再び輝かせて下さい」と。人々は神殿がある限り、神はそこに住まわれると思っていた。

-詩篇132:13-18「主はシオンを選び、そこに住むことを定められました『これは永遠に私の憩いの地。ここに住むことを私は定める。シオンの食糧を豊かに祝福し、乏しい者に飽きるほどのパンを与えよう。祭司らには、救いを衣としてまとわせる。私の慈しみに生きる人は喜びの叫びを高くあげるであろう。ダビデのために一つの角をそこに芽生えさせる。私が油を注いだ者のために一つの灯を備える。彼の敵には、恥を衣としてまとわせる。王冠はダビデの上に花開くであろう』」。

・132編8-10節は歴代誌のソロモンの神殿奉献の祈りの中に引用されている。歴代誌はペルシャ時代(前5-4世紀)に書かれているから、この詩篇の年代も第二神殿時代であろう。

-歴代誌下6:41-42「神なる主よ、立ち上がって、あなたの安息所にお入りください。あなた御自身も御力を示す神の箱も。神なる主よ、あなたに仕える祭司らは救いを衣としてまとい、あなたの慈しみに生きる人々は幸福に浸って喜び祝うでしょう。神なる主よ、あなたが油注がれた人を見捨てず、あなたの僕ダビデに示された慈しみを覚えていてください。」

 

3.新約におけるメシア待望とシオンの意味

 

・新約聖書は待望されたメシアこそ「イエス・キリスト」だと証言する。ルカはバプテスマのヨハネの父ザカリアの口を借りてその信仰を告白する。

-ルカ1:68-75「主はその民を訪れて解放し、我らのために救いの角を、僕ダビデの家から起こされた。昔から聖なる預言者たちの口を通して語られた通りに。それは、我らの敵、すべて我らを憎む者の手からの救い。主は我らの先祖を憐れみ、その聖なる契約を覚えていてくださる。これは我らの父アブラハムに立てられた誓い。こうして我らは、敵の手から救われ、恐れなく主に仕える、生涯、主の御前に清く正しく」。

・イエスは神殿崩壊を預言された。人の造った神殿はいつかは崩壊する。

-マタイ24:1-2「イエスが神殿の境内を出て行かれると、弟子たちが近寄って来て、イエスに神殿の建物を指さした。そこで、イエスは言われた。『これらすべての物を見ないのか。はっきり言っておく。一つの石もここで崩されずに他の石の上に残ることはない。』」。

・イエスが復活された時、弟子たちは、神の国(ダビデ王家の回復の時)が来たと思った。しかしイエスは弟子たちに宣言される「その時がいつかは父なる神が定められる。あなた方は福音を伝えて待て」と。

-使徒1:6-8「使徒たちは集まって『主よ、イスラエルのために国を建て直してくださるのは、この時ですか』と尋ねた。イエスは言われた『父が御自分の権威をもってお定めになった時や時期は、あなたがたの知るところではない。あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至るまで、私の証人となる』。こう話し終わると、イエスは彼らが見ているうちに天に上げられた」。

・初代教会の弟子たちは、もはや神殿に神が住まわれることはないと断言する(ステファノの説教から)。

-使徒7:46-48「ダビデは神の御心に適い、ヤコブの家のために神の住まいが欲しいと願っていましたが、神のために家を建てたのはソロモンでした。けれども、いと高き方は人の手で造ったようなものにはお住みになりません」。

・神殿は紀元70年のユダヤ戦争で崩壊した。パウロの時代になると、神殿とは信徒の体であり、神はそこに宿られると理解が進む。そこには、シオンの神殿を復興しようという機運はなくなった。

-第一コリント3:16-17「あなたがたは神の神殿であり、神の御霊があなたがたに宿っておられることを知らないのですか。もし、だれかが神の神殿をこわすなら、神がその人を滅ぼされます。神の神殿は聖なるものだからです。あなたがたがその神殿です」。

・新約時代の私たちは主イエスが再臨されて神の国がこの地上に来る日を待ち望む。マラナタ(主イエスよ、来てください)はイエスの再臨による神の国の完成を待望する言葉だ。

-ヨハネ黙示録22:20「以上すべてを証しする方が、言われる『然り、私はすぐに来る』。アーメン、主イエスよ、来てください」。

・この歴史の中で、私たちは教会堂とは何かを考える。教会堂は新しい神殿ではなく、信徒が顔と顔を合わせる集会のための場所だ。それが教会のエクレシア(集められた群れ)機能だ。しかし同時に会堂なしのインターネット礼拝も普遍化するであろう。越川弘英は「パンデミックとインターネット礼拝、2020年11月)の中で述べる。

-礼拝説教を聞くという意味では、インターネット礼拝で十分かもしれない。ただその場合、聖餐式や集会後の交わり(食事会や茶話会等)という「集まりの機能」が失われる。

-それを補うのが双方のzoom集会であろう。コロナが収束しても、「現場の礼拝」と並行する形で、「ネット礼拝」、「ネット祈祷会」はツールとして残るであろう。

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