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日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2019年4月11日祈祷会(サムエル記下10-11章、罪に負けるダビデ)

投稿日:2019年8月21日 更新日:

2019年4月11日祈祷会(サムエル記下10-11章、罪に負けるダビデ)

1.アンモン戦争とバテシバ事件

・アンモン王ナハシュが死に、ダビデは弔問使節を送り、子ハヌンを慰めようとしたが、ハヌンは使節たちをスパイ扱いし、侮辱して送り返した。アンモン人との戦いが始まり、戦いはダビデ軍の勝利となり、アンモン軍は首都ラバに逃げ帰った。
−サムエル記下10:13-14「ヨアブと彼に従う兵士たちが戦おうと迫ると、アラム軍はヨアブの前から逃げ去った。アラム軍が逃げるのを見ると、アンモン人も、アビシャイの前から逃げ出し、町の中に入った。ヨアブはアンモン人をそのままにして引き揚げ、エルサレムに帰った」。
・春になり、ダビデはアンモン討伐のため、再度将軍ヨアブと軍を送り込む。
−サムエル記下11:1「年が改まり、王たちが出陣する時期になった。ダビデは、ヨアブとその指揮下においた自分の家臣、そしてイスラエルの全軍を送り出した。彼らはアンモン人を滅ぼし、ラバを包囲した。しかしダビデ自身はエルサレムにとどまっていた」。
・これまでダビデは民の先頭に立って戦った。しかし、今回は出陣せず、王宮で午睡をむさぼっていた。王として慢心し始めた。目が覚めた彼は王宮の屋上を散歩し、一人の美しい女が水浴びをしているのを眼下に見た。
−サムエル記下11:2「ある日の夕暮れに、ダビデは午睡から起きて、王宮の屋上を散歩していた。彼は屋上から、一人の女が水を浴びているのを目に留めた。女は大層美しかった」。
・女はヘト人ウリヤの妻バテシバだった。夫ウリヤはアンモン戦争に出陣して留守だった。ダビデは女を王宮に呼び、これと寝た。女は妊娠した。ダビデは王の権力を用いて、戦争に出征中の部下の妻と姦淫を犯した。
−サムエル記下11:3-5「ダビデは人をやって女のことを尋ねさせた。それはエリアムの娘バト・シェバで、ヘト人ウリヤの妻だということであった。ダビデは使いの者をやって彼女を召し入れ、彼女が彼のもとに来ると、床を共にした。彼女は汚れから身を清めたところであった。女は家に帰ったが、子を宿したので、ダビデに使いを送り、『子を宿しました』と知らせた」。

2.うそにうそを重ねるダビデ

・バテシバの妊娠を知ってダビデはあわてる。彼はつじつまを合わせるために夫ウリヤを戦場から送り帰らせ、妻と寝させようとするが、ウリヤは戦場の同胞のことを考慮して家に帰らず、ダビデの戦略は失敗する。
−サムエル記下11:6-9「ダビデはヨアブに、ヘト人ウリヤを送り返すように命令を出し、ヨアブはウリヤをダビデのもとに送った。ウリヤが来ると、ダビデはヨアブの安否、兵士の安否を問い、また戦況について尋ねた。それからダビデはウリヤに言った『家に帰って足を洗うがよい』。ウリヤが王宮を退出すると、王の贈り物が後に続いた。しかしウリヤは王宮の入り口で主君の家臣と共に眠り、家に帰らなかった」。
・ダビデは再度ウリヤを家に帰らせようとするが、ウリヤは拒否する。ダビデはウリヤの忠誠を喜ぶのではなく、悪事の露見を恐れてウリヤを戦死させようとする。神の人ダビデでさえもこのような行動をした。
−サムエル記下11:13-15「ダビデはウリヤを招き、食事を共にして酔わせたが、夕暮れになるとウリヤは退出し、主君の家臣たちと共に眠り、家には帰らなかった。翌朝、ダビデはヨアブにあてて書状をしたため、ウリヤに託した。書状には、『ウリヤを激しい戦いの最前線に出し、彼を残して退却し、戦死させよ』と書かれていた」。
・将軍ヨアブはダビデの命に従い、ウリヤを最前線に送り、戦死させる。この戦いでウリヤ以外の者も戦死した。
−サムエル記下11:16-17「町の様子を見張っていたヨアブは、強力な戦士がいると判断した辺りにウリヤを配置した。町の者たちは出撃してヨアブの軍と戦いダビデの家臣と兵士から戦死者が出た。ヘト人ウリヤも死んだ」。
・バテシバはウリヤの喪が明けると、ダビデの妻として王宮に入った。しかし、主はこの行為を許されなかった。
−サムエル記下11:26-27「ウリヤの妻は夫が死んだと聞くと、夫のために嘆いた。喪が明けると、ダビデは人をやって彼女を王宮に引き取り妻にした。彼女は男の子を産んだ。ダビデのしたことは主の御心に適わなかった」。
・ここに二つの問題がある。一つはダビデのように、「主を信じ、従って行こう」と決意した人間でも、このような罪を犯すことだ。私たちの中にある罪はそれほど力が強い。パウロの嘆きは決して大げさではない。
−ローマ7:22-24「内なる人としては神の律法を喜んでいますが、私の五体にはもう一つの法則があって心の法則と戦い、私を、五体の内にある罪の法則のとりこにしているのが分かります。私はなんと惨めな人間なのでしょう。死に定められたこの体から、だれが私を救ってくれるでしょうか」。

3.サムエル記下10−11章からの黙想

・ダビデはイスラエル建国の父である。その王がある意味で個人的な罪を犯した、政治的には重要性を持たない。普通の歴史書であればこれは記述しない。しかし、聖書はこれを包み隠さず伝える。それどころか、この事実を伝えるために、あえて大きなスペースを割いている。神の目から見れば、それはアンモン人との戦いよりも重要な出来事であった。
・人は得意の絶頂にある時、サタンの誘惑を受ける。ダビデに試みられたものは肉欲の誘いであった。ある日の夕暮れ、ダビデは王宮の屋上から湯浴みする一人の婦人を見た。彼女はダビデ軍の兵士ウリヤの妻バテシバ、女は大層美しかった。夫ウリヤはアンモン人との戦いのために出征し、不在であった。ダビデは婦人を王宮に呼び、彼女と寝た。その結果バテシバは妊娠した。困惑したダビデはウリヤを前線から呼び戻し、妻と寝させることによって自分の犯した悪をごまかそうとする。しかし、ウリヤは前線の将兵が戦いの中にある時、自分一人、家で妻と寝るわけには行かないと断る。ダビデはウリヤを前線に戻すが、その時、ウリヤの上司である将軍ヨアブに手紙を持たせ、ウリヤを最前線に立たせて死なせるように命じ、ウリヤは死ぬ。こうしてバテシバはやもめとなり、ダビデはバテシバを妻として宮殿に迎え入れ、彼女は男の子を生んだ。
・サムエル記11章は事実のみを淡々と述べた後、最期に記す「ダビデのしたことは主の御心に適わなかった」(11:27)。そして「主はナタンをダビデのもとに遣わされた」(12:1)。人間の歴史の中には、また私たちの生涯においても、バテシバ事件のようなことが起こる。その時、神は人間の歴史に介入される。そして言葉が伝えられる。
・ダビデの前に現れたナタンはダビデに一つの物語を語る。
−サムエル記下12:1−4「二人の男がある町にいた。一人は豊かで、一人は貧しかった。豊かな男は非常に多くの羊や牛を持っていた。貧しい男は自分で買った一匹の雌の小羊のほかに、何一つ持っていなかった。彼はその小羊を養い、小羊は彼のもとで育ち、息子たちと一緒にいて、彼の皿から食べ、彼の椀から飲み、彼のふところで眠り、彼にとっては娘のようだった。ある日、豊かな男に一人の客があった。彼は訪れて来た旅人をもてなすのに、自分の羊や牛を惜しみ、貧しい男の小羊を取り上げて、自分の客に振る舞った。」
・多くの羊や牛を持つ豊かな男が自分の羊をつぶすのを惜しみ、一匹の羊しか持たない男の羊を取り上げ、それを客に出す。物語が語ることは明白である。ダビデは多くの妻や側女を持ち、多くの子にも恵まれている。そのダビデが、自分の部下ウリヤの妻に欲情を抱き、夫ウリヤを殺してその妻を自分のものにした。しかし、ダビデはまだ、この物語が自分に向けて言われていることに気付かない。ダビデは言う「そのような無慈悲なことをした男は死罪にされるべきだ」。そのダビデにナタンは言う
−サムエル記下12:7a「その男はあなただ、あなたこそがその無慈悲なことをしたのだ」。
・ナタンは主の言葉を続ける。
−サムエル記下12:7b-8「あなたをイスラエルの王にしたのは私であり、あなたを恵んできたのも私である。それなのに何故、ウリヤの妻を欲してウリヤを殺すような悪を為したのか」。
・この言葉の前にダビデは頭をたれ悔改める。
−サムエル記下12:13「私は主に罪を犯した」。
・この物語は、いろいろなことを私たちに教える。ダビデは王であった。権力者が悪を犯しても世間は何も言わない。しかし、人の目に隠れていることも神は明らかにされる。神はダビデの罪を公衆の前にさらけ出された。権力者であれば、ダビデがするようなことは誰でもするだろう。それにもかかわらず、ダビデは裁かれなければならない。このバテシバを通じてソロモンが生まれる。そして、ダビデーソロモンの系図からイエス・キリストが生まれたことをマタイ福音書もまた、特記する。
−マタイ1:1-16「アブラハムの子ダビデの子、イエス・キリストの系図・・・エッサイはダビデ王をもうけた。ダビデはウリヤの妻によってソロモンをもうけ・・・ヤコブはマリアの夫ヨセフをもうけた。このマリアからメシアと呼ばれるイエスがお生まれになった。」
・マタイはあえて「ウリヤの妻によってソロモンが生まれた」と記す。単純に「ダビデはソロモンの父」と書けばよいのに、何故「ウリヤの妻によって」と記すのか。それはキリストの系図もまた、汚れていたことを示すためである。人間は罪の中に生まれ、その罪を背負って生きる存在であり、その人間の罪を背負うためにキリストは来られたことを示すためである。

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