1、速やかに私の祈りを聴いてください
・141編は速やかに祈りを聴いてくださいという、切迫した呼びかけから始まります。カトリック教会では今もミサに香を焚いているようですが、プロテスタント教会では礼拝で香を焚く慣習はありません。古代エルサレムの聖所では香を礼拝に用いていました。香から立ち昇る芳香は、神の元まで届き、その香りを神が賞で、祈りが聴かれると信じられていました。捧げものと香は礼拝に欠かせないものとして、この詩は書かれています。
−141:1−2「賛歌。ダビデの詩。主よ、私はあなたを呼びます。速やかに私に向かい、あなたを呼ぶ声に耳を傾けてください。私の祈りを御前に立ち昇る香りとし、高く上げた手を、夕べの供え物としてお受けください。」
・詩人は逆境にあり、礼拝で神への捧げものを捧げ、併せて香を焚き、芳香を立ち昇らせることが出来ませんでした。やむなく、詩人はその代わりとして、自らの祈りを聖所で焚く香の代りとし、自らの手を高く上げて、夕べの捧げものの代りとさせてくださいと、祈りました。詩人は精一杯の努力で礼拝をしたのです。
−141:3−5「主よ、私の口に見張りを置き、唇の戸を守ってください。私の心が悪に傾くのを許さないでください。悪を行う者らが共にあなたに逆らって、悪事を重ねることのありませんように。彼らの与える好餌に誘われませんように。」
・唇の犯す過ちからお守りくださいと詩人は祈ります。唇は心に浮かんだ思いを言葉にします。良い思いも悪しき思いも人の唇から出ます。そして、唇を出た言葉はもう取り戻せません。そうして唇の争いに巻き込まれ、悪い言葉に悪い言葉で応酬し続ければ、心は悪に傾きます。言葉は悪の好餌なのです。
−ヤコブ3;5−10「御覧なさい。どんなに小さな火でも森を燃やしてしまう。舌は火です。舌は『不義の世界』です。わたしたちの器官の一つで、全身を汚し、移り変わる人生を焼き尽くし、自らも地獄の火によって燃やされます。あらゆる種類の獣や鳥、また這うものや海の生き物は、人間によって制御されていますしこれまでも制御されてきました。しかし、舌を制御できる人は一人もいません。舌は、疲れを知らない悪で、死をもたらす毒に満ちています。私たちは舌で、父である主を讃美し、また舌で、神にかたどって造られた人間を呪います。同じ口から讃美と呪いが出て来るのです。私の兄弟たち、このようなことがあってはなりません。」
・ロマ書でも次のように戒めています。「この世に調子を合わせてはいけません。いや、むしろ、神の御心は何か、すなわち、何が良いことだ、神に受け入れられ、完全であるのかをわきまえ知るために、心を一新しなさい。」(ロ−マ12:2)
−141:5「主に従う人がわたしを打ち、慈しみをもって戒めてくれますように、私は油で頭を整えることもしません。彼らの悪のゆえに祈りをささげている間は。」
・私を戒め罰するのが、主に従う人であったら、私は責めも罰も厭いません。厭うどころか、どうか慈しみをもって私を戒めてくださいと願います。そして、私が悪に誘われないように祈っている間は、頭に油を塗り、髪を整え、外見だけを良くして、行い澄ますようなことはいたしません。
2、主は私の避けどころです
−141:6−7「彼らの支配者がことごとく、岩の傍らに投げ落されますように。彼らはわたしの言葉を聞いて喜んだのです。『あたかも地を裂き、地を割ったかのように、わたしたちの骨は陰府の口に散らされている。」
・詩人は神に裁きを委ねます。悪の支配者が神によって、岩に投げつけられ砕かれることを詩人は祈ります。なぜなら、彼ら悪しき者たちは、詩人の滅びを喜ぶからです。詩人の骨がばらばらにされ、裂かれた地、割れた岩、地獄の入り口に散らされるのを喜ぶからです。詩人の滅びを喜ぶ悪が神の裁きを受けるよう詩人は祈ります。
−141:8−10「主よ、わたしの神よ、わたしの目をあなたに向け、あなたを避けどころとします。わたしの魂をうつろにしないでください。どうか、私をお守りください。わたしに対して仕掛けられた罠に。悪を行う者が掘った落とし穴に陥りませんように。主に逆らう者が皆、主の網にかかり、わたしは免れることができますように。」
・詩人は自らの信仰を神に訴え、神の守護を心から願います。そして、神は避けどころと歌います。
−詩編46:2−4「神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦。苦難のとき、かならずそこにいまして助けてくださる。わたしたちは決して恐れない、地が姿を変え、山々が揺らいで海の中に移るとも。海の水が騒ぎ、湧き返り、その高ぶるさまに山々が震えるとも。」