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日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

聖書教育の学び

2022年8月14日聖書教育の学び (2019年8月11日説教、マタイ5:9、平和を実現する人は幸いである)清水伸晴

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1.終戦記念日を前にして(戦後から現在まで、戦争しない日本)

 

毎年8月になりますと終戦記念日があります。74年前の8月15日に日本は戦争に負け、「もう過ちは繰り返さない」という決意をもって、国の再建に取り組んできました。その後、人々は必死に働き、戦後の焼け野原から復興し、戦後10年ほどで戦前の経済規模までに回復しました。経済的にみると、戦後の日本経済は3つの時期に分けられるそうです。復興から高度成長へ(1945〜1973)、安定成長からバブルへ(1974〜1990頃)、バブル崩壊後の長期低迷期(1990頃〜現在)です。

戦後から1973年頃までは高度成長期と呼ばれる時期に入ります。人々の暮らしは急激に豊かになっていき、敗戦国から一気に世界第二の経済大国にのし上がりました。そして高度成長期からバブル期(1987年〜1990年)までは安定成長期入ります。バブル期は、日本中に「日本経済は世界一だ、21世紀は日本の時代だ」といった陶酔感が国中に蔓延し、地価と株価が急騰しました。当時は銀行も「土地を担保に融資すれば、とりっぱぐれはない」と考え、土地購入資金を積極的に融資したため、地価が一層上昇しました。そしてそのバブルは崩壊します。バブル期の投資等の反動で、景気が悪化しました。1990年代の後半には、銀行の不良債権問題が深刻化し、倒産する大手金融機関が続発するなど、金融危機が発生します。この金融危機は、日本政府と日銀の介入で脱出しますが、財政赤字が拡大し、経済の長期停滞期が30年近く続き、現在に至っています。

日本は戦後の復興から経済の立て直しに必死になり、この間、日本は戦争をしていません。日本は、間違った戦争をし、その戦争の悲惨さを体験したことから、「もう戦争はしない」と宣言し、それを憲法に書き込みました。これはよく知られている日本国憲法第9条の条文になります。他方、世界を見ると1945年以降、驚くほど多くの数の戦争が勃発しています。多かれ少なかれ日本も影響した戦争を上げるとしたら、いわゆる「冷戦(中東戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争などなど)」があり、湾岸戦争、イラク戦争があります。世界では、戦争、紛争は終結することはく、報道がなされていない小さな国々でも、今だに継続している戦争は多くあります。一体なぜ、戦争が起こるのでしょうか、いつ終わるのでしょうか?平和とは一体何なのでしょうか?戦う兵士には、キリスト教徒もいます。もちろん、イスラム教徒も仏教徒もいます。このように問いかけます。「世界に平和はないのでしょうか?キリストのしもべとして、祈っても平和は訪れないのでしょうか?」いろいろと疑問がでてきます。本日は、平和について聖書はどのように捉えているのか少し考えてみたいと思います。

 

2.平和の実現と平和への妨げ

 

今日は、次の聖書の御言葉を取り上げます。「平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる」(マタイ5:9)。この御言葉をもう少し、深く意味を考えてみますと、主イエス・キリストは、「平和を愛する人々は幸いである」とは言われていません。また、「平和を望み願っている人々は幸いである」とも言われたのでもありません。「平和を実現する人々は幸いである」と言われたのです。「平和を実現する人々は幸いである」とは、「平和をつくり出す人たちは、幸いである」と言い替えることができるかもしれません。「平和を愛する人々は幸いである」、「平和を願う人々は幸いである」と言われたのであれば、私たちも十分にできそうな気がしますが、「平和を実現する人々は、幸いである」という、このみことばに対して、私たちは、果たして平和を実現できる者なのかと考えてしまいます。なぜなら、「あなたは平和を実現する者として生きるか」と問われているこの聖書のことばに、「はい、できます」と言えるような私たちではないからです。私たちは、平和を愛することはできます。また平和を願うこともできます。しかし、平和を実現するどころか、平和を壊し、争いを引き起こすことの方がはるかに多いのが私たちなのです。それは、国レベルでは国民としてでも、会社レベルでは会社員や働き手としてでも、家庭レベルでは家族の一員としてでもそうです。

一方、「平和を実現する人々は、幸いである」という、平和を実現する人々には、妨げになるものを知らず知らずに持っています。私たちは平和の妨げになっているものと向き合う必要があります。妨げになっているものは何かと考えると、例えば、偏見(偏ったものの見方)、独善(自分だけが正しいと思い込む、独りよがり)、妬み、憎しみがあります。これらの妨げをどれ一つとっても、直ぐに解決されるものではありません。同じ信仰に生きる者の間でも、この世の事柄や、社会の問題についての考え方、平和を実現していく方策についての考えには違いが生じます。考えが違うのは、当然のことでありますし、考えが違うからこそ、良く話し合うことによって新しいことが生まれてくるのですが、時には先ほどの妨げによって争いを引き起こすことがあります。

この地上に平和を実現することは、易しいことではありません。むしろ難しいことだと思います。平和を願い祈ることは簡単ですが、それを実現するのは至難の業です。イエス・キリストは、そのことをよくご存知です。だから、「平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる」と言われたのだと思います。平和を実現する人がいたら、その人は「神の子」と呼ばれる。「神の子」というのは、神様みたいな人という意味です。平和を実現する人は神様みたいな人だ、それほどにそれは困難な、難しいことなのだと思います。

 

3.主イエス・キリストこそ平和を実現する者

 

今日の招詞に、へブル12:14のみことばを選びました。「すべての人との平和を、また聖なる生活を追い求めなさい。聖なる生活を抜きにして、だれも主を見ることはできません」。平和を追い求めることは、神のみこころです。神がそうできるように私たちを捕えてくださいます。そして、それを追い求めることが求められています。また、それを求めて行こうという促しがあるということです。「すべての人との平和を追い求めなさい」という静かな声が、そのような促しがあるとすれば、たとえ小さくとも、それが自分の心の中にあるということが大切です。

イギリスの聖書学者バークレーは語ります「人の中にはいつも、紛争、対立、分裂を起こす人がいる。どこに行っても自分が争いの原因になっている人がいる。こういう人たちは争いを造り出す人たちである」。この人たちのところに行って、平和を造り出す努力をせよと言われています。バークレーは「平和を実現する人は幸いである」を、「人と人との間に正しい関係を造り出すひとは幸いだ。彼らは神の業を行っている」と読み替えます。

主イエス・キリストのみことばは、平和を実現することの困難さだけを語っているわけではありません。「平和を実現する人々は、幸いである」と主イエス・キリストは言われました。それは、「あなたがたはこの幸いに生きることができる」という宣言でもあります。私たちは、平和を実現する者としての幸いに生きることができます。しかし、それはどのようにして、でしょうか。それを知るために、「その人たちは神の子と呼ばれる」という言葉の中にあります。文字通り「神の子」であられる方がただお一人おられます。主イエス・キリストご自身です。主イエス・キリストは、神の独り子、文字通りの神の子です。私たちと神様との間に平和を実現して下さるためでした。神の子主イエス・キリストは、平和を実現する者としてこの世に来られたのです。イエスは言われました「しかし、私は言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである」(マタイ5:44-45)。私たちが自分を迫害する者、憎む者のために祈り始めた時、そこに神の平和が訪れます。この平和を教えて下さったのが主イエス・キリストです。神の子主イエスこそ、神と私たちの間に平和を実現する者なのです。

 

4.平和を実現する人々は幸いである

 

「平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる。」このみことばは、主イエス・キリストの平和のわざをあずかれるように一人一人に語り掛けてくださいます。「私はいのちを懸けて平和をつくる。あなた方もそこに立つ。だからこそあなたがたも平和をつくることができるようになる。私とおなじように神の子と呼ばれるのだ。」と言われます。私たちはそのみ声を聞きます。礼拝が終わり、それぞれの家に帰ります。職場に帰ります。争いに絶えぬところに帰ります。平和国家と自称しながら、この平和をめぐっても争いの絶えないこの国のなかで、一生懸命努力したことが簡単に吹き飛ばされてしまうようなことがあっても、この主イエス・キリスト信じて平和をつくっていきたいと思います。私たちの小さな言葉、小さなわざをもって平和をつくることができますように、願いたいと思います。やがて、望みに答えて、主イエスは再び来られ、私たちにもその仕事の一端を委ねられておられ、平和建設のわざを完成してくださるに違いありません。祈りたいと思います。

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