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日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2010年11月24日祈祷会(詩編74篇、廃墟の前に立つバビロン帰還民の嘆き)

投稿日:2019年8月21日 更新日:

1.神殿の廃墟の前に立ち

・本詩はエルサレム神殿の廃墟の前に立った詩人が、「主よ、いつまで私たちを捨て置かれるのか」と嘆く歌である。バビロン捕囚から帰還し、荒廃したエルサレム神殿を目の当たりにした民の復興嘆願の祈りがここにある。詩は「なぜ私たちを捨てられ、今も顧みられないのか」という嘆きから始まる。
-詩編74:1-3「神よ、なぜあなたは養っておられた羊の群れに怒りの煙をはき、永遠に突き放してしまわれたのですか。どうか、御心に留めてください。いのしえから御自分のものとし、御自分の嗣業の部族として贖われた会衆を、あなたのいます所であったこのシオンの山を。永遠の廃虚となった所に足を向けてください」。
・敵は森の木を切り倒すように斧を持って神殿を破壊し、神殿の壁の彫刻は壊され、聖所は焼かれたと詩人は嘆く。
-詩編74:4-8「あなたに刃向かう者は、至聖所の中でほえ猛り、自分たちのしるしをしるしとして立てました。彼らが木の茂みの中を斧を携えて上るのが見えると、ただちに手斧、まさかりを振るって彫り物の飾りをすべて打ち壊し、あなたの聖所に火をかけ、御名の置かれた所を地に引き倒して汚しました。『すべて弾圧せねばならない』と心に言って、この地にある神の会堂をすべて焼き払いました」。
・今回復の兆しはどこにもない。励ます預言者もいない。廃墟となった神殿で民は、敵にいつ襲われるかもしれない恐怖の中で礼拝を捧げ祈っている。帰国したイスラエルの民は神殿再建を志したが、異邦の民の妨害や自己の生活の困難さの中で一旦は挫折する。その間の状況を描くのがハガイ書だ(参考資料1,2参照)。
-詩編74:9-11「私たちのためのしるしは見えません。今は預言者もいません。いつまで続くのかを知る者もありません。神よ、刃向かう者はいつまで嘲るのでしょうか。敵は永久にあなたの御名を侮るのでしょうか。なぜ、手を引いてしまわれたのですか、右の御手は、ふところに入れられたまま」。
・詩人は神に対する信仰を失ってはいない。この神こそが原始の怪物を撃破して天地を創られた方、太陽や星を創造して宇宙を形成された方、ご自分の民をエジプトから贖いだすために海を分けられた方、民を約束の地に入らせるためにヨルダン川をせき止められた方であるからだ。
-詩編74:12-17「しかし神よ、いにしえよりの私の王よ、この地に救いの御業を果たされる方よ。あなたは、御力をもって海を分け、大水の上で竜の頭を砕かれました。レビヤタンの頭を打ち砕き、それを砂漠の民の食糧とされたのもあなたです。あなたは、泉や川を開かれましたが、絶えることのない大河の水を涸らされました。あなたは、太陽と光を放つ物を備えられました。昼はあなたのもの、そして夜もあなたのものです。あなたは、地の境をことごとく定められました。夏と冬を造られたのもあなたです」。

2.絶望の中での祈り

・神は絶望を祝福に変える力をお持ちの方、しかし今は沈黙され、神の民が砕かれ、主の神殿が荒廃するままに任せておられる。「主よ、立ち上がって下さい。あなたの民が嘲笑されるのはあなたの御名が侮られることです。あなたの神殿が廃墟のままであることは御名が汚されていることです」と詩人は必死に訴える。
-詩編74:18-20「主よ、御心に留めてください、敵が嘲るのを、神を知らぬ民があなたの御名を侮るのを。あなたの鳩の魂を獣に渡さないでください。あなたの貧しい人々の命を、永遠に忘れ去らないでください。契約を顧みてください。地の暗い隅々には、不法の住みかがひしめいています」。
・イスラエルの民にとって、前587年の王国の滅亡とそれに続くバビロンへの捕囚は民族存亡の危機であった。国を滅ぼされた民族の大半は歴史の中に埋没して行った。その中でユダは民族の同一性を保ち、帰還後に幾多の障害を乗り越えて神殿を建て直し、宗教共同体を再建することが出来た。それは過去の歴史を見つめ、直面する苦難の意味を探り、そこから自分たちの将来像を構築したためである。この詩にみられるように、民は絶望しているが希望を失ってはいない。
-詩編74:21-23「虐げられた人が再び辱められることなく、貧しい人、乏しい人が御名を賛美することができますように。神よ、立ち上がり、御自分のために争ってください。神を知らぬ者が絶えずあなたを嘲っているのを、御心に留めてください。あなたに刃向かう者のあげる声、あなたに立ち向かう者の常に起こす騒ぎを、どうか・・・忘れないでください」。
・現実の政治に展望が開けず、神に見捨てられた状態がすぐに終わるとも考えられない状況下で、詩人は混沌から秩序を生みだし、イスラエルをエジプトから贖いだされた方への信仰を失っていない。この信仰がある限り、人はどのような絶望からも立ち上がることが出来るだろう。苦難の中にあるローマ教会を励ますパウロの信仰と同じ心がここにある。
-ローマ8:18-25「現在の苦しみは、将来私たちに現されるはずの栄光に比べると、取るに足りないと私は思います。被造物は、神の子たちの現れるのを切に待ち望んでいます。被造物は虚無に服していますが、それは、自分の意志によるものではなく、服従させた方の意志によるものであり、同時に希望も持っています・・・私たちは、このような希望によって救われているのです。見えるものに対する希望は希望ではありません。現に見ているものをだれがなお望むでしょうか。私たちは、目に見えないものを望んでいるなら、忍耐して待ち望むのです」。

*詩編74篇参考資料1「樋口進・イスラエル史より」

エルサレム神殿の再建事業は、基礎が据えられた時点で、中断されてしまった。その理由は、ハガイ書1章1-11節の言葉から推測される。すなわち、エルサレムとその周囲の地の状況が余りにも悪く、そのために帰還した人々が非常に意気消沈していたので、彼らが神殿再建の事業に喜びを見付けることができなかったからである。人々は、「主の家を再建する時は、まだきていない」と言っていた(ハガイ書1・2)。彼らはまだ、自分たちの生活に忙しくしており、神殿再建の事業までには余裕がなかったのである(ハガイ書1・9)。当時既に、「板で張った家」に住んでいた人々がいたことは確かであるが(ハガイ書1・4)、それは多分、ほんのわずかであったであろう。そしてエルサレムの町は依然としてひどく荒れ果て、そこに住んでいた多くの人々は、きっと非常にみずぼらしい生活をしていたであろう。さらにまた、旱魃が起こったりし(ハガイ書1・10―11)、彼らの生活はますます苦しくなったようである。また、当時ユダ地方は、サマリア州に含まれており、そのサマリア総督の妨害にもあった(エズラ記4・4-5)。そのような事情からエルサレム神殿の再建事業は頓挫し、約20年間ほうっておかれたのである。

*詩編74篇参考資料2「ハガイ書・ゼカリヤ書に見る神殿再建の挫折」

・第二イザヤが指導した第一次帰還グループの神殿建設は失敗に終わったが、帰還民はエルサレムに定住し始める。ゼロからの再出発で、度重なる旱魃と飢饉も加わり、困難を極める中で、すこしずつ生活は安定し始める。第一次陣帰国から、18年経過した時、預言者ハガイが立てられる。
・ペルシャ官憲と住民の反対を恐れて、神殿再建に慎重になっている帰還民に、ハガイは神殿再建を呼びかける。BC522年、ダイオレス?世即位第二年6月1日に、預言者ハガイに主の言葉が臨み、ユダの総督ゼルバベルと、大祭司ヨシュアに神殿の建設が命じられる。
-ハガイ1:1-4「ダレイオス王の第二年六月一日に、主の言葉が預言者ハガイを通して、ユダの総督シェアルティエルの子ゼルバベルと大祭司ヨツァダクの子ヨシュアに臨んだ。『万軍の主はこう言われる。この民は、まだ、主の神殿を再建する時は来ていないと言っている・・・今、お前たちは、この神殿を廃虚のままにしておきながら自分たちは板ではった家に住んでいてよいのか』」。
・ハガイはダビデ王家の血筋をひく総督ゼルバベルと大祭司ヨシュアを激励して再建の業を委ねる。ペルシャの官憲や、住民の妨害を恐れず勇気を持って神殿再建にかかれとの託宣が与えられる。新しい神殿の栄光は、昔のソロモン神殿の栄光に勝るようになるとハガイは励ます。
-ハガイ2:4-9「今こそ、ゼルバベルよ、勇気を出せと主は言われる。大祭司ヨツァダクの子ヨシュアよ、勇気を出せ。国の民は皆、勇気を出せ、と主は言われる。働け、私はお前たちと共にいると万軍の主は言われる。ここに、お前たちがエジプトを出たとき、私がお前たちと結んだ契約がある。私の霊はお前たちの中にとどまっている。恐れてはならない・・・この新しい神殿の栄光は昔の神殿にまさる・・・この場所に私は平和を与えると万軍の主は言われる」。
・工事は続けられて其の年の9月24日、神殿の基礎が置かれた記念すべき日に、総督ゼルバベルを王として指名する神託が与えられる。ダビデ王家の再興宣言だ。
-ハガイ2:21-23「ユダの総督ゼルバベルに告げよ。私は天と地を揺り動かす。私は国々の王座を倒し、異邦の国々の力を砕く。馬を駆る者もろとも戦車を覆す。馬も、馬を駆る者も、互いに味方の剣にかかって倒れる。その日には、と万軍の主は言われる。わが僕、シェアルティエルの子ゼルバベルよ、私はあなたを迎え入れる、と主は言われる。私はあなたを私の印章とする。私があなたを選んだからだと万軍の主は言われる」。
・しかし、この王位復活宣言を最後として、ハガイの預言は突如ここで終わる。ゼカリヤ書によれば、王擁立が、独立運動と誤解されて、総督ゼルバベルが失脚したためと推測される。ここに神殿再建はとん挫した。

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