1.申命記の発見
・ユダ王マナセは主の預言者たちを殺し、アッシリアの異教礼拝を取り入れた。マナセの時代、アッシリアはエジプトを制圧し、イスラエルはその支配下に置かれ、親アッシリア政策を採らざるを得なかった。後継者ヨシヤの時代になるとアッシリアは衰退を始める。ヨシヤはマナセの導入した偶像を廃棄し神殿を改修した。
−?列王記22:1-7「ヨシヤは八歳で王となり、三十一年間エルサレムで王位にあった。・・・彼は主の目にかなう正しいことを行い、父祖ダビデの道をそのまま歩み、右にも左にもそれなかった。ヨシヤ王の治世第十八年に、王は・・・書記官シャファンを主の神殿に遣わして言った。『大祭司ヒルキヤのもとに上り、主の神殿に納められた献金・・・を集計させなさい。それを主の神殿の責任を負っている工事担当者の手に渡し、更に神殿の破損を修理するために主の神殿にいる工事担当者に渡しなさい』」。
・その時、大祭司ヒルキヤは神殿で律法の書を見つけたとしてヨシヤ王に差し出した。
−?列王記22:8-10「大祭司ヒルキヤは書記官シャファンに『私は主の神殿で律法の書を見つけました』と言った。ヒルキヤがその書をシャファンに渡したので、彼はそれを読んだ。書記官シャファンは王のもとに来て、王に報告した『僕どもは神殿にあった献金を取り出して、主の神殿の責任を負っている工事担当者の手に渡しました・・・祭司ヒルキヤが私に一つの書を渡しました』と告げ、王の前でその書を読み上げた」。
・この書は原申命記と思われる。イザヤの影響下に為された宗教改革が挫折し、マナセの時代に異教化した宗教を清めることによって国を再出発させようとした祭司たちが、宗教改革案をまとめたが発表できず、神殿書庫にその書を収めた。その原申命記を大祭司ヒルキヤが王に渡したものと推測される。申命記法の成立がここにある。
−?列王記22:11-13「王はその律法の書の言葉を聞くと、衣を裂いた。王は祭司ヒルキヤ・・・書記官シャファン、王の家臣アサヤにこう命じた。『この見つかった書の言葉について、私のため、民のため、ユダ全体のために、主の御旨を尋ねに行け。我々の先祖がこの書の言葉に耳を傾けず、我々についてそこに記されたとおりにすべての事を行わなかったために、我々に向かって燃え上がった主の怒りは激しいからだ』」。
・申命記には「主の掟に従わない者は滅びる」と明記されている。ヨシヤ王は申命記の規定に神の怒りを感じた。
−申命記28:15-62「もしあなたの神、主の御声に聞き従わず、今日私が命じるすべての戒めと掟を忠実に守らないならば、これらの呪いはことごとくあなたに臨み、実現するであろう・・・あなたが悪い行いを重ねて、私を捨てるならば、あなたの行う手の働きすべてに対して、主は呪いと混乱と懲らしめを送り、あなたは速やかに滅ぼされ、消えうせるであろう・・・あなたの神、主の御声に聞き従わず、命じられた戒めと掟とを守らなかったからである」。
2.審判〜呪いではなく祝福としての国の滅亡
・大祭司ヒルキヤはヨシヤ王の命に従い、預言者フルダの元を訪れる。彼女はユダ滅亡の預言を行う。
-?列王記22:16-17「主はこう言われる。見よ、私はユダの王が読んだこの書のすべての言葉のとおりに、この所とその住民に災いをくだす。彼らが私を捨て、他の神々に香をたき、自分たちの手で造ったすべてのものによって私を怒らせたために、私の怒りはこの所に向かって燃え上がり、消えることはない」。
・主の怒りは消えない、ユダは滅ぼされる。しかし、ヨシヤが悔改めの意を示したので、滅びはヨシヤの時代には起きないと約束された。
-?列王記22:18-20「主の心を尋ねるためにあなたたちを遣わしたユダの王にこう言いなさい。あなたが聞いた言葉について、イスラエルの神、主はこう言われる。私がこの所とその住民につき、それが荒れ果て呪われたものとなると言ったのを聞いて、あなたは心を痛め、主の前にへりくだり、衣を裂き、私の前で泣いたので、私はあなたの願いを聞き入れた、と主は言われる。それゆえ、見よ、私はあなたを先祖の数に加える。あなたは安らかに息を引き取って墓に葬られるであろう。私がこの所にくだす災いのどれも、その目で見ることがない」。
・ヨシヤは改革を進める。彼は礼拝所をエルサレムに集中させ、偶像を棄てた。またアッシリアの領地となっていたサマリヤも取り戻し、その異教祭壇を破壊した。しかしヨシヤはエジプトとの戦いで戦死、改革は挫折しヨシヤの死後、10年で国は滅びた。主はヨシヤの悔改めを無視されたのか。そうではなく、ユダヤを裁き、その灰燼の中から真のユダヤを立てられる計画であった。同時代の預言者エレミヤはそう理解した。
-エレミヤ29:10-14「主はこう言われる。バビロンに七十年の時が満ちたなら、私はあなたたちを顧みる。私は恵みの約束を果たし、あなたたちをこの地に連れ戻す。私は、あなたたちのために立てた計画をよく心に留めている、と主は言われる。それは平和の計画であって、災いの計画ではない。将来と希望を与えるものである。・・・私はあなたたちをあらゆる国々の間に、またあらゆる地域に追いやったが、そこから呼び集め、かつてそこから捕囚として追い出した元の場所へ連れ戻す、と主は言われる」。