1.行く先々での勝利
・イスラエル統一王国を築いたダビデは周辺部族を次々と征服していく。西方の宿敵ペリシテを敗退させ、ガドや周辺村落を奪い、また東方のモアブ軍を撃って彼らの三分の二を殺し、残りを捕虜として年貢を払わせた。
―?サムエル8:1-2「ダビデはペリシテ人を討って屈服させ、ペリシテ人の手からメテグ・アンマを奪った。また、モアブを討ち、彼らを地面に伏させて測り縄ではかり、縄二本分の者たちを殺し、一本分の者は生かしておいた。モアブ人はダビデに隷属し、貢を納めるものとなった」。
・北のツオバやダマスコもまた、ダビデの支配下に入り、アラム人たちはダビデに朝貢するようになった。
―?サムエル8:3-6「ダビデは次に、ツォバの王、レホブの子ハダドエゼルがユーフラテスに勢力を回復しようと行動を起こしたとき、彼を討ち、騎兵千七百、歩兵二万を捕虜とし・・・ダマスコのアラム人がツォバの王ハダドエゼルの援軍として参戦したが、ダビデはこのアラム軍二万二千をも討ち、ダマスコのアラム人に対して守備隊を置いた。こうしてアラム人もダビデに隷属し、貢を納めるものとなった。主はダビデに、その行く先々で勝利を与えられた」。
・また南のエドムもダビデの支配下に入った。
―?サムエル8:13-14「ダビデはアラムを討って帰る途中、塩の谷でエドム人一万八千を討ち殺し、名声を得た。彼はエドムに守備隊を置くことにした。守備隊はエドム全土に置かれ、全エドムはダビデに隷属した。主はダビデに、行く先々で勝利を与えられた」。
・ダビデの勝利は「主はダビデにその行く先々で勝利を与えられた」という言葉で表現されている(8:6,14)。こうして、ダビデの時代に、アブラハムに約束された地が全て与えられた。アブラハムの時代から700年が経っていた。
―創世記15:18-21「その日、主はアブラムと契約を結んで言われた『あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、カイン人、ケナズ人、カドモニ人、ヘト人、ペリジ人、レファイム人、アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える』」。
2.祝福と呪いを考える
・度重なる勝利の中で、ダビデは獲得した戦利品を主のために聖別したとサムエル記は書く。並行する歴代誌ではこれらの金属を使って、このソロモンが神殿の調度品を作っている。
―?サムエル8:11「ダビデ王はこれらの品々を、征服した全ての異邦の民から得た銀や金と共に主のために聖別した」。
―?歴代誌18:8「ダビデは、ハダドエゼルの町ティブハトとクンから大量の青銅を奪い取った。ソロモンはこれを用いて青銅の「海」、柱、青銅の祭具を造った」。
・勝利は神が与えて下さった。だから、戦利品は主のために聖別する。そこには恵みをいただいた者の感謝がある。
―詩篇44:3-4「我らの先祖を植え付けるために、御手をもって国々の領土を取り上げ、その枝が伸びるために、国々の民を災いに落としたのはあなたでした。先祖が自分の剣によって領土を取ったのでも、自分の腕の力によって勝利を得たのでもなく、あなたの右の御手、あなたの御腕、あなたの御顔の光によるものでした」。
・前王サウルは度重なる勝利を自分の手柄にし、廃位された。ダビデも勝利に次ぐ勝利におごり始め、バテシバ事件を起こす。部下の妻バテシバを部下の出征中に奪い、その悪をごまかすために、部下を戦死させるという悪を犯す。
―?サムエル12:7-10「あなたに油を注いでイスラエルの王としたのは私である。私があなたをサウルの手から救い出し、あなたの主君であった者の家をあなたに与え、その妻たちをあなたのふところに置き、イスラエルとユダの家をあなたに与えたのだ。不足なら、何であれ加えたであろう。なぜ主の言葉を侮り、私の意に背くことをしたのか。あなたはヘト人ウリヤを剣にかけ、その妻を奪って自分の妻とした。ウリヤをアンモン人の剣で殺したのはあなただ。それゆえ、剣はとこしえにあなたの家から去らないであろう」。
・その結果、ダビデの家に不幸が相次ぐ。長子アムノンは異母妹タマルを辱めて殺され(13章)、三男アブサロムはダビデに反逆して王位を狙う(14-18章)。罪は贖わなければいけない。これが呪いである。
―申命記28:15-20「あなたの神、主の御声に聞き従わず、今日私が命じるすべての戒めと掟を忠実に守らないならば、これらの呪いはことごとくあなたに臨み、実現するであろう。・・・あなたが・・・私を捨てるならば、あなたの行う手の働きすべてに対して、主は呪いと混乱と懲らしめを送り、あなたは速やかに滅ぼされ、消えうせるであろう」。
・しかし、裁きは滅びではない。裁きを通して、人が罪を認め、悔い改めるならば、彼は再び祝福を受ける。裁きを通して人は清められていく。
―詩篇51:1-19「ダビデの詩。ダビデがバト・シェバと通じたので預言者ナタンがダビデのもとに来た時『神よ、私を憐れんでください、御慈しみをもって。深い御憐れみをもって、背きの罪をぬぐってください。私の咎をことごとく洗い、罪から清めてください。・・・打ち砕かれ悔いる心を、神よ、あなたは侮られません』」。