1.モーセの遺言
・モーセは自らの死を前に、民を祝福する。申命記33章はモーセが死に臨んで語った遺言だ。
−申命記33:1「これは神の人モーセが生涯を終えるに先立って、イスラエルの人々に与えた祝福の言葉である」。
・それは32章のモーセの歌に続いている。神が守って下さる、神の言葉を携えて新しい土地に行けとの命令だ。
−申命記32:45-47「あなたたちは、今日私があなたたちに対して証言するすべての言葉を心に留め、子供たちに命じて、この律法の言葉をすべて忠実に守らせなさい。それは、あなたたちにとって決して空しい言葉ではなく、あなたたちの命である。この言葉によってあなたたちはヨルダン川を渡って得る土地で長く生きることができる」。
・あなたたちをここまで導き、これから新しい土地を下さる方は神だ。神が戦われたからこそ、勝利があった。
−申命記33:2「主はシナイより来り、セイルから人々の上に輝き昇り、パランの山から顕現される。主は千よろずの聖なる者を従えて来られる。その右の手には燃える炎がある」。
・神が戦われる。その方に信頼して、従って行け。
−詩篇68:2-5「神は立ち上がり敵を散らされる。神を憎む者は御前から逃げ去る。・・・神に従う人は誇らかに喜び祝い、御前に喜び祝って楽しむ。神に向かって歌え、御名をほめ歌え。雲を駆って進む方に道を備えよ」。
・人の誤りは、神に頼らず、自分で戦う時に生じる。後の世の人々は、アッシリアの脅威に備えるためにエジプトに頼り、エジプトの圧力を避けるためにバビロンに頼った。人に頼る者は滅びる事を歴史は教える。
−イザヤ 31:1-8「災いだ、助けを求めてエジプトに下り、馬を支えとする者は。彼らは戦車の数が多く、騎兵の数がおびただしいことを頼りとし、イスラエルの聖なる方を仰がず、主を尋ね求めようとしない。・・・エジプト人は人であって、神ではない。その馬は肉なるものにすぎず、霊ではない。主が御手を伸ばされると、助けを与える者はつまずき、助けを受けている者は倒れ、皆共に滅びる・・・アッシリアは倒れる、人間のものではない剣によって。人間のものではない剣が彼らを食い尽くす。彼らは剣を恐れて逃げ、その若者たちは労役に服す」。
・イエスは捕らえようとする者に身を任された。全ては神の経綸の中にあるとの信頼からだ。
−マタイ26:52-54「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる。私が父にお願いできないとでも思うのか。お願いすれば、父は十二軍団以上の天使を今すぐ送ってくださるであろう。しかしそれでは、必ずこうなると書かれている聖書の言葉がどうして実現されよう」。
・パウロが私たちに勧めるのも、神の武具を手にとって戦えということだ。その武具は全て防御用だ。攻撃するのはただ「神の言葉」のみ。私たちは防具を身に着けて、神の助けを待てば良いとパウロは勧める。
−エペソ6:14-17「立って、真理を帯として腰に締め、正義を胸当てとして着け、平和の福音を告げる準備を履物としなさい。なおその上に、信仰を盾として取りなさい。それによって、悪い者の放つ火の矢をことごとく消すことができるのです。また、救いを兜としてかぶり、霊の剣、すなわち神の言葉を取りなさい」。
2.残されるものへの祝祷
・モーセは各部族の為に祈る。ヨルダン川東岸で苦境にあるルベン族に対しては「彼らを滅ぼさないで下さい」と執り成し、南からの敵に攻撃されているユダ族に対しては、「あなたが彼らをお守り下さい」と祈る。
−申命記33:6-7「ルベンを生かし、滅ぼさないでください。たとえその数が少なくなるとしても。主よ、ユダの声に耳を傾け、その民のもとに彼を来させてください。御手をもって彼のために戦い、苦しめる者からの助けとなってください」。
・レビ族に対しては、祭司としての役割を果たせるように執り成しを祈る。
−申命記33:10-11「彼らはあなたの裁きをヤコブに、あなたの教えをイスラエルに示し、御前に香をたき、祭壇に完全に焼き尽くす献げ物をささげます。主よ、彼の力を祝福し、その手の業を受け入れてください」。
・12部族それぞれのためにモーセは祈る。羊飼いは羊の事を祈って、その生を終える。モーセもイエスのような羊飼いだった。指導者の条件はただ一つ、群の為に命を捨てることだ。
−ヨハネ10:11「私は良い羊飼いである。良い羊飼いは羊のために命を捨てる」。
・最後にモーセは神に選ばれ、神が共におられるイスラエルの幸いを讃美する。
−申命記33:26-29「神のような方はほかにはない。あなたを助けるために天を駆け、力に満ちて雲に乗られる。・・・イスラエルは安らかに住み、ヤコブの泉のみが絶えない、穀物と新しい酒に富み、天が露を滴らす土地に。イスラエルよ、あなたはいかに幸いなことか。あなたのように主に救われた民があろうか。主はあなたを助ける盾、剣が襲うときのあなたの力。敵はあなたに屈し、あなたは彼らの背を踏みつける」。