1.リベカの計略
・イサクは長子エソウを後継者にしようとするが、妻リベカはヤコブに祝福が与えられるように計略をめぐらす。
―創世記27:6-10「リベカはその子ヤコブに言った、「私は聞いていましたが、父は兄エサウに、『私の為に、しかの肉をとってきて、おいしい食べ物を作り、私に食べさせよ。私は死ぬ前に、主の前であなたを祝福しよう』と言いました。それで、子よ、私の言葉にしたがい、私の言うとおりにしなさい。群れの所へ行って、そこからやぎの子の良いのを二頭私の所に取ってきなさい。私はそれで父のために、父の好きなおいしい食べ物を作りましょう。あなたはそれを持って行って父に食べさせなさい。父は死ぬ前にあなたを祝福するでしょう」。
・ヤコブはためらうがリベカは「イサクをだます呪いは自分が受ける」とまで言い、励まして行為させる。
―創世記27:13「母は彼に言った、「子よ、あなたがうける呪いは私が受けます。ただ、私の言葉に従い、行って取ってきなさい」。
2.祝福を騙し取るヤコブ
・ヤコブは目の見えない父イサクをだまして祝福を受ける。この祝福は族長の地位を継承するものであった。
―創世記27:27-29「どうか神が、天の露と、/地の肥えたところと、多くの穀物と、/新しいぶどう酒とをあなたに賜わるように。もろもろの民はあなたに仕え、/もろもろの国はあなたに身をかがめる。あなたは兄弟たちの主となり、/あなたの母の子らは、/あなたに身をかがめるであろう。あなたを呪う者は呪われ、/あなたを祝福する者は祝福される」。
・騙されたと知ったエソウはヤコブを呪い、殺そうとする。
―創世記27:35-36「よくもヤコブと名づけたものだ。彼は二度までも私を押しのけた(ヤーコブ)。さきには、私の長子の特権を奪い、こんどは私の祝福を奪った」。
・預言者の多くもヤコブのこの行為を肯定していない。
―エレミヤ9:3「人はその隣人を警戒せよ。兄弟ですら信用してはならない。兄弟といっても/「押しのける者(ヤコブ)」であり/隣人はことごとく中傷して歩く。」
3.ヤコブの逃亡
・怒ったエソウはヤコブを殺そうとし、リベカはヤコブを叔父の所に避難させる為に送り出した。
―創世記27:42-44「兄エサウはあなたを殺そうと考えて、みずから慰めています。子よ、今私の言葉に従って、すぐハランにいる私の兄ラバンのもとにのがれ、あなたの兄の怒りが解けるまで、しばらく彼の所にいなさい。」
・この「しばらく」が永遠の別れになる。リベカはヤコブに再開することなく死に、ヤコブは叔父ラバンの下で無為な20年を過ごす。リベカもヤコブも自分たちの罪の贖いをしなければならなかった。
―創世記31:41-42「私はこの二十年あなたの家族のひとりでありました。私はあなたの二人の娘のために十四年、またあなたの群れのために六年、あなたに仕えましたが、あなたは十度も私の報酬を変えられました。もし、私の父の神、アブラハムの神、イサクのかしこむ者が私と共におられなかったなら、あなたはきっと私を、から手で去らせたでしょう。神は私の悩みと、私の労苦とを顧みられて昨夜あなたを戒められたのです」。
・リベカやヤコブの罪により祝福はエソウからヤコブに移る。しかし神はこのようなヤコブを約束の継承者にした。神の御旨が人間のあらゆる営みを超えて実現している。
―ローマ9:13-18「私はヤコブを愛しエサウを憎んだ・・・。では、私達はなんと言おうか。神の側に不正があるのか。断じてそうではない。・・・故に,それは人間の意志や努力によるのではなく、ただ神の憐れみによるのである。・・・だから、神はその憐れもうと思う者を憐れみ、頑なにしようと思う者を、頑なになさるのである。」
・イエスの十字架もそうであった。ユダヤ人指導者の妬み、ローマ人の傲慢、弟子たちの裏切り等がイエスの十字架を招いたが、それらの人間の業を通して神の御旨が為されているのである。
―マルコ14:27「そのとき、イエスは弟子たちに言われた、「あなたがたは皆、私につまずくであろう。『私は羊飼を打つ。そして、羊は散らされるであろう』と書いてあるからである。」
・罪の汚点を抱えたものが祝福の担い手になる。マタイ1章のキリストの系図に4人の罪ある女性が特記されていることも、汚れやよごれを抱えたままの人間を神は祝福されることを示している