1.バベルの塔の建設(11:1‐4)
・洪水の後、人類文明が発達したのは、シナルの地であった。これは、ニムロデが造ったと言われる。
―創世記10:8-10「クシの子はニムロデであって、このニムロデは世の権力者となった最初の人である。・・・彼の国は最初シナルの地にあるバベル、エレク、アカデ、カルネであった。」
・人々はれんがとアスファルトを発明し、それで道路や水路、塔を建設していく。
―創世記11:3-4「彼らは互に言った、『さあ、れんがを造って、よく焼こう』。こうして彼らは石の代りに、れんがを得、しっくいの代りに、アスファルトを得た。彼らはまた言った、『さあ、町と塔とを建てて、その頂を天に届かせよう。そしてわれわれは名を上げて、全地のおもてに散るのを免れよう』」。
・こうして完成したのがバベルの塔である。
―メソポタミヤにおける考古学的発掘調査により、シュメールの複数の町で最上階に神殿を築いた巨大な方形の塔が見出された。それらは山を模した人工丘で、おもに日干しれんがとアスファルトを使用して作られており、ジッグラトと呼ばれる。バビロンで見つかった粘土板に楔形文字で記された物語によれば、この地の塔の土台は幅と奥行が約90メートル、高さは神殿自体も含めて100メートルほどあった。
2.神のようになろうとする人を神は砕かれた(11:5−9)
・天にまで届く塔を建てようとする人間の思いを神は砕かれた。
―創世記11:5-7「時に主は下って、人の子たちの建てる町と塔とを見て、言われた、『民は一つで、みな同じ言葉である。彼らはすでにこの事をしはじめた。彼らがしようとする事は、もはや何事もとどめ得ないであろう。さあ、われわれは下って行って、そこで彼らの言葉を乱し、互に言葉が通じないようにしよう』」
・この結果、人々は全地に散らばって行った。
3.技術や文明を聖書はどのように見るのか
・青銅や鉄を人間が見出したのは、レメクの子トバルカインの時である。
―創世記4:22「チラもまたトバルカインを産んだ。彼は青銅や鉄のすべての刃物を鍛える者となった。トバルカインの妹をナアマといった。」
・人類最初の発明は、人を殺す為の銅や鉄の精錬であった。
―創世記4:23「レメクはその妻たちに言った、『わたしは受ける傷のために、人を殺し、/受ける打ち傷のために、わたしは若者を殺す。』」
・れんがやアスファルトを用いて城壁が建てられる。通常、塔は城壁の上に見張りとして建てられる。人がその文明を用いて造ったものは、相手を殺傷し、自分を守る為の道具であった。
―創世記8:21「わたしはもはや二度と人のゆえに地をのろわない。人が心に思い図ることは、幼い時から悪いからである。わたしは、このたびしたように、もう二度と、すべての生きたものを滅ぼさない。」
・今日でも近代文明の諸技術は軍事目的のために開発されたものが大半である。
4.原初史は人間が神から離反していく歴史である。その離反から戻る旅が創世記12章以下の救済史である。
・人間の罪は段々と深くなり、それに応じて審きが為された。
―アダムの罪(最初の不服従)=楽園からの追放、カインの罪(最初の戒めの背反)=荒野への追放、レメクの罪(神を頼らない)=洪水、バベルの罪(神のようになろう)=地に散らされる(バベル=混乱)
・しかし、その審きの中に神は救いを用意される。
―アダムに対しては皮の衣が与えられ、カインに対しては保護の為のしるしが与えられ、洪水に対してはノアとその家族が生かされた。
・最終的に神は人間のために都を用意されている。その旅がアブラハムから始まる。
―ヘブル11:16「彼らが望んでいたのは、もっと良い、天にあるふるさとであった。だから神は、彼らの神と呼ばれても、それを恥とはされなかった。事実、神は彼らのために、都を用意されていたのである。」