1.アブラハムはエジプトから傷心の思いで帰国する(1-4節)
・エジプトで、アブラハムは神に頼ろうとせず、自分の智恵で、妻を犠牲にして身の安全を図った。
―創世記12:11-13「エジプトにはいろうとして、そこに近づいたとき、彼は妻サライに言った、『わたしはあなたが美しい女であるのを知っています。それでエジプトびとがあなたを見る時、これは彼の妻であると言ってわたしを殺し、あなたを生かしておくでしょう。どうかあなたは、わたしの妹だと言ってください。そうすればわたしはあなたのおかげで無事であり、わたしの命はあなたによって助かるでしょう』」。
・それにもかかわらず、主はアブラハムを恵まれ、妻サラと共に無事にエジプトを出た。アブラハムはその出発の地であるベテルに戻り、そこで悔改めた。
―創世記13:4「すなわち彼が初めに築いた祭壇の所に行き、その所でアブラムは主の名を呼んだ。」
2.ロトとの決別(5-13節)
・アブラハムと甥ロトは共にエジプトで豊かになり、多くの羊や牛を持つようになった。そのため、両者の牧者の間で、水と草をめぐる争いが起きた。
―創世記13:5-7「アブラムと共に行ったロトも羊、牛および天幕を持っていた。その地は彼らをささえて共に住ませることができなかった。彼らの財産が多かったため、共に住めなかったのである。アブラムの家畜の牧者たちとロトの家畜の牧者たちの間に争いがあった。」
・アブラハムはロトと別れて暮らすことを提案し、年長者の優先権を放棄して最初にロトに地を選ばせる。
―創世記13:10-11「ロトが目を上げてヨルダンの低地をあまねく見わたすと、主がソドムとゴモラを滅ぼされる前であったから、ゾアルまで主の園のように、またエジプトの地のように、すみずみまでよく潤っていた。そこでロトはヨルダンの低地をことごとく選びとって東に移った。こうして彼らは互に別れた。」
・ロトが選んだのは肥沃な土地であった。人は荒野を離れて豊かな地に住むことによって堕落をはじめる。
―申命記8:12-14「あなたは食べて飽き、麗しい家を建てて住み、また牛や羊がふえ、金銀が増し、持ち物がみな増し加わるとき、おそらく心にたかぶり、あなたの神、主を忘れるであろう。」
・アブラハムは荒野に残った。エジプトでの苦い思いが彼を成長させていた。アブラハムは自分で選ばないことで、主への信仰を表した。イエスが財産争いをする男に言われたのも「このような信仰を持て」ということだった。
―ルカ12:13-15「群衆の中のひとりがイエスに言った、『先生、わたしの兄弟に、遺産を分けてくれるようにおっしゃってください』。・・・それから人々にむかって言われた、『あらゆる貪欲に対してよくよく警戒しなさい。たといたくさんの物を持っていても、人のいのちは、持ち物にはよらないのである』」。
3.アブラハムへの祝福(14-18節)
・一人残されたアブラハムに対し、主は「目を上げて見よ」と言われ、祝福を与えられる。
―創世記13:14-17「ロトがアブラムに別れた後に、主はアブラムに言われた、『目をあげてあなたのいる所から北、南、東、西を見わたしなさい。すべてあなたが見わたす地は、永久にあなたとあなたの子孫に与えます。わたしはあなたの子孫を地のちりのように多くします。』」。
・ここで「見えないものに対する約束」が繰り返される。土地所有の約束が土地を持たない民に与えられ、子孫への祝福が子を持つことに出来ない夫婦に対して為される。
―創世記13:7「・・・そのころカナンびととペリジびとがその地に住んでいた。」
―創世記11:30「サライはうまずめで、子がなかった。」
・不可能を可能にする神の力への信頼がここで問われている。
―ヘブル11:8-12「信仰によって、アブラハムは、受け継ぐべき地に出て行けとの召しをこうむった時、それに従い、行く先を知らないで出て行った。信仰によって、他国にいるようにして約束の地に宿り、同じ約束を継ぐイサク、ヤコブと共に、幕屋に住んだ。・・・信仰によって、サラもまた、年老いていたが、種を宿す力を与えられた。約束をなさったかたは真実であると、信じていたからである。このようにして、ひとりの死んだと同様な人から、天の星のように、海べの数えがたい砂のように、おびただしい人が生れてきたのである。」
・イエスが神の国と神の義を求めた時、全てが与えられると言われるのも、同じ信仰である。
―マタイ6:33「まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添えて与えられるであろう。」