江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2024年1月11日祈祷会(申命記3章、約束の地を前に語るモーセ)

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1.約束の地の付与

 

・民はこれから約束の地に入るが、既に占領したヨルダン川東岸の土地はルベン族とガド族に与えられる。モーセは、彼らも共に約束の地への戦いに参加することを条件に土地の分与を認めた。そして、後継者ヨシュアに約束の土地=嗣業の地に攻め入ることを命じる。

・イスラエルは約束の地に入る。それはイスラエルの嗣業の地であるが、土地の所有は永遠に保証されるものではない。それは恩恵として与えられ、イスラエルが契約を破れば、取り去られるものである。今日の武装強国イスラエルのガザに対する過酷な弾圧を神はどう見ておられるのだろうか。

-申命記30:15-18「見よ、私は今日、命と幸い、死と災いをあなたの前に置く。私が今日命じるとおり、あなたの神、主を愛し、その道に従って歩み、その戒めと掟と法を守るならば、あなたは命を得、かつ増える。あなたの神、主は、あなたが入って行って得る土地で、あなたを祝福される。もしあなたが心変わりして聞き従わず、惑わされて他の神々にひれ伏し仕えるならば、私は今日、あなたたちに宣言する。あなたたちは必ず滅びる。ヨルダン川を渡り、入って行って得る土地で、長く生きることはない」。

・私たちの前にも「幸いと災い、命と死」が置かれている。私たちが過ちを犯し時、災いと死が臨むが、悔い改めれば赦される。神は罰すると同時に赦される方であることを信じる。

-申命記30:1-3「私があなたの前に置いた祝福と呪い、これらのことがすべてあなたに臨み、あなたが、あなたの神、主によって追いやられたすべての国々で、それを思い起こし、あなたの神、主のもとに立ち帰り、私が今日命じるとおり、あなたの子らと共に、心を尽くし、魂を尽くして御声に聞き従うならば、あなたの神、主はあなたの運命を回復し、あなたを憐れみ、あなたの神、主が追い散らされたすべての民の中から再び集めて下さる」。

 

2.モーセは約束の地に入ることは出来なかった

 

・モーセは主の前に罪を犯したため、約束の地に入ることは出来ないと宣告された。

-申命記32:51-52「あなたたち(モーセとアロン)は、ツィンの荒れ野にあるカデシュのメリバの泉で、イスラエルの人々の中で私に背き、イスラエルの人々の間で私の聖なることを示さなかったからである。あなた(モーセ)はそれゆえ、私がイスラエルの人々に与える土地をはるかに望み見るが、そこに入ることはできない。」

・モーセは主に懇願する。「私の人生の目標は、約束の地に入ることでした。どうかヨルダン川を渡らせて下さい」

-申命記3:23-25「私は、主に祈り求めた。『わが主なる神よ、あなたは僕である私にあなたの大いなること、力強い働きを示し始められました。あなたのように力ある業をなしうる神が、この天と地のどこにありましょうか。どうか、私にも渡って行かせ、ヨルダン川の向こうの良い土地、美しい山、またレバノン山を見せて下さい』」。

・モーセの願いは拒否された。

-申命記3:26-28「主は、あなたたちのゆえに私に向かって憤り、祈りを聞こうとされなかった。主は私に言われた。『もうよい。この事を二度と口にしてはならない。ピスガの頂上に登り、東西南北を見渡すのだ。お前はこのヨルダン川を渡って行けないのだから、自分の目でよく見ておくがよい。ヨシュアを任務に就け、彼を力づけ、励ましなさい。彼はこの民の先頭に立って、お前が今見ている土地を、彼らに受け継がせるであろう』」。

・モーセは無念の内に、ヨルダン川を前にモアブの地で死んだ(申命記34:5)。彼はモアブの谷に葬られたが誰もその墓の場所を知らない(34:6)。モーセがどのように苦労して、民をここまで導いてきたのかを私たちは知っている。約束の地に入る資格があるとしたら、正にモーセこそその人であるべきだと私たちは思う。そのモーセが約束の地を前にして、人間的に見れば無念の中に死んでいる。

 

3.モーセは約束の地を前にして死んだことをどう考えるか。

 

・申命記史家はモーセが神に対して罪を犯したから、約束の地に入れないのだと理解した。しかし私たちは納得できない。長い人生の中にあって、誰でも一度や二度は主に背き、罪を犯す。主はそれらの罪の一つ一つを赦されないかたなのか。モーセも納得していない。彼も主に何度も抗議を申し立てている。「私は、そのとき主に祈り求めた・・・どうか、私にも渡って行かせ、ヨルダン川の向こうの良い土地、美しい山、またレバノン山を見せてください。」(申命記3:23-25)

・しかし、主は拒否された。「主は、あなたたちのゆえに私に向かって憤り、祈りを聞こうとされなかった。主は私に言われた。『もうよい。この事を二度と口にしてはならない』」(申命記3:26)。

・「もう良い、この事を二度と口にしてはいけない」。モーセが無念の死を迎えたことを申命記は隠さない。神の思いと人間の思いは異なる(イザヤ55:8)。申命記31:16-17にヒントがあるような気がする。

-申命記31:16-17「あなたは間もなく先祖と共に眠る。するとこの民は直ちに、入って行く土地で、その中の外国の神々を求めて姦淫を行い、私を捨てて、私が民と結んだ契約を破るであろう。その日、この民に対して私の怒りは燃え、私は彼らを捨て、私の顔を隠す。民は焼き尽くされることになり、多くの災いと苦難に襲われる。」

・主はモーセに「荒野の40年」を思い起こせと言われる。

-「イスラエルの民はエジプトで奴隷として苦しみ、私に助けを求めた(出エジプト2:23)。私はその声を聞き、あなたを遣わして彼等をエジプトの地から救い出した。救出された民にエジプト軍が追ってくると彼らは言った「我々を連れ出したのは、エジプトに墓がないからですか。荒れ野で死なせるためですか。」(出エジプト14:11)。私は葦の海を二つに分けて彼等を助け、エジプト軍を滅ぼした。しかし、食べ物がなくなると彼らは不平を言った「我々はエジプトの国で、主の手にかかって、死んだ方がましだった。あのときは肉のたくさん入った鍋の前に座り、パンを腹いっぱい食べられたのに。あなたたちは我々をこの荒れ野に連れ出し、この全会衆を飢え死にさせようとしている。」(出エジプト16:3)。

-「私はマナを与えて彼等に食べさせた。マナに食べ飽きると彼らは言った「エジプトでは魚をただで食べていたし、きゅうりやメロン、葱や玉葱やにんにくが忘れられない。今では、私たちの唾は干上がり、どこを見回してもマナばかりで、何もない。」(民数記11:5-6)。私の民、あなたが40年間導いた民はこういう民だ。彼等が約束の地に入った瞬間に正しい民になると思うか。思わないだろう」。

-「主は言われる「私は、私が誓った土地へ彼らを導き入れる前から、既に彼らが今日、思い図っていることを知っていたのである」(申命記31:21)。「あなたは十分に苦労した。この先あなたを待っているのは新しい幻滅と苦難だけである。これから先の苦労は若いヨシュアに任せよ。あなたは十分に働いた。私の業は民が約束の地に入った時に完成するのではなく、それもまた途中経過の一つなのだ」と。

 

4.人生は未完であっても良いのではないか

 

・私たちは思う「人生、この世の生は未完であって良いのではないか」。私たちはこの世では約束の地を目指して旅をするが、私たちの旅は死では終らない。死も途中経過の一つだ。モーセは荒野で死に、未完の生涯を終えた。そのことによってモーセは荒野に残り、民は引き続き荒野からの声を聞きつづけた。民は安住の地にありながら、モーセが荒野に残ることで、常に約束実現の前夜の緊張状態に立ち戻される。

・マルティン・ルーサー・キング牧師は暗殺される前日、「私は山の頂に登ってきた」と説教した。

-1968年4月3日説教から「一体これから何が起ころうとしているのか、私には分からない。ともかく、私たちの前途が多難であることは事実である。しかしそんなことは、今の私には問題ではない。なぜなら、私はすでに山の頂に登ってきたからである。従って、もう何も心配していない。私だって、ほかの人と同じように長生きしたいと思う。長寿にはそれなりの意味があるから。だが、もうそういうことも気にしていない。神の御心を全うしたいだけである。神は私に山に登ることをお許しになった。そこからは四方が見渡せた。私は約束の地も見た。私は皆さんと一緒にその地に到達することは出来ないかもしれない。しかし今夜、これだけは知っていただきたい。すなわち、私たちは一つの民として、その約束の地に至ることが出来る、ということである。だから、私は今夜、幸せである。もう何も不安なことはない。私はだれも恐れてはいない。この目で、主の再臨の栄光をみたのだから」。

・彼は翌4月4日に、テネシー州メンフィスで白人民族主義者の凶弾に倒れ、39歳でこの世を去った。キングの説教は昔、モーセがネボ山に登り、神が約束されたカナンの地を前にして、イスラエルの民を祝福してから息絶えたという旧約聖書の記事を背景にしている。モーセはイスラエルの民をエジプトから救い出すために神により指導者に任ぜられ、40年の苦闘の末に約束の地カナンまで民を導いてきたが、約束の地を前にして死ぬ。この時の情景を歌ったものが新生讃美歌430番「静けき祈りの」である。

-静けき祈り3番から「静けき祈りの時はいと楽し、そびゆるピスガの山の高嶺より、ふるさと眺めてのぼりゆく日まで、なぐさめを与え喜びを満たす」。

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