1.教えを守る者は
・神は私たちに律法を与え、それを従って歩むように求められる。しかし、この世では法や道徳を無視して、富や権力を求めた者のほうが栄えるという不条理がある。
-箴言28:4「教えを捨てる者は神に逆らう者を賛美し、教えを守る者は彼らと闘う」。
・今日で言えば長期的な視点より、短期的な利益を求める政策に人々の人気が高まるということであろうか。アベノミクスは金融緩和によって経済成長を促す政策であるが、実際は日銀に国債を買わせ、年金資金に株を購入させるという市場操作を通して、短期的に円安と株高を演出した。しかし実体経済は悪化している。「貧乏でも、完全な道を歩む人は、二筋の曲がった道を歩む金持ちより幸いだ」という箴言の言葉は、アベノミクスの方向性の誤りを指摘している。
-箴言28:5-6「悪を行う者らは裁きを理解しない。主を尋ね求める人々はすべてを理解する。貧乏でも、完全な道を歩む人は、二筋の曲がった道を歩む金持ちより幸いだ」。
・慶大教授小熊英二は「思想の地層」(2016年3月8日朝日新聞)の中で、現実を直視せず、旧来型の復興を推し進めるこの国の愚かさを語る。現在の大阪万博開催の問題も、札幌五輪の誘致も、過去の栄光を求める時代外れの政策であろう。
-「津波被災地復興の惨状が、ようやく新聞・雑誌に載り始めた。防潮堤を始めとした巨大施設が建設される一方、人口流出と高齢化が加速している。宮城県石巻市雄勝地区を例にとれば、巨費を投じた防潮堤建設と高台移転が終わる頃には、人口は3分の1になる。巨大な防潮堤が守るのは道路だけで、住民は内陸や高台造成地に移転する。高台移転地は相互に孤立し、高齢者を中心とした数戸から数十戸の孤立集落となる。財政難の自治体が、これらの孤立集落に公的サービスを持続的に提供できるかは未知数だ。東日本大震災の復興費用には、10年間で計32兆円が見込まれている。これは被災者1人あたり約6800万円に相当する。だがその多くは建設工事に使われ、被災者の生活再建に直接支給されるのは約1%にすぎない。「ゴーストタウンから死者は出ない」のである。
-箴言28:2「反乱のときには国に首領となる者が多く出る。分別と知識のある人一人によって安定は続く」。
- 罪を隠す者は栄えない
・人は過ちや失敗を隠そうとする。しかし「罪を隠す者は栄えない」と箴言は断言する。
-箴言28:13「罪を隠している者は栄えない。告白して罪を捨てる者は憐れみを受ける」。
・パウロは過ちや失敗、すなわち自分の罪を明らかにする者こそ強いという真理を見出した。それは彼の苦難の中での格闘から明らかになった真理であった。
-第二コリント12:9-10「すると主は、『私の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ』と言われました。だから、キリストの力が私の内に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。それゆえ、私は弱さ、侮辱、窮乏、迫害、そして行き詰まりの状態にあっても、キリストのために満足しています。なぜなら、私は弱いときにこそ強いからです」。
・イエスと共に十字架につけられた犯罪者の一人は強さを求めてイエスを罵った。もう一人の犯罪者は弱さを認めてイエスに憐れみを乞うた。罪を認めない者には悔い改め生じず、その結果、救いからもれる。
-ルカ23:39-43「十字架にかけられていた犯罪人の一人が、イエスをののしった。『お前はメシアではないか。自分自身と我々を救ってみろ』。すると、もう一人の方がたしなめた。・・・そして、『イエスよ、あなたの御国においでになるときには、私を思い出してください』と言った。するとイエスは、『はっきり言っておくが、あなたは今日私と一緒に楽園にいる』と言われた」。
3.指導者に英知が欠けると搾取が進む
・指導者に英知が欠けると、搾取が増すと箴言は警告する。何故なら「愚かな指導者は貪ることしか考えず、彼らは空腹の獣よりも危険だからだ」と箴言は警告する。
-箴言28:15-16「獅子がうなり、熊が襲いかかる。神に逆らう者が弱い民を支配する。指導者に英知が欠けると搾取が増す。奪うことを憎む人は長寿を得る」。
・誤った経済政策が国民の貧困を加速する。現在、ひとり親家庭の貧困率は58.7%であるが、これは諸外国と比べて極端に高い(アメリカ47.5%・・・韓国26.7%、イギリス23.7%・・・デンマーク6.8%)。また1985-2009年の子どもの貧困率は一貫して上昇している。好景気の時もあったが、貧困率の上昇は止まらなかった。経済成長により全ての貧困問題は解決すると考える指導者には英知が欠けている。
-2015年3月25日日経ビジネス「2012年度、小中学生の就学援助費の受給率は全国で15.64%と過去最高を更新した。1995年の調査開始以来、一貫して増加している。これは、子供を抱えていながら、経済的に困窮している世帯の割合が増えていることを示している。都道府県別では大阪府が26.65%と最も高く、静岡県が6.23%と最も小さかった。自治体や地域によって大きな差があるのが実態だ。より小さな行政区分ではさらに差は大きくなる。37%、それが東京都足立区の就学援助の認定率だ。全国平均の2.4倍あり、3分の1以上の生徒が同制度を利用していることになる」。
・ひとり親世帯(母子世帯124万世帯、父子世帯22万世帯)の内、母子世帯の親の就労率は80%を超えているが、平均年収は181万円に過ぎない。母親は多くの場合、非正規雇用しか働く場がないからだ。自分の土地を耕してもパンに飽き足らない状況が続いている。
-箴言28:19-20「自分の土地を耕す人はパンに飽き足りる。空を追う者は乏しさに飽き足りる。忠実な人は多くの祝福を受ける。富むことにはやる者は罰せられずには済まない」。
・人は一片のパンのために犯罪を起こしうる存在だ。誰もが働けばパンに飽き足りる世の中をこそ目指すべきであろう。
-箴言28:21「人を偏り見るのはよくない。だれでも一片のパンのために罪を犯しうる」。
・「必要なものを必要なだけ与えて下さい」との祈りこそ、現代に必要な祈りであろう。
-箴言30:7-9「二つのことをあなたに願います。私が死ぬまで、それを拒まないでください。むなしいもの、偽りの言葉を私から遠ざけてください。貧しくもせず、金持ちにもせず、私のために定められたパンで私を養ってください。飽き足りれば、裏切り、主など何者か、と言うおそれがあります。貧しければ、盗みを働き、私の神の御名を汚しかねません」。
4.エホバの証人の“鞭うちの勧め”と箴言との関り
・箴言には子供をいさめるために「鞭」を用いなさいとの勧告が随所にある。
-箴言13:24「鞭を控えるものは自分の子を憎む者。子を愛する人は熱心に諭しを与える」。
-箴言22:8「悪を蒔く者は災いを刈り入れる。鞭は傲慢を断つ」。
-箴言22:15「若者の心には無知がつきもの。これを遠ざけるのは諭しの鞭」。
・エホバの証人はこの聖句を根拠に、こどもたちを諫めるために鞭を用いよと訓示しているという。
-2023.11.20毎日新聞から「キリスト教系新宗教『エホバの証人』の信者家庭で一時、子どもを棒などでたたく『むち打ち』が横行していた問題で、元信者の女性(45)は、「幹部が『下着を脱がしてたたけ』と指導し、むち打ちがエスカレートした」と証言した。教団は現在、むち打ちをしないよう注意喚起しているが、エホバの証人でむち打ちが横行したのは、聖書に「むちを控えるな」「懲らしめを怠るな」などの記述があることが影響している」。
・箴言は紀元前3世紀ごろのユダヤ教の教えを文字化したものであるが、これを考えなしに適用するかたくなさが一部キリスト者にある。逐語霊感的な聖書の読み方ではなく、時代背景を考慮した読み方が必要であろう。エホバの証人の「輸血拒否」の問題も、「肉は命である血を含んだまま食べてはならない」(創世記9:5)から来るのであろうが、聖書の語ることをそのまま現代生活に適用する過ちがそこにある。
・各教団が公表している信者数に
よると、統一教会60万人、カトリック教会43万人、エホバの証人21万人、モルモン教12万人、日本基督教団11万人、日本聖公会4.7万人、日本バプテスト連盟3.3万人、日本福音ルーテル教会2.1万人、セブンスデー・アドベンチスト教団1.4万人などとなっている。必ずしも正確な統計ではないだろうが、多くの人々が統一教会やエホバの証人等に帰属しているのは事実だろう。
・アメリカ人の50%はキリスト教徒であるが、その過半は「聖書を一言一句神の言葉と信じる」原理主義福音派といわれる。彼等は「現在、エルサレム神殿跡にあるイスラム教の金のドームが破壊され、エルサレム神殿がイスラエル人により再建された時、イエスはエルサレムで再臨される」と信じているという。それ故にアメリカは今回のガザ戦争においてもイスラエルを非難せず、無条件で支持する。日本の統一教会やエホバの証人を愚かと笑えない状況が世界最大のキリスト教国アメリカにあるとしたら、私たち日本人キリスト教徒はどうしたらよいのだろうか。