1.主による鍛錬
・著者は迫害の中にあって信仰が揺らいでいる人々に言う「あなた方は一人ではない。多くの主の証人たちが苦しみの中でその信仰を証ししてきた。このような証人たちの前で今あなた方は歩んでいるのだ」と。
―ヘブル12:1「私たちもまた、このようにおびただしい証人の群れに囲まれている以上、すべての重荷や絡みつく罪をかなぐり捨てて、自分に定められている競走を忍耐強く走り抜こうではありませんか」。
・ゴールにはイエスがおられる。彼は恥をもいとわないで十字架の死を耐えられた。この方を目指して走るのだ。
―ヘブル12:2-3「信仰の創始者また完成者であるイエスを見つめながら。このイエスは、御自身の前にある喜びを捨て、恥をもいとわないで十字架の死を耐え忍び、神の玉座の右にお座りになったのです。あなたがたが、気力を失い疲れ果ててしまわないように、御自分に対する罪人たちのこのような反抗を忍耐された方のことを、よく考えなさい」。
・読者たちは既に迫害を一度耐えている。おそらくは神殿に対する不敬罪で殺されたステパノ時代の迫害であろう。
―使徒言行録8:1-3「その日、エルサレムの教会に対して大迫害が起こり、使徒たちのほかは皆、ユダヤとサマリアの地方に散って行った。しかし、信仰深い人々がステファノを葬り、彼のことを思って大変悲しんだ」。
・著者はあえて言う「キリストは十字架で血を流されたが、あなた方はまだ血を流すほど苦しんだことはない」。必要があれば血を流すまでに抵抗せよ。イザヤもエレミヤも殺された。戦争に反対した兵役拒否者も殺された。
―ヘブル12:4「あなたがたはまだ、罪と戦って血を流すまで抵抗したことがありません」。
・読者たちは新しい迫害に直面している。おそらくはユダヤ戦争(65−70年のローマに対する反乱)下での愛国心高揚時のキリスト者に対する迫害であろう。著者はこの迫害・苦難こそ、あなた方を鍛えるための主の鍛錬なのだと説く。
―ヘブル12:5-11「わが子よ、主の鍛錬を軽んじてはいけない。主から懲らしめられても、力を落としてはいけない。なぜなら、主は愛する者を鍛え、子として受け入れる者を皆、鞭打たれるからである。あなたがたは、これを鍛錬として忍耐しなさい。神は、あなたがたを子として取り扱っておられます。いったい、父から鍛えられない子があるでしょうか。・・・肉の父はしばらくの間、自分の思うままに鍛えてくれましたが、霊の父は私たちの益となるように、御自分の神聖にあずからせる目的で私たちを鍛えられるのです。およそ鍛錬というものは、当座は喜ばしいものではなく、悲しいものと思われるのですが、後になるとそれで鍛え上げられた人々に、義という平和に満ちた実を結ばせるのです」。
・だからなえた手と弱くなった膝を強くして、集会の中の弱い者たちが試練に負けないように励ましなさい。
―ヘブル12:12-13「だから、萎えた手と弱くなったひざをまっすぐにしなさい。また、足の不自由な人が踏み外すことなく、むしろいやされるように、自分の足でまっすぐな道を歩きなさい」。
・苦難は不満を持って拒否し、不平を持って落胆するならば、何の実りももたらさない。しかし、苦難を主から与えられた鍛錬として受け止めたとき、それは私たちを精錬するものになる。キリスト者にとっても苦難は苦難である。しかし、この苦難を積極的に受け入れていく時、それは私たちの信仰を成長させ、多くの実を結ばせる。
2.贖われた者としての生活
・キリスト者はキリストの犠牲によって贖われたのだ。だからそれにふさわしい聖なる生活をしなさい。
―ヘブル12:14「すべての人との平和を、また聖なる生活を追い求めなさい。聖なる生活を抜きにして、だれも主を見ることはできません」。
・荒野で反抗した人々のように、また食物のために長子権を売ったエソウのようにならないように気をつけなさい。私たちはこの世でも安逸に、天国でも立派な生活をするというわけにはいかない。この世か天国か、どちらかを選ぶのだ。
―ヘブル12:15-17「神の恵みから除かれることのないように、また、苦い根が現れてあなたがたを悩まし、それによって多くの人が汚れることのないように、気をつけなさい。・・・一杯の食物のために長子の権利を譲り渡したエサウのように、みだらな者や俗悪な者とならないよう気をつけるべきです」。
・古い契約はシナイの荒野の中で結ばれた。それは律法を守らない者は死ぬという厳しさの中にあった。新しい契約はエルサレムのシオンの丘で結ばれた。あなた方は既に贖われて、天の国の住人になっているのだ。
―ヘブル12:22-24「あなたがたが近づいたのは、シオンの山、生ける神の都、天のエルサレム、無数の天使たちの祝いの集まり、天に登録されている長子たちの集会、すべての人の審判者である神、完全なものとされた正しい人たちの霊、新しい契約の仲介者イエス、そして、アベルの血よりも立派に語る注がれた血です」。
・あなた方は主キリストから招かれて既に御国にいるのだ。この救いからふるい落とされることの無いようにしなさい。
―ヘブル12:25-28「あなたがたは、語っている方を拒むことのないように気をつけなさい。もし、地上で神の御旨を告げる人を拒む者たちが、罰を逃れられなかったとするなら、天から御旨を告げる方に背を向ける私たちは、なおさらそうではありませんか。・・・私たちは揺り動かされることのない御国を受けているのですから、感謝しよう。感謝の念をもって、畏れ敬いながら、神に喜ばれるように仕えていこう」。