江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2020年9月2日祈祷会(ヨハネ黙示録13章、国家が悪魔化した時)

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  • 二匹の獣(ローマ皇帝とその追随者)

・ヨハネ黙示録は紀元95年頃のローマ帝国によるキリスト信徒迫害の中で苦しむ諸教会に宛てて書かれた書簡である。当時のローマ皇帝ドミティアヌスは自分の像を帝国内のあちらこちらに立てさせ、それを神として拝むように求めた。その中でキリスト者たちは、「神以外のものを神としない」として、皇帝礼拝を拒否し、迫害を受けた。その迫害の中にある信仰者たちに、ヨハネは、「ローマ帝国はサタンの化身であり、神はしばらくサタンが暴れるのを赦しておられるが、時が来ればサタンを滅ぼされるだろう」と預言する。この手紙は、サタン、時の支配者ローマ帝国の滅亡を預言しているので、かなり政治的危険を伴う内容であり、そのため、象徴的、黙示的に記述されている。そのローマ帝国のサタン性を告発する箇所が黙示録13章である。

・キリストの誕生を阻止できなかった竜は、海辺に立ち、配下となる獣を呼び出す。海は聖書的表象においては否定的な意味を持つ。それはカオス(混乱と破壊)の象徴である。獣には十の角と七つの頭があった。獣は、地中海世界を制し、七つの丘を持つ丘を首都として立てられたローマ帝国を指す。
-黙示録13:1-2「私はまた、一匹の獣が海の中から上って来るのを見た。これには十本の角と七つの頭があった。それらの角には十の王冠があり、頭には神を冒涜するさまざまの名が記されていた。私が見たこの獣は、豹に似ており、足は熊の足のようで、口は獅子の口のようであった。竜はこの獣に、自分の力と王座と大きな権威とを与えた」。
・ローマ皇帝は自分を「主」、「救い主」と呼ばせ、神として拝むことを強制した。そのローマに権力を与えたのは竜(サタン)である。獣の頭の一つは傷ついて死んだと思われたが、復活し、人々はその力に驚き、獣を拝んだ。68年に死んだ皇帝ネロの復活伝説が背景にある。
-黙示録13:3-4「この獣の頭の一つが傷つけられて、死んだと思われたが、この致命的な傷も治ってしまった。そこで、全地は驚いてこの獣に服従した。竜が自分の権威をこの獣に与えたので、人々は竜を拝んだ。人々はまた、この獣をも拝んでこう言った『だれが、この獣と肩を並べることができようか。だれが、この獣と戦うことができようか』」。
・獣は三年半の間、地上を支配する力が与えられた。地上の人々は獣(ローマ皇帝)を拝んだが、神の刻印を刻まれた者は拝むことを拒否し、迫害されていった。
-黙示録13:5-8「獣にはまた、大言と冒涜の言葉を吐く口が与えられ、四十二か月の間、活動する権威が与えられた。そこで、獣は口を開いて神を冒涜し、神の名と神の幕屋、天に住む者たちを冒涜した。獣は聖なる者たちと戦い、これに勝つことが許され、また、あらゆる種族、民族、言葉の違う民、国民を支配する権威が与えられた。地上に住む者で、天地創造の時から、屠られた小羊の命の書にその名が記されていない者たちは皆、この獣を拝むであろう」。
・三年半、キリスト教徒に対する迫害は続くであろう。キリスト教徒は捕らえられ、殺されていくであろう。「それが御心であれば殺されていけ、あなた方の死は無駄にならない」とヨハネは信徒たちに呼びかける。
-黙示録13:9-10「耳ある者は、聞け。捕らわれるべき者は、捕らわれて行く。剣で殺されるべき者は、剣で殺される。ここに、聖なる者たちの忍耐と信仰が必要である」。

・江戸時代、キリスト教は禁止され、信徒かどうかを調べるために踏み絵が用いられ、少数のキリスト者は踏むことを拒否し、捕らえられ、処刑されていった。榎本保郎氏はコメントする「そういうことはある人たちから見れば、馬鹿なことだと思うであろう。何も災いを自分の方に引き寄せる必要はないと思うかもしれない。しかし彼らはどんなに困難や苦しみがあってもイエスをキリストと告白した以上、踏み絵を踏まず、殺されていったのである」(榎本保郎、新約聖書1日1章)。ヨハネは同じ信仰を教会の信徒たちに求めている。

2.国家と教会

・海から出た獣の後を追って、第二の獣が地中から出てきた。この獣はしるしを行い、第一の獣を拝ませるように、人々を扇動していく。皇帝礼拝の手先となって活動した役人や祭司たちを指すのであろう。日本でも、天皇を拝まない者を検察や特高が治安維持法により捕らえ、収監していった。
-黙示録13:11-13「もう一匹の獣が地中から上って来るのを見た。この獣は、小羊の角に似た二本の角があって、竜のようにものを言っていた。この獣は、先の獣が持っていた全ての権力をその獣の前で振るい、地とそこに住む人々に、致命的な傷が治ったあの先の獣を拝ませた。大きなしるしを行って、人々の前で天から地上へ火を降らせた」。
・第二の獣は第一の獣の像を造り、これを拝ませ、拝まない者を殺した。戦前の日本が天皇のご真影を拝むことを強要し、教育勅語への敬礼を求め、各地に護国神社を造営してこれを拝ませたのと酷似している。
-黙示録13:14-15「先の獣の前で行うことを許されたしるしによって、地上に住む人々を惑わせ、また、剣で傷を負ったがなお生きている先の獣の像を造るように、地上に住む人に命じた。第二の獣は、獣の像に息を吹き込むことを許されて、獣の像がものを言うことさえできるようにし、獣の像を拝もうとしない者があれば、皆殺しにさせた」。
・この獣の名前は666といわれる。アラビア数字が発明される前は、アルファベットがそれぞれ数字の代用として用いられ、ヘブル語のアルファベットで皇帝ネロ(NERON QESAR)と書き、その数字を合わせると666になる。ネロとその後継であるローマ皇帝が、獣の正体であるとヨハネは言う。
-黙示録13:18「ここに知恵が必要である。賢い人は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は六百六十六である」。

・「獣の頭の一つは傷ついて死んだと思われた」という記事の背景には、68年に死んだ皇帝ネロの復活伝説がある。ネロは最初にキリスト教徒を迫害した皇帝で、彼の時代にパウロやペテロが殉教したと伝えられている。そのネロは失政の責任を取る形で自決するが、やがて復活したとの伝承が生れ、現皇帝ドミティアヌスがその生まれ変わりだとヨハネは考えている。

 

3.黙示録13章をどう読むか

・黙示録13章はローマ13章と並んで、国家と教会を考える手がかりにされて来した。パウロはローマ人への手紙の中で述べる「国家は神の秩序であり、信仰者はこれに従う」と。

-ローマ13:1-2「人は皆、上に立つ権威に従うべきです。神に由来しない権威はなく、今ある権威はすべて神によって立てられたものだからです。従って、権威に逆らう者は、神の定めに背くことになり、背く者は自分の身に裁きを招くでしょう」。

・しかし、ヨハネ黙示録が描くように国家が悪魔化する時には、国家のあり方を問いただすべきだと聖書は語る。私たちは今がどういう時代か、見極める力が必要だ。

-使徒言行録5:29「ペトロとほかの使徒たちは答えた『人間に従うよりも、神に従わなくてはなりません』」。

・パウロは語る「あなたの敵が飢えていたら食べさせ、渇いていたら飲ませよ。そうすれば、燃える炭火を彼の頭に積むことになる。悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい」(ローマ12:20-21)。今日の文脈の中で考えれば、「戦争に参加せよとの政府の命令があってもこれに従わない。そのことによって、投獄等の罰則が与えられればそれを受ける。しかし、平和実現のためにはできることをする」という生き方だ。

・イエスは「十字架を負って従え」と言われた。それはキリスト者として、世と違う方法で、世と人々に仕えることである。現在の日本を統治する政権は国家中心主義の傾向が強い。集団的自衛権の拡大解釈を通して、武力を強化し、軍備の充実で国を守ろうという時代が来つつあり、その先には中国やその他の国との軍事対立が起こるかもしれない。日本がまたいつか戦争に向かうのではないか、その懸念が消えない現在、私たちは注意して国家の動向を見守る必要がある。イエスは言われた「私はあなたがたを遣わす。それは、狼の群れに羊を送り込むようなものだ。だから、蛇のように賢く、鳩のように素直になりなさい」(マタイ10:16)。「悪に負けることなく、善をもって悪に勝つ」ために何をすれば良いのかを考える時である。

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