江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2020年4月1日祈祷会(第二ペテロ1章、主の来臨を待ち望む)

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1.第二ペテロ書はどのような書か

 

・第一ペテロ書は、紀元60年代の半ば頃に、使徒ペテロが小アジアの諸教会に送った手紙である。小アジアの信徒たちは異教社会の中で孤立し、圧迫と迫害を受けていた。その彼らにペテロは「異教徒の間で立派に生活しなさい。そうすれば、彼らは・・・あなたがたの立派な行いをよく見て、訪れの日に神をあがめるようになります」(1ペテロ2: 12)と励ました。そして、「主が再び来られて神の国が地上に実現する日を待ちなさい」(同4:7)と申し送った。パウロもペテロも「自分たちが生きている間に世の終わりの時が来る。その時主イエスが再臨され、神の国が来る」と信じていた。

・しかしパウロは64年に、ペテロも68年にローマで殉教して死に、彼らの生存中に神の国は来なかった。故国パレスチナでは戦争に負けたユダヤの首都エルサレムは破壊され、信仰の中核であったエルサレム神殿は崩壊した(紀元70年)。神殿崩壊は主イエスが終末の出来事として預言されていたことであり、信徒たちはイエスの再臨を待ち望んだ。しかしイエスは来られず、神の国も来なかった。教会の緊張感は弛緩し、信徒たちは何を目標に生きて行けばよいのか、わからなくなってきた。中には「終末など来ない、そうであればこの世を楽しく過ごして生きよう」という者も出てきた(二ペテロ3:4)。このような中で、教会の先行きに危機感を持ったペテロの弟子たちが、ペテロの名によって諸教会へ手紙を書いた、それが第二ペテロ書だと言われている。

 

2.偽教師の暗躍に悩む友へ

 

・人々は終末を待望していたがイエスの再臨はなく、神の救いの約束を待ちきれなくなっていた人々は自己救済を求めるようになっていた。彼らを心配したペテロの後継者がペテロの名によって手紙を書いた。

―第二ペテロ1:1-2「イエス・キリストの僕であり、使徒であるシメオン・ペトロから、私たちの神と救い主イエス・キリストの義によって、私たちと同じ尊い信仰を受けた人たちへ。神と私たちの主イエスを知ることによって、恵みと平和が、あなたがたにますます豊かに与えられるように」。

・終末の救いが信じられない時、人は、「この世でいかに幸福を得るか、自己実現をするか」が人生の目標となる。それは自己のために他者をむさぼる生き方であり、そこには本当の救いはないと著者は語る。

―第二ペテロ1:3-4「主イエスは、御自分の持つ神の力によって、命と信心とに関わる全てのものを、私たちに与えて下さいました。それは私たちを御自身の栄光と力ある業とで召し出して下さった方を認識させることによるのです。この栄光と力ある業とによって、私たちは尊くすばらしい約束を与えられています。それは、あなたがたがこれらによって、情欲に染まったこの世の退廃を免れ、神の本性にあずからせていただくようになるためです」。

・神の救いの約束を信じて今を生きる。自分が召され、選ばれていることを信じ、為すべき事を行う。そのことによってのみ救いは来る。人の罪の問題が解決されない以上、自力での救いはありえない。

―第二ペテロ1:5-8「だから、あなたがたは、力を尽くして信仰には徳を、徳には知識を、知識には自制を、自制には忍耐を、忍耐には信心を、信心には兄弟愛を、兄弟愛には愛を加えなさい。これらのものが備わり、ますます豊かになるならば、あなたがたは怠惰で実を結ばない者とはならず、私たちの主イエス・キリストを知るようになるでしょう」。

・著者は続ける。

-第二ペテロ1:9-11「だから兄弟たち、召されていること、選ばれていることを確かなものとするように、いっそう努めなさい。これらのことを実践すれば、決して罪に陥りません。こうして、私たちの主、救い主イエス・キリストの永遠の御国に確かに入ることができるようになります」。

 

3.主の再臨の約束に固く立って

 

・初代教会は、「主が再臨され、神の国が来ること」を祈り続けていた。この終末の希望は、教会の生死を決定する出来事だった。著者は語る「私たちは主が栄光に輝く姿をこの目で見たし、神の声も聴いた」と。

―第二ペテロ1:16-18「私たちの主イエス・キリストの力に満ちた来臨を知らせるのに、私たちは巧みな作り話を用いたわけではありません。私たちは、キリストの威光を目撃したのです。荘厳な栄光の中から『これは私の愛する子。私の心に適う者』というような声があって、主イエスは父である神から誉れと栄光をお受けになりました。私たちは、聖なる山にイエスといたとき、天から響いてきたこの声を聞いたのです」。

・これはペテロたちが目撃した山上の変貌を指している。

―マルコ9:2-8「イエスは、ただペトロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。イエスの姿が彼らの目の前で変わり、服は真っ白に輝き、この世のどんなさらし職人の腕も及ばぬほど白くなった・・・雲が現れて彼らを覆い、雲の中から声がした『これは私の愛する子。これに聞け』。弟子たちは急いで辺りを見回したが、もはやだれも見えず、ただイエスだけが彼らと一緒におられた」。

・著者は言う「私たちの希望はこのイエスの来臨にかかっている。聖書の言葉はあなたがたを裏切らない」。御言葉こそ「暗い所に輝くともし火」なのだと著者は書き送る。

―第二ペテロ1:19-21「こうして、私たちには、預言の言葉はいっそう確かなものとなっています。夜が明け、明けの明星があなたがたの心の中に昇る時まで、暗い所に輝くともし火として、どうかこの預言の言葉に留意していてください。何よりもまず心得てほしいのは、聖書の預言は何一つ、自分勝手に解釈すべきではないということです。なぜなら、預言は、決して人間の意志に基づいて語られたのではなく、人々が聖霊に導かれて神からの言葉を語ったものだからです」。

 

  1. 望みが絶たれた時にもなお望む力を

 

・終末の遅延の中で、教会内に再臨についての疑念が高まっていた。ある人々は「終末の約束などない」を嘲笑した。

-第二ペテロ3:4「主が来るという約束は、一体どうなったのだ。父たちが死んでこのかた、世の中のことは、天地創造の初めから何一つ変わらないではないか」。

・再臨の遅延に不信感を募らせる人々に、著者は語る「遅れているのではなく、主は忍耐しておられるのだ」と。

-第二ペテロ3:8-9「主のもとでは、一日は千年のようで、千年は一日のようです。ある人たちは、遅いと考えているようですが、主は約束の実現を遅らせておられるのではありません。そうではなく、一人も滅びないで皆が悔い改めるようにと、あなたがたのために忍耐しておられるのです」。

・人は希望を失った時に、「生きる勇気」を失う。強制収容所にいた心理学者フランクルは、1944年のクリスマスが終わった後、人々が次から次に死んでいくのを見た。解放される希望が果たされず、生きる気力を無くしていったからだ。フランクルは言う「自分が人生から何を望みうるかよりも、人生から何を望まれているかを考えることにより、人はより良く生きうる」と。

-V.フランクル『夜と霧』より「1944年のクリスマスと1945年の新年との間にわれわれは収容所では未だかってなかったほどの大量の死亡者が出た。収容所の医長の見解によれば、それは、過酷な労働条件によっても、また悪化した栄養状態によっても説明され得るものではなく・・・囚人の多数がクリスマスには家に帰れるだろうという素朴な希望に身を任せた事実の中に求められるのである。問題は、人生から何をわれわれはまだ期待できるかが問題なのではなくて、むしろ人生が何をわれわれから期待しているかなのである・・・われわれが人生の意味を問うのではなくて、我々自身が問われたものとして体験されるのである」 (「夜と霧」、霜山徳爾訳、p181-182)。

・解放の希望を失って人々が死んでいったのは、1944年のクリスマスだった。ドイツが戦争に負けて、囚人たちが解放されたのはその4か月後、1945年4月だった。生き残った人たちと死んだ人たちを分けたのは、「未来に対する希望だった」とフランクルは語る。「もはや人生から期待すべき何ものも持っていないと考え、拠り所を失った人々はやがて仆れていった」。その中で希望を持ち続けた人々は生き残った。

・私たちはこの再臨の遅延をどう考えるのか。その時、カール・バルトの考え方は道を示す。

-カール・バルト「ローマ書」から「再臨が遅延するということについて、その内容から言っても少しも現れるはずのないものが、どうして遅延などするだろうか。再臨が遅延しているのではなく、我々の覚醒(めざめ)が遅延しているのである」。

・フランクルはやるべき仕事を持っている人間、あるいは自分は必要とされていると思えた人は生き残ることが出来たと語る「待っている仕事、あるいは待っている人間に対して持っている責任を意識した人間は、彼の生命を放棄することが決してできない」(p187)。フランクルは晩年、アメリカで死刑囚のいる刑務所に行って講演を行い、言った「明日もしあなたが死刑になるとしても、今からでも人生を意味あるものに変えるのに、遅すぎることは決してない」。フランクルは語る「あなたがどれほど人生に絶望しても、人生の方があなたに絶望することはない」。この人生を神と読み替えれば、これはまさに教会の語るべき福音である「あなたがどれほど神に絶望しても、神があなたに絶望することはない」。

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