1.内からの挑戦
・新しく生まれた教会では、人々が自分の所有物を売ってお金に変え、それを捧げた。これまでにない新しい共同体(原始共産制)がそこに形成されていった。
−使徒言行録4:32-35「信じた人々の群れは心も思いも一つにし、一人として持ち物を自分のものだと言う者はなく、すべてを共有していた。・・・信者の中には、一人も貧しい人がいなかった。土地や家を持っている人が皆、それを売っては代金を持ち寄り、使徒たちの足もとに置き、その金は必要に応じて、おのおのに分配されたからである。
・復活のイエスとの出会いが人々に所有からの解放をもたらし、「神の国は来た、この世の終わりは近い」との思いが人々に新しい生き方を迫った。これは現代の私たちにも「献身ろは何か」を迫る。
−使徒言行録4:36-37「レビ族の人で、使徒たちからバルナバと呼ばれていた、キプロス島生まれのヨセフも、持っていた畑を売り、その代金を持って来て使徒たちの足もとに置いた」。
・バルナバたちの献身は他の信徒たちを刺激し、人々は競って地所等を売って捧げ始めた。しかし、中にはごまかす人も出てきた。献金が心理的強制になった時、そこに罪が生まれる。アナニアの記事はそのことを示す。
−使徒言行録5:1-2「アナニアという男は、妻のサフィラと相談して土地を売り、妻も承知のうえで、代金をごまかし、その一部を持って来て使徒たちの足もとに置いた」。
・このような献金を神は喜ばれない。アナニアは神を欺いた罪で命をとられる。彼の献金は人々の賞賛を得るためのものであり、取り除かれなければいけない。現代でも教会建築等の際にこのような誤った献金が生じやすい。
−使徒言行録5:3-5「ペトロは言った「アナニア、なぜ、あなたはサタンに心を奪われ、聖霊を欺いて、土地の代金をごまかしたのか。売らないでおけば、あなたのものだったし、また売っても、その代金は自分の思いどおりになったのではないか。・・・あなたは人間を欺いたのではなく、神を欺いたのだ」。この言葉を聞くと、アナニアは倒れて息が絶えた。そのことを耳にした人々は皆、非常に恐れた。
・所有から解放されたかに見えた新しい共同体も、人間に根強く残る罪のために揺らいでいく。6章では物資の分配をめぐって争いが始まったことをルカは記す。教会は神の国のさきがけではあっても神の国ではない。
−使徒言行録6:1「そのころ、弟子の数が増えてきて、ギリシア語を話すユダヤ人から、ヘブライ語を話すユダヤ人に対して苦情が出た。それは、日々の分配のことで、仲間のやもめたちが軽んじられていたからである」。
2.外からの挑戦
・内に矛盾を抱えながら、教会はその本来の業を果たし続けていく。使徒たちは福音を述べ伝え、いやしの業を行っていった。その結果、信じる者が日々起こされ、信じない者も共同体を畏敬の念で見るようになった。
−使徒言行録5:12-14「使徒たちの手によって、多くのしるしと不思議な業とが民衆の間で行われた。・・・民衆は彼らを称賛していた。そして、多くの男女が主を信じ、その数はますます増えていった」。
・これはイエスを殺し、弟子たちに福音の宣教を禁じた権力者たちには耐えられないことだった。彼らは使徒たちを再び捕らえ、裁判にかける。
−使徒言行録5:27-28「彼らが使徒たちを引いて来て最高法院の中に立たせると、大祭司が尋問した「あの名によって教えてはならないと、厳しく命じておいたではないか。それなのに、お前たちはエルサレム中に自分の教えを広め、あの男の血を流した責任を我々に負わせようとしている」。
・使徒たちは反論する。イエスが言われた約束がここに成就している(ルカ12:11−12)
−使徒言行録5:29-30「ペトロとほかの使徒たちは答えた「人間に従うよりも、神に従わなくてはなりません。私たちの先祖の神は、あなたがたが木につけて殺したイエスを復活させられました」。
・使徒たちの反論は大祭司たちを激怒させ、彼らは使徒たちを殺そうとしたが、議員の一人ガマリエルの助言を受け入れてそれを思いとどまり、鞭打ちの身で彼らを解放した。
−使徒言行録5:38-40「あの者たちから手を引きなさい。ほうっておくがよい。あの計画や行動が人間から出たものなら、自滅するだろうし、神から出たものであれば、彼らを滅ぼすことはできない。もしかしたら、諸君は神に逆らう者となるかもしれないのだ。」
・使徒たちは鞭打ちを喜んで受ける。これで自分たちもイエスの苦しみの一部を受けることができたと。
−使徒言行録5:41-42「それで使徒たちは、イエスの名のために辱めを受けるほどの者にされたことを喜び、最高法院から出て行き、毎日、神殿の境内や家々で絶えず教え、メシア・イエスについて福音を告げ知らせていた」。