１．5千人を養う。
・ヨハネが殺されたと聞いて、イエスはガリラヤ湖の向こう岸に退かれたが、人々はイエスの後を追って来た。イエスのいやしを人々は求めたのである（今日でも多くの人はいやされることを求めて教会を訪ねる）。
―マタイ14:14「イエスは舟から上がって、大勢の群衆をごらんになり、彼らを深くあわれんで、そのうちの病人たちをおいやしになった。」
・支配者にとっては、この動きはイエスに対する警戒を強めた。群集の動きが政治化していたからである。
―ヨハネ6:14-15「人々はイエスのなさったこのしるしを見て、『本当に、この人こそ世にきたるべき預言者である』と言った。イエスは人々が来て,自分をとらえて王にしようとしていると知って、・・・山に退かれた。」
・弟子たちは群衆を解散させて食物を買いに行かせるように進言した。これに対しイエスは「あなた方の手で食物を与えなさい」と言われた。
―マタイ14:15-16「夕方になったので、弟子たちがイエスのもとにきて言った、『ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。群衆を解散させ、めいめいで食物を買いに、村々へ行かせてください』。するとイエスは言われた、『彼らが出かけて行くには及ばない。あなたがたの手で食物をやりなさい』」。
・5千人以上の人がおり、200デナリあっても賄いきれないパンが必要と思われた（1デナリは大人1日分の日当）。
―ヨハネ6:7「二百デナリのパンがあっても、めいめいが少しずついただくにも足りますまい」。
・弟子たちは途方にくれる「ここにはパンが5つしかありません」。イエスは言われる「それを出しなさい」。イエスが祝福された時、５つのパンが5千人を養った。
―マタイ14:18-20「イエスは言われた、『それをここに持ってきなさい』。そして群衆に命じて、草の上にすわらせ、五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさいて弟子たちに渡された。弟子たちはそれを群衆に与えた。みんなの者は食べて満腹した。」
２．この記事は何を伝えるのか。
・出エジプトの民は、荒野でマナを与えられた。今、人々はイエスから命のパンを与えられようとしている。
―ヨハネ6:31-33「『私たちの先祖は荒野でマナを食べました。それは天よりのパンを彼らに与えて食べさせたと書いてあるとおりです』。そこでイエスは彼らに言われた、『天からのパンをあなたがたに与えたのは、モーセではない。天からのまことのパンをあなたがたに与えるのは、わたしの父なのである。神のパンは、天から下ってきて、この世に命を与えるものである』」。
・必要なものは与えられると聖書は繰り返し約束する。
―マタイ6:26「空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。」
・5つのパンで5千人を養うのは奇跡である。しかし、手元にある5つのパンを差し出すことは誰でも出来る。日常の出来事を神が祝福された時に奇跡が起きる。
―ヨハネ12:24「よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。」
・今、与えられているものを感謝して受け取った時、必要なものは与えられる。
―マタイ6:31-33「何を食べようか、何を飲もうか、あるいは何を着ようかと言って思いわずらうな。これらのものはみな、異邦人が切に求めているものである。あなたがたの天の父は、これらのものが、ことごとくあなたがたに必要であることをご存じである。まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添えて与えられるであろう。」
・教会はこの食物の分け与えを記念して主の晩餐を行った。教会で主の晩餐を食することは、必要なものは与えられるから共に分かち合うことの確認でもある（故に教会は聖餐共同体と言われる）。
―?コリ11:18-21「あなたがたが教会に集まる時、お互の間に分争があることを、わたしは耳にしており、そしていくぶんか、それを信じている。たしかに、あなたがたの中でほんとうの者が明らかにされるためには、分派もなければなるまい。そこで、あなたがたが一緒に集まるとき、主の晩餐を守ることができないでいる。というのは、食事の際、各自が自分の晩餐をかってに先に食べるので、飢えている人があるかと思えば、酔っている人がある始末である。」