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日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2019年6月20日祈祷会(サムエル記下21章、24章、サムエル記補遺)

投稿日:2019年8月21日 更新日:

2019年6月20日祈祷会(サムエル記下21章、24章、サムエル記補遺)

1.サムエル記21章、ギブオン人に対する血の贖い

・サムエル記下は実質的に20章で終わり、列王記上1章へと続く。サムエル記下21〜24章は、サムエル記の編集者が付加的に記した補遺と考えられる。21章では三年間続く飢饉の意味をダビデが主に訊ねた時、「贖われていない血の報復」の故であるとの回答をいただいたことから始まる。
−サムエル記下21:1「ダビデの世に、三年続いて飢饉が襲った。ダビデは主に託宣を求めた。主は言われた。『ギブオン人を殺害し、血を流したサウルとその家に責任がある。』」
・ダビデはギブオン人の代表を招いて、どうすれば「血の贖いができるのか」と訊ねた。
−サムエル記下21:3「ダビデはギブオン人に言った。『あなたたちに何をしたらよいのだろう。どのように償えば主の嗣業を祝福してもらえるだろうか。』」
・ギブオン人はイスラエルのカナン侵略前に居住していた先住民で、ヨシュアに協力したので、イスラエル人はギブオン人を保護する旨の契約を結んでいた(ヨシュア記9:26-27)。しかしサウル王はこの契約を破り、ギブオンの祭司たちを虐殺した。その不正がまだ修復されていないので、今回の飢饉になったとダビデは理解した。
−サムエル記下21:4-6「ギブオン人はダビデに答えた。『サウルとその家のことで問題なのは金銀ではありません・・・私たちを滅ぼし尽くし、私たちがイスラエルの領土のどこにも定着できないように滅亡を謀った男、あの男の子孫の中から七人を私たちに渡して下さい。私たちは主がお選びになった者サウルの町ギブアで、主の御前に彼らをさらし者にします。』王は、『引き渡そう』と言った。」

2.サウルの子孫の処刑

・ このようにしてサウルの子孫7人がギブオン人の手に渡され、ギブオン人は彼らを処刑した。
−サムエル記下21:7-9「王はサウルの子ヨナタンの息子メフィボシェトを惜しんだ・・・王はアヤの娘リツパとサウルの間に生まれた二人の息子、アルモニとメフィボシェトと、サウルの娘ミカルとメホラ人バルジライの子アドリエルとの間に生まれた五人の息子を捕らえ、ギブオン人の手に渡した。ギブオンの人々は彼らを山で主の御前にさらした。七人は一度に処刑された。彼らが殺されたのは刈入れの初め、大麦の収穫が始まる頃であった」。
・息子たちを処刑されたサウルの側室リツパは遺体を守るために、処刑地を離れなかった。
−サムエル記下21:10「アヤの娘リツパは粗布を取って岩の上に広げた。収穫の初めのころから、死者たちに雨が天から降り注ぐころまで、リツパは、昼は空の鳥が死者の上にとまることを、夜は野の獣が襲うことを防いだ」。
・それを知ったダビデはサウル一族の骨を放置せず、墓に葬るように命じた。
−サムエル記下21:11-14「サウルの側女、アヤの子リツパのこの行いは王に報告された。ダビデはギレアドのヤベシュの人々のところへ行って、サウルの骨とその子ヨナタンの骨を受け取った・・・人々は今回さらされた者たちの骨を集め、サウルとその子ヨナタンの骨と共にベニヤミンの地ツェラにあるサウルの父キシュの墓に葬った。人々は王の命令をすべて果たした。この後、神はこの国の祈りにこたえられた」。

3.物語の意味するもの

・この物語には二つの意味があるように思える。一つは流された血の報復がされない限り、罪は償われないとの当時の人々の神学であろう。
−創世記9:5-6「あなたたちの命である血が流された場合、私は賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。人の血を流す者は人によって自分の血を流される。人は神にかたどって造られたからだ」。
・二つ目はしかるべく葬られない骨は流された血と同じく、叫び続けるとの考え方であろう。
−創世記4:10-12「主は言われた。『何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中から私に向かって叫んでいる。今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。』」
・人をどのように葬るかは、社会がその人をどう評価したかに関わる、人間の尊厳の問題だ。16世紀に日本にキリシタンが伝えられ、短期間のうちに多くの日本人が改宗してキリスト教徒になったが、歴史学者たちはその原因を宣教師たちが遺体を丁重に埋葬したことの中に見ている。
−筒井早苗・キリシタンにおける死の作法から「宣教師やキリシタンたちが、キリストの愛の実践に基づいて、病める者を見舞い、その死を看取り、貧者であっても丁重に葬っていたことに感動した者たちが数多く、キリシタンに改宗した」(金城学院大学キリスト教文化研究所紀要13,2010年)。

4.サムエル記補遺2、ダビデの人口調査

・サムエル記下21〜24章は、サムエル記編集者が付加的に記した補遺と考えられる。24章は21章に続くもので、そこではダビデの人口調査の可否が問題とされている。
−サムエル記下24:1「主の怒りが再びイスラエルに対して燃え上がった。主は、『イスラエルとユダの人口を数えよ』とダビデを誘われた。」
・歴代誌では「サタンがイスラエルの人口を数えるようにダビデを誘った」とある(歴代誌上21:1)。おそらくはダビデが常備軍強化のために人口調査を希望し、主がやむを得ずそれを認めたのであろうか。命令を受けたヨアブも、また命令をしたダビデ自身もそれを罪と考えている。戦いの帰趨は戦力の大小ではなく、神の御心であることを旧約は一貫して主張している。
−サムエル記下24:2-10「王は直属の軍の司令官ヨアブに命じた。『ダンからベエル・シェバに及ぶイスラエルの全部族の間を巡って民の数を調べよ。民の数を知りたい。』ヨアブは王に言った。『・・・主君、王はなぜ、このようなことを望まれるのですか。』・・・彼らは九か月と二十日をかけて全国を巡った後、エルサレムに帰還した。ヨアブは調べた民の数を王に報告した。剣を取りうる戦士はイスラエルに八十万、ユダに五十万であった。民を数えたことはダビデの心に呵責となった。ダビデは主に言った。『私は重い罪を犯しました。主よ、どうか僕の悪をお見逃しください。』」
・その結果、イスラエルの地に疫病が発生し、7万人が死んだ。
−サムエル記下24:15「主は、その朝から定められた日数の間、イスラエルに疫病をもたらされた。ダンからベエル・シェバまでの民のうち七万人が死んだ」。
・疫病はエルサレムまでまん延の勢いを見せていたが、主はそれを止められた。ダビデはそれを見て悔い改める。
−サムエル記下24:16-17「御使いはその手をエルサレムに伸ばして、これを滅ぼそうとしたが、主はこの災いを思い返され、民を滅ぼそうとする御使いに言われた。『もう十分だ。その手を下ろせ。』主の御使いはエブス人アラウナの麦打ち場の傍らにいた」。

5.アラウナの麦打ち場での祭儀

・預言者ガドがダビデに、悔い改めのために、「エブス人アラウナの麦打ち場にて、主のために祭壇を築き、焼き尽くす捧げものを捧げよ」と命じ、ダビデはこれに従った。
−サムエル記下24:18-19「その日ガドが来て、ダビデに告げた。『エブス人アラウナの麦打ち場に上り、そこに主のための祭壇を築きなさい。』ダビデは主が命じられたガドの言葉に従い上って行った。」
・ダビデは銀50シュケルで麦打ち場を買い取り、そこで焼き尽くす捧げものを捧げたところ、疫病は止んだ。
−サムエル記下24:24-25「王はアラウナに言った。『いや、私は代価を支払って、あなたから買い取らなければならない。無償で得た焼き尽くす献げ物を私の神、主にささげることはできない。』ダビデは麦打ち場と牛を銀五十シェケルで買い取り、そこに主のための祭壇を築き、焼き尽くす献げ物と和解の献げ物をささげた。主はこの国のために祈りにこたえられ、イスラエルに下った疫病は止んだ。」

6.物語の意味するもの

・この場所がやがてソロモンが神殿を立てる場所となって行く。この物語はダビデ王朝が礼拝を行う場所(神殿)を見出した物語なのであろう。
−歴代誌下3:1「ソロモンはエルサレムのモリヤ山で、主の神殿の建築を始めた。そこは、主が父ダビデに御自身を現され、ダビデがあらかじめ準備しておいた所で、かつてエブス人オルナンの麦打ち場があった。」
・新約において神殿はイエスが最後の犠牲となられたので、不要になったと理解する。
−使徒7:46-50「ダビデは神の御心に適い、ヤコブの家のために神の住まいが欲しいと願っていましたが、神のために家を建てたのはソロモンでした。けれども、いと高き方は人の手で造ったようなものにはお住みになりません。これは、預言者も言っている通りです。 『主は言われる。天は私の王座、地は足台。お前たちは、私にどんな家を建ててくれると言うのか。私の憩う場所はどこにあるのか。これらはすべて、私の手が造ったものではないか。』」
・パウロが語るように、私たちの中に神がおられる、私たちが神の神殿として自分たちを清めていくことが求められるのではないか。
−1コリント3:16-17「あなたがたは、自分が神の神殿であり、神の霊が自分たちの内に住んでいることを知らないのですか。神の神殿を壊す者がいれば、神はその人を滅ぼされるでしょう。神の神殿は聖なるものだからです。あなたがたはその神殿なのです。」

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