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日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2012年3月8日祈祷会(ホセア5章、国家滅亡の危機の中で)

投稿日:2019年8月21日 更新日:

1.何の危機感も持たない指導者と民

・ホセア5章は国家の滅亡が迫る中で、危機感も持たず快楽を求める指導者たちと民衆を告発し、その結果、兄弟国同士の戦争〜大国アッシリアの介入による国家危機を預言した章である。背景には当時の国際情勢がある。
−History of Israel : Ch.6北イスラエルの歴史から「ヤラベアム二世時代イスラエル王国は一時的に栄えたが、次のザカリヤはわずか六ケ月後に暗殺され、エヒウ王朝は終わった。その後20年間に5人の王が交替するが、そのうち3人は暗殺されている。かつてのアッシリア王たちはパレスチナ・シリアに遠征を行ったが、貢を納めさせることで満足していた。しかし紀元前745年に即位したティグラテピレセル三世は、西オリエント全体を支配しようとした。そのような中で、イスラエル王国と北のシリアは、同盟を結んでアッシリアに抵抗しようとし、この同盟にユダ王国も引き入れようとした(シリア・エフライム戦争、734年)が、失敗し、かえってアッシリアの介入を招き、首都サマリアとその周辺の地域を残して、アッシリア軍に占領されてしまった。ペカの時代である。次の王ホセアは、最初アッシリアに服従していたが、724年にエジプトに頼って、アッシリアへの貢を中止し、臣属関係を破棄した。アッシリアの王シャルマネセル五世は、直ちにイスラエルに軍隊を送り、ホセアを捕らえ、イスラエルの領土全体を占領した。堅固な町であったサマリアだけは、包囲されたまま三年間もちこたえたが、サルゴン二世によって征服された(紀元前721年)。このようにして約二百年間続いた北イスラエル王国は終焉した」。
・国際情勢は緊迫化していたが、イスラエル国内では指導者である王家や貴族、祭司たちは相次ぐ政権交代の中で、自分たちの権力維持と快楽追求に時を費やしていた。現実が見えない支配者たちにホセアの苛立ちは募る。
−ホセア5:1-2「聞け、祭司たちよ。心して聞け、イスラエルの家よ。耳を傾けよ、王の家よ。お前たちに裁きが下る。お前たちはミツパで罠となり、タボルの山で仕掛けられた網となり、シッテムでは深く掘った穴となった」。
・民もまた危機感を持たず、社会の混乱の中で、淫行(バアル礼拝)にのめり込んでいった。不安な時代にはエロ・グロ・ナンセンスが流行する。フロイトは、人間の根源に生への衝動(エロス)と死への衝動(タナトス)の共存を見た。飲酒と性的祭儀に満ちたバアル礼拝が世に満ちるのも不安の象徴なのだろうか。
−ホセア5:3-4「私はエフライムを知り尽くしている。イスラエルが私から隠れることはできない。まことに、エフライムは淫行にふけり、イスラエルは身を汚している。彼らは悪行のゆえに、神に帰ることができない。淫行の霊が彼らの中にあり、主を知りえないからだ」。

2.その危機感の欠如が兄弟国同士の戦争を招いた

・8節からはシリア・エフライム(イスラエル)戦争が描かれる。反アッシリア同盟を形成したイスラエルとシリアはユダを誘うがユダは参加せず、シリア・イスラエル同盟軍は大軍でエルサレムを囲む。ユダ王アハズはアッシリアに支援を求め、アッシリアはパレスチナに攻め入り、シリアは滅ぼされ、イスラエルは降服する。
−ホセア5:8-9「ギブアで角笛を、ラマでラッパを吹き鳴らせ。ベト・アベンで鬨の声をあげよ。ベニヤミンよ、背後を警戒せよ。懲らしめの日が来れば、エフライムは廃虚と化す。確かに起こることを私はイスラエルの諸部族に教えた」。
・ホセアは兄弟国ユダを攻撃したイスラエルを批判し、同時にアッシリアが侵攻した折に、兄弟国イスラエルに兵を送り、その国境を犯したユダをも非難する。彼らは兄弟国の危機に乗じて自らの領土を拡大した。
−ホセア5:10「ユダの将軍たちは国境を移す者となった。私は彼らに、水のように憤りを注ぐ」。
・アッシリアの侵攻という危機の中でイスラエル国内ではクーデターが起こり、ペカ王は殺され、新しく王となったホセアはアッシリアに降伏、多額の貢物を贈って国の滅亡を免れた。しかし国土の三分の二は失われた。他方、ユダはアッシリアに頼って自国の安全を保ったが、その代償として重い課税と異教祭儀の導入を迫られる。
−ホセア5:11-13「エフライムは蹂躙され、裁きによって踏み砕かれる。むなしいものを追い続けているからだ。私はエフライムに対して食い尽くす虫となり、ユダの家には、骨の腐れとなる。エフライムが自分の病を見、ユダが自分のただれを見たとき、エフライムはアッシリアに行き、ユダは大王に使者を送った。しかし、彼はお前たちをいやしえず、ただれを取り去ることもできない」。
・歴史的には対アッシリア政策をどのようにとったかで国の命運は決まった。しかしホセアはその奥にある神の裁きを見よという。アッシリアは道具に過ぎず、神はアッシリアを用いてイスラエルとユダを裁いておられるのだ。しかし両国が悔い改めるならば彼らを赦すと主は言われる。撃たれるのは罪のためであり、裁かれるのは新生のためである。歴史の中に神の働きを見るかが王たちと預言者を分ける。
−ホセア5:14-15「私はエフライムに対して獅子となり、ユダの家には、若獅子となる。私は引き裂いて過ぎ行き、さらって行くが、救い出す者はいない。私は立ち去り、自分の場所に戻っていよう。彼らが罪を認めて、私を尋ね求め、苦しみの中で、私を捜し求めるまで」。

*ホセア5章参考資料:ユダの預言者イザヤはシリア・エフライム戦争をどう見ていたのか(イザヤ書釈義から)

・シリア・エフライム連合軍がユダに攻め込んだ時、イザヤはユダ王アハズにアッシリアではなく主を頼れと求めたが、アハズはアッシリアに頼って危機を逃れ(前734年)、ユダはアッシリアの属国になった。イザヤはアハズに見切りをつけ、子ヒゼキヤに望みを託し、前728年にヒゼキヤが即位する。8:23-9:6の預言は即位式の預言である。
−イザヤ8:23-9:1「ゼブルンの地、ナフタリの地は辱めを受けたが、後には、海沿いの道、ヨルダン川のかなた、異邦人のガリラヤは、栄光を受ける。闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住む者の上に光が輝いた」。
・前733年アッシリアはパレスチナに侵攻し、イスラエル領ゼブルン・ナフタリの地はアッシリアに併合された。異国に奪われたイスラエルの領土がヒゼキヤ(インマヌエル)の即位により回復される幻をイザヤは見た。
−イザヤ9:2-4「あなたは深い喜びと、大きな楽しみをお与えになり、人々は御前に喜び祝った。刈り入れの時を祝うように、戦利品を分け合って楽しむように。彼らの負う軛、肩を打つ杖、虐げる者の鞭を、あなたはミディアンの日のように折ってくださった。地を踏み鳴らした兵士の靴、血にまみれた軍服はことごとく、火に投げ込まれ、焼き尽くされた」。
・「一人のみどりごが私たちのために生まれた」、第二のダビデとなるべき王(ヒゼキヤ)の即位の喜びだ。
−イザヤ9:5-6「一人のみどりごが私たちのために生まれた。一人の男の子が私たちに与えられた。権威が彼の肩にある。その名は『驚くべき指導者、力ある神、永遠の父、平和の君』と唱えられる。ダビデの王座とその王国に権威は増し、平和は絶えることがない。王国は正義と恵みの業によって、今もそしてとこしえに、立てられ支えられる。万軍の主の熱意がこれを成し遂げる」。
・北イスラエルは前733年にアッシリアの侵攻を受けて領土の一部を奪われ、前722年に滅んだ。イザヤはイスラエルの滅びの中に神の手を見ている。北イスラエルにはアモスやホセアの預言者が送られたが、民は聞かなかった。
−イザヤ9:7-9「主は御言葉をヤコブに対して送り、それはイスラエルにふりかかった。民はだれもかれも、エフライム、サマリアの住民もそれを認めたが、なお誇り、驕る心に言った『レンガが崩れるなら、切り石で家を築き、桑の木が倒されるなら、杉を代わりにしよう』」。
・アッシリアの侵攻を受ける前、イスラエルは既に自壊を始めていた。ヤロブアム王時代の繁栄を最後に、内政の混乱により次々に王が代わった。ヤロブアムの子ゼカルヤは即位6ヵ月後にシャルムに殺され、シャルムは1ヵ月後にはメナヘムに殺された。前747年には三人の王が次々に代わっていった(ゼカルヤ〜シャルム〜メナヘム)。
−イザヤ9:12-16「民は自分たちを打った方に立ち帰らず、万軍の主を求めようとしなかった。それゆえ主は、イスラエルから頭も尾も、棕櫚の枝も葦の茎も一日のうちに断たれた。長老や尊敬される者、これが頭。偽りを教える者、預言者、これが尾だ。この民を導くべき者は、迷わす者となり、導かれる者は、惑わされる者となった。それゆえ、主は若者たちを喜ばれず、みなしごややもめすらも憐れまれない。民はすべて、神を無視する者で、悪を行い、どの口も不信心なことを語るからだ。しかしなお、主の怒りはやまず、御手は伸ばされたままだ」。
・この混乱の中にアッシリアの影が延び始める。メナヘムの子のペカフヤが王につくがペカの反乱により殺され、ペカの時代にイスラエルはアッシリアに攻められ、領土の多くを失う(前733年)。ペカはやがてアッシリアの支援を受けたホシュアに殺される(前731年)。このホシェアの時代にイスラエルは滅ぶ(前721年)。
-イザヤ9:17-20「まことに悪は火のように燃え、茨とおどろをなめ尽くす。森の茂みに燃えつき、煙の柱が巻き上がる。万軍の主の燃える怒りによって、地は焼かれ、民は火の燃えくさのようになりだれもその兄弟を容赦しない。右から切り取っても、飢えている。左に食らいついても、飽くことができない。・・・しかしなお、主の怒りはやまず御手は伸ばされたままだ」。

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