1.戦いを前に恐怖するサウル
・ダビデは敵地ペリシテに逃げ、王を欺いて当地に滞在するが、ペリシテ軍がイスラエルと戦うことになり、ダビデも出陣を命じられる。イスラエル王となるべく油注がれた者が、イスラエルを敵として戦う事を迫られた。
―?サムエル28:1「ペリシテ人はイスラエルと戦うために軍を集結させた。アキシュはダビデに言った『あなたもあなたの兵も私と一緒に戦陣に加わることを、よく承知していてもらいたい』」。
・他方、サウルはペリシテ軍の来襲に備えて軍を集めるが、圧倒的な敵軍を見て怯える。彼は主に託宣を求めるが、主は彼に答えられない。彼自身が、ダビデに味方した主の祭司たちを殺しており、とりなす祭司もいなかった。
―?サムエル28:4-6「ペリシテ人は集結し、シュネムに来て陣を敷いた。サウルはイスラエルの全軍を集めてギルボアに陣を敷いた。サウルはペリシテの陣営を見て恐れ、その心はひどくおののいた。サウルは主に託宣を求めたが、主は夢によっても、ウリムによっても、預言者によってもお答えにならなかった」。
・預言者サムエルは既に死んでいたが、サウルは口寄せの女を用いて、サムエルの霊を呼び出し、主へのとりなしを求める。口寄せ、霊媒は禁止されていたが、恐怖にあせる彼は律法を破ってまでも、主のとりなしを求めた。
―?サムエル28:14-15「サウルにはそれがサムエルだと分かったので、顔を地に伏せ、礼をした。サムエルはサウルに言った『何故私を呼び起こし、私を煩わすのか』。サウルは言った『困り果てているのです。ペリシテ人が戦いを仕掛けているのに、神は私を離れ去り、もはや預言者によっても、夢によってもお答えになりません。あなたをお呼びしたのは、なすべき事を教えていただくためです』」。
・陰府から呼び出されたサムエルは答える「主はあなたを離れられた。戦いは敗れ、あなたも息子も明日死ぬ」。
―?サムエル28:16-19「何故私に尋ねるのか。主があなたを離れ去り、敵となられたのだ。主は、私を通して告げられた事を実行される。あなたの手から王国を引き裂き、あなたの隣人、ダビデにお与えになる。あなたは主の声を聞かず、アマレク人に対する主の憤りの業を遂行しなかったので、主はこの日、あなたに対してこのようにされるのだ。主はあなたのみならず、イスラエルをもペリシテ人の手に渡される。明日、あなたとあなたの子らは私と共にいる。主はイスラエルの軍隊を、ペリシテ人の手に渡される」。
・他方、ダビデはペリシテ軍と共に出陣したが、主はペリシテの将軍たちに「ダビデが裏切るかもしれないから軍勢からはずせ」と言わせ、ダビデはイスラエル討伐軍からはずされ、罪を犯すことから免れさせられた。
―?サムエル29:6-7「アキシュはダビデを呼んで言った『主は生きておられる。お前はまっすぐな人間だし、私と共に戦いに参加するのを私は喜んでいる。私の元に来たときから今日まで、何ら悪意は見られなかった。だが、武将たちはお前を好まない。今は、平和に帰ってほしい。ペリシテの武将たちの好まないことをしてはならない』」。
2.ダビデとサウルを分けたもの
・ダビデは主の守りを信ぜずに自己の才覚に頼り、ペリシテ軍の中で生きようとした。ダビデもサウルと同じく罪人だ。しかし、主はダビデを守り、サウルを捨てられた。ダビデは罪を犯しても悔い改めることが出来たからだ。パウロはそれを「ダビデは主の思うところを行う」からだと表現する。罪の赦しを信じるかどうかが二人を分けた。
―使徒言行録13:21-22「人々が王を求めたので、神は四十年の間、ベニヤミン族の者で、キシュの子サウルをお与えになり、それからまた、サウルを退けてダビデを王の位につけ、彼について次のように宣言なさいました『私は、エッサイの子で私の心に適う者、ダビデを見いだした。彼は私の思うところをすべて行う』」。
・サウルが悔い改めて主の名を呼べば、主はサウルを助けられたであろう。悔い改めた者を主は滅ぼされない。滅びを宣告されたニネベでさえ、悔い改めれば赦されたではないか。
−ヨナ3:6-10「ニネベの王に伝えられると、王は王座から立ち上がって王衣を脱ぎ捨て、粗布をまとって灰の上に座し、王と大臣たちの名によって布告を出し、ニネベに断食を命じた『人も家畜も、牛、羊に至るまで、何一つ食物を口にしてはならない。・・・人も家畜も粗布をまとい、ひたすら神に祈願せよ。おのおの悪の道を離れ、その手から不法を捨てよ。そうすれば神が思い直されて激しい怒りを静め、我々は滅びを免れるかもしれない』。神は彼らの業、彼らが悪の道を離れたことを御覧になり、思い直され、宣告した災いをくだすのをやめられた」。
・人は誰も罪を犯す。その危機の中で主の名を呼び続けることが出来るかが、人の生死を分ける。イエスを否認したペテロも悔い改めを通して赦されていく。ユダは自ら首をくくり、赦しを拒んだ。
―ルカ22:60-62「ペトロは『あなたの言うことは分からない』と言った。まだこう言い終わらないうちに、突然鶏が鳴いた。主は振り向いてペトロを見つめられた。ペトロは『今日、鶏が鳴く前に、あなたは三度私を知らないと言うだろう』と言われた主の言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた」。