1.ヤコブの子供たち、再度エジプトへ。
・飢饉は激しくなり、買い求めた食料もなくなった。ヤコブの息子たちは再度エジプトに行くことになった。
―創世記43:1-2「飢饉はその地に激しかった。彼らがエジプトから携えてきた穀物を食い尽した時、父は彼らに言った『また行って、我々のために少しの食糧を買ってきなさい』」。
・しかし、エジプトに行くためには末子のベニヤミンを連れて行かなければならない。ユダは渋る父に「ベニヤミンを命にかけて守るから一緒に行かせて欲しい」との説得を始める。
―創世記43:3-9「あの人は我々をきびしく戒めて、弟が一緒でなければ、私の顔を見てはならないと言いました。・・・あの子を私と一緒にやってくだされば、我々は立って行きましょう。そして我々もあなたも、我々の子供らも生きながらえ、死を免れましょう。私が彼の身を請け合います。私の手から彼を求めなさい。私が彼をあなたのもとに連れ帰って、あなたの前に置かなかったら、私はあなたに対して永久に罪を負いましょう。」
・ここに至ってヤコブも折れる。どうしようもない状況に追い込まれた時、人は始めて「全てを神の守りに委ねる」ことを決意する。そのために人に試みが与えられる。
―創世記43:13-14「弟も連れ、立って、またその人の所へ行きなさい。全能の神がその人の前であなたがたを憐れみ、もう一人の兄弟とベニヤミンとを返させてくださるように。もし私が子を失わなければならないのなら、失ってもよい」。
2.エジプトにて
・兄弟たちはエジプトに行った。ヨセフは兄弟のベニヤミンと20年ぶりに会い、感極まって密かに泣く。
―創世記43:26-30「ヨセフが家に帰ってきたので、彼らはその家に携えてきた贈り物をヨセフにささげ、地に伏して、彼を拝した。・・・ヨセフは目をあげて同じ母の子である弟ベニヤミンを見て言った『これはあなたがたが前に私に話した末の弟ですか』。また言った『わが子よ、どうか神があなたを恵まれるように』。ヨセフは弟なつかしさに心がせまり、急いで泣く場所をたずね、部屋にはいって泣いた。」
・捕えられていたシメオンも解放され、兄弟たちはヨセフと食卓につく。兄弟たちは席順が年齢順になっているのを見て不思議に思う。しかしまだ兄弟の和解はなされない。和解のためには兄弟たちの悔改めが必要だった。
3.兄弟の和解(44章)
・ヨセフは兄弟たちをカナンに戻す時、ベニヤミンの袋に銀の杯を忍ばせ、兄弟たちが戻ってくるように企んだ。
―創世記44:1-2「ヨセフは家司に命じて言った『この人々の袋に、運べるだけ多くの食糧を満たし、めいめいの銀を袋の口に入れておきなさい。また私の杯、銀の杯をあの年下の者の袋の口に、穀物の代金と共に入れておきなさい』。家司はヨセフの言葉のとおりにした。」
・ユダはこの出来事を、自分たちが前にヨセフに罪を犯したことの神の審きとして受け入れる。
―創世記44:16「我々はわが主に何を言い、何を述べ得ましょう。どうして我々は身の潔白をあらわし得ましょう。神が僕らの罪をあばかれました。我々と、杯を持っていた者とは共にわが主の奴隷となりましょう」。
・それは兄弟たちが、ヨセフを妬んで捨てたように、今回もベニヤミンを捨てて自分たちの安全を図ろうとするかを見るための試みであった。ユダは「ベニヤミンの代わりに自分を奴隷にして欲しい」と弟の助命を訴える。
―創世記44:30-34「私があなたの僕である父のもとに帰って行くとき、もしこの子供が一緒にいなかったら、どうなるでしょう。父の魂は子供の魂に結ばれているのです。この子供が我々と一緒にいないのを見たら、父は死ぬでしょう。そうすれば僕らは、あなたの僕である白髪の父を悲しんで陰府に下らせることになるでしょう。・・・僕をこの子供の代りに、わが主の奴隷としてとどまらせ、この子供を兄弟たちと一緒に行かせてください、この子供を連れずに、どうして私は父のもとに行くことができましょう。父が災に会うのを見るに忍びません」。
・ユダはかってヨセフを恨んでエジプトに売った張本人であった。そのユダが今ヨセフの弟の助命のために自分の命を捨てようとする。ヨセフは兄弟たちが罪を悔改め新しくされたことを知り、兄弟たちに自分の身を打ち明ける。
―創世記45:1-3「ヨセフは兄弟たちに言った『私に近寄ってください』。彼らが近寄ったので彼は言った『私はあなたがたの弟ヨセフです。あなたがたがエジプトに売った者です』」。
・ヨセフ物語は神が人間の罪をも用いてご自身の聖なる目的を遂げられる、その救済史を描いている。
―神は人間の罪を用いてその目的を果たされる(兄弟がヨセフをエジプトに売る、ボテパルの妻がヨセフを売る)。
―神は人間の罪を用いて彼を有罪と宣告し、赦しの必要性を人間に示される(ユダの悔改め等)。
―神は人間の罪を用いて、人間を試み、清められる(ヨセフを売ったユダがベニヤミンのために命を捨てるものになる)。