１．エソウを恐れるヤコブ（1-22節）
・ヤコブはラバンと別れた後、道を進み、マハナイム（二組の陣営の意味）で神のみ使いたちに出会った。これから兄エソウの陣営と対峙する（マハナイム）ヤコブを励ますために、神のみ使いが現れた。
―創世記32:1-2「ヤコブが旅路に進んだとき、神の使たちが彼に会った。ヤコブは彼らを見て、『これは神の陣営です』と言って、その所の名をマハナイムと名づけた。」
・ヤコブは兄エソウの様子を探らせる為、使者を派遣しエソウが400人を連れてヤコブの方へ向かっている事を知る。ヤコブはエソウを恐れ、どちらかが助かるように群れを二つに分ける。
―創世記32:6-8「使者はヤコブのもとに帰って言った『私たちはあなたの兄エサウのもとへ行きました。彼もまたあなたを迎えようと四百人を率いてきます』。そこでヤコブは大いに恐れ、苦しみ、共にいる民および羊、牛、らくだを二つの組に分けて、言った『たとい､エサウがきて、一つの組を撃っても、残りの組は逃れるであろう』」。
・ヤコブは恐怖の中で主の助けを求めた。
―創世記32:9-11「父アブラハムの神、父イサクの神よ、かつて私に『おまえの国へ帰り、おまえの親族に行け。私はおまえを恵もう』と言われた主よ、あなたがしもべに施されたすべての恵みとまことを私は受けるに足りない者です。私は､つえのほか何も持たないでこのヨルダンを渡りましたが、今は二つの組にもなりました。どうぞ、兄エサウの手から私をお救いください。私は彼がきて、私を撃ち、母や子供たちにまで及ぶのを恐れます。」
・祈りによってヤコブは変えられていく。彼は群れの最良のものをエソウへの贈り物として分けた。つまり、ヤコブは約束の地に入る為にその財産を捨てた。
―創世記32:13-15「彼はその夜そこに宿り、持ち物のうちから兄エサウへの贈り物を選んだ。すなわち雌やぎ二百、雄やぎ二十、雌羊二百、雄羊二十、乳らくだ三十とその子、雌牛四十、雄牛十、雌ろば二十、雄ろば十。」
・当初は災いを避けようとして群れを二つに分けた。今は、災いに取り組む為に和解の努力をした。イエスが言われたこともそうである。
―マタイ5:23-24「祭壇に供え物をささげようとする場合、兄弟が自分に対して何かうらみをいだいていることを、そこで思い出したなら、その供え物を祭壇の前に残しておき、まず行ってその兄弟と和解し、それから帰ってきて、供え物をささげることにしなさい。」
２．神の使いと格闘するヤコブ（32:23-32）
・ヤコブは家族と群れをヤボクで渡らせた後、一人残る。夜の闇の中で、彼がエソウに行った数々の悪事の記憶が甦り、エソウに殺されるかもしれないという恐怖に怯える。その時、神の使いが彼を襲った。
―創世記32:24「ヤコブはひとりあとに残ったが、ひとりの人が、夜明けまで彼と組打ちした。」
・ヤコブがここで経験したものは祈りの格闘であった。ヤコブの祈りに神が答えられ、自分の智恵と力に頼るヤコブの腿のつがいを外して、ヤコブを無力な者にされた。
―創世記32:25「その人はヤコブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人と組打ちするあいだにはずれた。」
・その時、主はヤコブに名を変えるように言われた。ヤコブ＝かかとをつかみ、押しのける者がイスラエル＝神に勝たれる者に変えられていく。兄を押しのけ、叔父を押しのけてヤコブは富を築いたが、心の中には不安と恐れがあった。彼は神と格闘することによって弱くされ、自分ではなく神に頼るものとされた。
―創世記32:30-31「ヤコブはその所の名をペニエル（神の顔）と名づけて言った、『私は顔と顔をあわせて神を見たが、なお生きている』。こうして彼がペニエルを過ぎる時、日は彼の上にのぼったが、彼はそのもものゆえに歩くのが不自由になっていた。」
・自己に無力にされた後のヤコブは、もうエソウを恐れない。彼は群れの先頭に立ってエソウと対面していく。
―創世記33:1-3「ヤコブは目を上げ､エサウが四百人を率いて来るのを見た。そこで彼は子供たちを分けてレアとラケルとふたりの仕え女とにわたし、仕え女とその子供たちをまっ先に置き、レアとその子供たちを次に置き、ラケルとヨセフを最後に置いて、自ら彼らの前に進み、七たび身を地にかがめて、兄に近づいた。」
・ヤコブの体験した祈りの格闘はイエスも体験されたものであり、今日の私たちもまた、体験するものである。
―ヘブル5:7「キリストは、その肉の生活の時には、激しい叫びと涙とをもって、ご自分を死から救う力のあるかたに、祈と願いとをささげ、そして、その深い信仰のゆえに聞きいれられたのである。」