1.ヤコブの子供たちの誕生(30:1-24)
・ヤコブはハランで11人の息子と1人の娘を得た。子供たちはレアとラケルの妻の座を巡る争いの中で生まれている。レアは子を産んだがヤコブに疎まれ、ラケルは愛されたが子を恵まれなかった。
―創世記29:30-31「ヤコブはまたラケルの所にはいった。彼はレアよりもラケルを愛して、更に七年ラバンに仕えた。主はレアがきらわれるのを見て、その胎を開かれたが、ラケルは、みごもらなかった。」
・女にとって祝福とは子が与えられることである。美しいラケルは子が与えられず、砕かれる。
―創世記30:1-2「ラケルは自分がヤコブに子を産まないのを知った時、姉をねたんでヤコブに言った、「わたしに子どもをください。さもないと、わたしは死にます」。
・他方、レアは子を与えられたがヤコブの愛はなかった。レアもまた砕かれる。
―創世記30:15「レアはラケルに言った、あなたがわたしの夫を取ったのは小さな事でしょうか。その上、あなたはまたわたしの子の恋なすびをも取ろうとするのですか」。
・ラケルは何とかして夫の子を持ちたいと思い、仕え女のビルハを夫のもとに入れて子を持とうとする。レアも負けじと仕え女のジルパをヤコブのもとに入れる。こうしてヤコブの子は増えていった。
・終に神はラケルの胎を開き、子を与えられた。この子がヨセフである。このヨセフがやがて一族をエジプトに導き、レアの子ルベンの子孫からモーセが起こされ民をエジプトから約束の地に導く。その約束の地で国を作ったのがレアの子ユダの子孫であるダビデであり、そのダビデからイエス・キリストが生まれる。
2.ヤコブとラバンの争い
・14年間ラバンに仕えたヤコブは故郷への帰還を願うが、ラバンは良い働き手であるヤコブの帰国を渋る。
―創世記30:27-28「ラバンは彼に言った、『もし、あなたの心にかなうなら、とどまってください。わたしは主があなたのゆえに、わたしを恵まれるしるしを見ました』。また言った、『あなたの報酬を申し出てください。わたしはそれを払います』」。
・ヤコブは羊と山羊の群れの中から、ぶちとまだらのものを報酬として申し出る。ほとんどの羊は白く、ほとんどの山羊は黒い。ぶちやまだらはまれであり、この取引はラバンを納得させた。ヤコブの用いた方法は胎教であった。母親が妊娠中に見たものが胎児に伝わり影響を与える。ヤコブは群れの水のみ場に皮をはいで筋を作り、交互に黒白の筋を残した枝を置き、その枝の前で家畜たちを交尾させた。
―創世記30:38-39「皮をはいだ枝を、群れがきて水を飲む鉢の中に、群れに向かわせて置いた。群れは水を飲みにきた時に、はらんだ。即ち群れは枝の前で、はらんで、しまのあるもの、ぶちのもの、まだらのものを産んだ。」
・このようにしてヤコブの家畜は増え、ラバンの家畜は減っていった。このことが新しい紛争を招く。
―創世記31:1-2「ヤコブはラバンの子らが、『ヤコブはわれわれの父の物をことごとく奪い、父の物によってあのすべての富を獲たのだ』と言っているのを聞いた。」
・この背景に創世記の著者が見るのは神の経綸であった。神はヤコブを祝福されラバンを呪われた。
―創世記31:8-9「彼が、『ぶちのものはあなたの報酬だ』と言えば、群れは皆ぶちのものを産んだ。もし彼が、『しまのあるものはあなたの報酬だ』と言えば、群れは皆しまのあるものを産んだ。こうして神はあなたがたの父の家畜をとってわたしに与えられた。」
・古代において人々が求めたのは神の祝福であった。この祝福を得ようとして人々は智恵を競い合う。ヤコブはエソウに与えられるべき祝福を騙し取った。そのために約束の地を追われ、異郷の地で20年間の苦労をする。しかし、神はヤコブを見捨てず、祝福を与えられた。聖書は人間の智恵を超えて働かれる神の経綸をここに示す。
―ローマ9:13-16「わたしはヤコブを愛しエサウを憎んだと書いてあるとおりである。では、わたしたちはなんと言おうか。神の側に不正があるのか。断じてそうではない。神はモーセに言われた、『わたしは自分のあわれもうとする者をあわれみ、いつくしもうとする者を、いつくしむ』。ゆえに、それは人間の意志や努力によるのではなく、ただ神のあわれみによるのである。」
・私たちも今神の憐れみを受けて教会につながるものになり、この教会の上に神の祝福があることを感じる。私たちがこの祝福を信じ、導きに従って教会を形成していった時、祝福は目に見える形をとっていく。
―申命記28:1「もしあなたが、あなたの神、主の声によく聞き従い、わたしが、きょう、命じるすべての戒めを守り行うならば、あなたの神、主はあなたを地のもろもろの国民の上に立たせられるであろう。」