江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2019年8月18日説教(創世記44:18-34、神の摂理に導かれて)

投稿日:2019年8月18日 更新日:

1.創世記42章、43章の振り返り

・ヨセフ物語を読んでいます。ヨセフは「7年間の飢饉の時が来るので、豊作の今、飢饉に備えて穀物を備蓄する」ことをファラオに進言し、穀物備蓄の責任者となります。神の夢の啓示の通り、飢饉が世界各地で発生し、多くの国の人々が穀物を買うためにエジプトを目指します。カナン地方でも食糧が不足し、ヤコブは子供たちにエジプトに行って穀物を購入してくるように命じますが、末息子のベニヤミンだけは同行させません(42:1-3)。ヨセフがいない今、ベニヤミンが愛妻ラケルの残した、ただ一人の子でした。エジプトに下った兄弟たちは、ヨセフが宰相になったとは知らずに彼に拝謁します。ヨセフがかつて見た夢(37:7兄たちの束が周りに集まって来て、私の束にひれ伏す)が、このような形で実現します。
・兄弟たちと面談したヨセフは、彼らに犯した罪を認めさせるために無理難題を押し付けます「お前たちが本当に正直な人間だというのなら、兄弟のうち一人だけを牢獄に監禁するから、ほかの者は皆、飢えているお前たちの家族のために穀物を持って帰り、末の弟をここへ連れて来い。お前たちの言い分が確かめられたら、殺しはしない」(42:19-20)。ここにいたって兄弟たちも過去に犯した罪を認めて悔います。ユダは語ります「ああ、我々は弟のことで罰を受けているのだ。弟が我々に助けを求めた時、あれほどの苦しみを見ながら、耳を貸そうともしなかった。それで、この苦しみが我々にふりかかった」(42:21)。
・兄弟たちは次男シメオンを人質として残してカナンに帰り、父ヤコブに全てを報告します。ヤコブは末息子ベニヤミンを連れてエジプトに戻らなければシメオンは解放されないことを聞き、子供たちを呪いますが(42:36)、ベニヤミンを連れてエジプトに戻ることは拒絶します(42:38)。飢饉は激しくなり、買い求めた食糧もなくなり、ヤコブの息子たちは再度エジプトに食糧を求めて、行くことになりました(43:1-2)。しかし、エジプトに行くためには末子のベニヤミンを連れて行かなければならない。ユダは渋る父に、「ベニヤミンを命にかけて守るから一緒に行かせて欲しい」との説得し(43:3-9)、ヤコブも折れます。兄弟たちはベニヤミンを連れて再びエジプトに下り、ヨセフと再会します(43:15-16)。ヨセフは兄弟たちを食事に招き、弟ベニヤミンと20年ぶりに会い、感極まって密かに泣きます(43:26-30)。捕えられていたシメオンも解放され、兄弟たちはヨセフと食卓につきますが、ヨセフはまだ自分の身分を証ししません。

2.44章の物語が始まる

・こうして今日の聖書個所44章の物語が始まります。ヨセフは兄弟たちに食糧を売ってカナンに戻す時、ベニヤミンの袋に銀の杯を忍ばせ、兄弟たちが戻ってくるように企みます(44:1-2)。ヨセフは銀杯を盗んだ罪で兄弟たちを告発します。「お前たちはなぜこのような忘恩の行為をしたのか」と問い詰めるヨセフにユダは答えます「御主君に何と申し開きできましょう。今更どう言えば、私どもの身の証しを立てることができましょう。神が僕どもの罪を暴かれたのです。この上は、私どもも、杯が見つかった者と共に、御主君の奴隷になります」(44:16)。兄弟たちが、かつてヨセフを捨てたように、今回もベニヤミンを捨てて自分たちの安全を図ろうとするかを見るための試みでした。しかしユダは「この子の代わりに、この僕を御主君の奴隷としてここに残し、この子はほかの兄弟たちと一緒に帰らせてください。この子を一緒に連れずに、どうして私は父のもとへ帰ることができましょう」と弟の助命を訴えます(44:33-34)。
・ユダはかってヨセフを妬んでエジプトに売り払った張本人でした(37:26-27)。そのユダが今は弟ベニヤミンの助命のために自分の命を捨てようとしています。ヨセフは兄弟たちが本心で罪を悔改め、新しくされたことを知り、兄弟たちに自分の身を打ち明けます「私はヨセフです。お父さんはまだ生きておられますか」(45:3)。人間は心の底に人に言えない、知られたくない一隅を持っています。悔改めとはその罪を告白し、赦しを乞うことです。ユダはかつてヨセフを奴隷として売った張本人ですが、今は弟ベニヤミンのために自分を捨てるものにされました。このユダの回心がヨセフの告白を生みます「私はあなたたちがエジプトへ売った弟のヨセフです。しかし、今は、私をここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。命を救うために、神が私をあなたたちより先にお遣わしになったのです」(45:4-5)。ヨセフは決定的な言葉を告白します「私をここへ遣わしたのは、あなたたちではなく神です」(45:8)。

3.悔改めのもたらす和解

・ヨセフの人生は神の摂理に導かれた、生かされた生でした。私たちもまた神に導かれて、人生の転換点を迎えます。私もある時、ヨセフと同じ導きを経験しました。私の場合はエレミヤ29章との出会いがその契機でした。そのエレミヤ29:11を今日の招詞に選びました。「私は、あなたたちのために立てた計画をよく心に留めている、と主は言われる。それは平和の計画であって、災いの計画ではない。将来と希望を与えるものである」。エレミヤ29章は、戦争に敗れ、遠いバビロンに捕囚になっている人々へ書かれた手紙です。捕囚となって異国で暮らす人々に、エレミヤは書きます「家を建てて住み、園に果樹を植えてその実を食べなさい。 妻をめとり、息子、娘をもうけ、息子には嫁をとり、娘は嫁がせて、息子、娘を産ませるように」(エレミヤ29:5-6)。手紙は続きます「主はこう言われる。バビロンに七十年の時が満ちたなら、私はあなたたちを顧みる。私は恵みの約束を果たし、あなたたちをこの地に連れ戻す」(エレミヤ29:10)。
・この手紙は驚くべき内容を伝えています。捕囚が70年続くということは、手紙の受信人たちは生きて故郷に帰ることはできないとの宣言です。「自分たちの置かれた状況を冷静に見つめよ。すぐには帰れないから、その地で日常生活を営め。絶望に陥って、与えられた仕事を着実に果たしえないようでは、正しく神を信じているとは言えない。しかしまた捕囚は永遠に続くものではない。時が終れば、子供たちは祖国に帰ることができる。故にその地で子を設け、子供たちにあなた方の信仰を伝えよ」と。
・私がこの言葉を自分への言葉と受取ったのは、20数年前、40代後半の時でした。私は大学を卒業して東京に本社を持つ生命保険会社に入社し、当時は本社財務部で仕事をしており、部下も20人いました。しかし50歳を前に突然、福岡支社駐在課長への転勤を言い渡されました。本社課長から支社駐在への転任は異例で、明らかな左遷でした。家族は子供たちの学校の関係で動けないため、単身で福岡に転任しました。教会は福岡バプテスト教会に行き始めましたがなじめず、籍は中野教会に置いたままでした。また東京バプテスト神学校の学びは通信で継続し、同時に九州バプテスト神学校でも学びを始めました。当時の私は「島流しにされた、早く東京に戻りたい」と毎日思っていました。
・その時、福岡バプテスト教会での教会学校の学びを通して、エレミヤ29章に出会いました。東京に帰ることのみ考えて、仕事や神学の学びに上の空だった私に対して、「その地に根を下ろせ、あなたを訓練するために福岡に送った」と主は言われました。福岡での生活が変わり始めました。福岡での最初の1年間は地獄でしたが、エレミヤ29章に出会った残りの1年間は充実した時でした。2年の時が過ぎ、会社がリストラ策として希望退職者を募り始めました。その時まで家族の生活や子供の学資を考えれば牧師になることは考えられませんでした。しかし、割増退職金によって、子供の学資と当面の生活費の目処がつき、会社を辞め、東京神学大学に学士入学し、二年後に牧師として当教会に赴任しました。災いとしか思えなかった福岡への転任と会社の業績悪化が牧師になる道を開き、エレミヤ29章がその道を導きました。
・ヨセフ物語において、神は人間の罪を用いてその聖なる目的を遂げられます。兄たちの憎しみと嫉妬とを用いてヨセフをエジプトに導き、主人の妻の偽りの告発という罪を用いてヨセフを王の牢獄に導き、王宮の人びとと知り合う機会が与えられます。そして時が満ちて彼はエジプトの宰相になり、食糧管理を行う者となり、兄弟たちを、やがては一族を養うものとなります。不思議な神の経綸です。神は私たちを「必要とされる場」に導かれます。
・ヨセフはカナンでは父の威を借りた傲慢な男で、必要とはされていませんでした。それ故、神はヨセフをエジプトに導き、ヨセフの知恵を通して全国民を、そしてヤコブ一族を養うものとされました。私も東京では神学の学びは不十分で、必要とされる場に送られるには準備が必要でした。だから神は私を福岡に送り、教会学校の学びを通して啓示を与えて下さり、当時牧師を必要とした篠崎教会に送ってくださいました。人は「必要とされる場」で働くときに最大の幸せを与えられます。今後のことはわかりませんが「自分を必要とする場」を神が示してくださいましたら、それに従いたいと願っています。神の導きは、途上では見えにくい。時が満ちて初めてそれが「導き」であることがわかります。しかし、途上であっても御言葉を聞き続けて行く時、新しい道が開かれて行きます。

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