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日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2016年5月15日説教(ヨハネ黙示録19:11-16、キリストの勝利)

投稿日:2016年5月15日 更新日:

2016年5月15日説教(ヨハネ黙示録19:11-16、キリストの勝利)

 

1.再臨のキリスト

 

・ヨハネ黙示録は、ローマ帝国の迫害下にある諸教会に、ヨハネが送った励ましの書簡です。ヨハネ自身も捕らえられ、地中海の孤島パトモス島に幽閉されており、その島でヨハネは神からの啓示を受けました「このような不義の世界はいつまでも続かない。悪は滅ぼされ、世界は再創造され、人々の涙はことごとく拭い去られる。そのような日が来る」。ヨハネは自分たちを迫害するローマ帝国滅亡の幻を見ます。それが黙示録18章のバビロン滅亡の記事で、その後、キリストが再臨され、悪を滅ぼされる様を見ます。それが今日与えられたテキスト、黙示録19章の幻です。

・ヨハネは天が開かれ、白い馬に乗った騎士が地上に降りてくるのを見ます(19:11)。その名は「誠実」及び「真実」と呼ばれ、正義をもって裁き、戦う存在です。馬は軍馬、白は勝利のしるしです。白い軍馬に乗ったキリストが裁き主として来られる様をヨハネは見ました。「その目は燃え盛る炎のようで、頭には多くの王冠があった」(19:12)。そして「血に染まった衣を身にまとっており、その名は神の言葉と呼ばれる」(19:13)とヨハネは記します。再臨のキリストの衣は血に染まっています。ある人々はこの血を「滅ぼされた敵の返り血」だと読み、別の人は「十字架で流されたご自分の血」だと理解します。私たちがこのどちらを自分の読み方にするかは、非常に大事なことです。そのことによって自分の生き方が変わってくるからです。

・「キリストは最後の審判の時、軍馬に乗ってこられ、悪に満ちた人々を剣で裁かれる」、アメリカの原理主義キリスト教徒たちは、再臨のキリストを「栄光の裁き主」と理解します。2001年9月11日、テロリストの襲撃を受けて米国人3000人が世界貿易センタービルで殺された時、当時のアメリカ大統領G.ブッシュは直ちに報復を決意し、演説の中で「テロリズムとの戦いは悪の世界を取り除く神の戦いであり、この戦いは十字軍(クルセード)である」と語りました。彼は「再臨のキリストは白い軍馬に乗った裁き主」であり、アメリカはキリストのために異教徒と戦う使命を与えられていると信じ、アフガンに侵攻し、イラクに攻め入りました。この「反キリストの異教徒を神に代わって裁く」という声明は、多くのアメリカ人に支持されました。しかし、その結果起こったアフガン・イラク戦争では、多くの無益なアメリカ人やイスラム教徒の血が流され、また滅ぼしたはずのイラクのフセイン政権の残党がイスラム国を打ち立て、自爆テロを繰り返し、世界は戦争前より悪化しました。アフガン・イラク戦争が神の祝福下にあるとは思えません。そして、黙示録を詳しく読む時、聖書の示す神は「血の報復をされるような方ではない」ことも明らかです。自分の思いを聖書に読み込む危険性がそこにあります。

 

2.神の言葉は生きている

 

・19章15節には「この方の口からは鋭い剣が出ている。諸国の民をそれで打ち倒す」とあります。一読すると、キリストが剣で敵を倒されるように読めますが、生前のイエスは剣を取って立ち上がったペテロに対して、「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる」(マタイ26:52)と言われています。黙示録19章13節には「その名は神の言葉」とあります。キリストは剣ではなく、神の言葉という武器で敵と戦われるのです。また従う天の軍勢は、鉄のよろいではなく「白い麻の布」(19:14)を着てキリストに従います。キリストの名のために殺されていった殉教者の群です。キリストの衣を染めている血は、敵の返り血ではなく、御自身の十字架で流された血と、後に従う殉教者の血です。「敵を愛し、迫害する者のために祈れ」と言われた地上のキリストは、「悪を御言葉によって裁かれる」天上のキリストと同じ方なのです。

・著者ヨハネも神の言葉を通してローマと戦っています。彼が迫害に苦しむ諸教会に送ったものは、武器ではなく、神の言葉を記した書簡でした。その書簡に書かれた幻を通して、彼は諸教会に、「体は殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな」(マタイ 10:28)と呼びかけています。ヨハネは「武器を取って戦え」とは一言も語りません。「神が戦って下さるから、あなた方は忍耐して待ちなさい」と語ります。へブル書は語ります「神の言葉は生きており、力を発揮し、どんな両刃の剣よりも鋭く、精神と霊、関節と骨髄とを切り離すほどに刺し通して、心の思いや考えを見分けることができる」(ヘブル4:12)。「この神の言葉に信頼し続けよ」とヨハネは述べています。

・19章後半には神の軍隊が地上の王たちと戦い、サタンに従う者たちを滅ぼし尽す様が描かれています。ある人々はここにハルマゲドンの戦いを読み取ります。しかし、これはあくまでもエゼキエル書やイザヤ書を引用した黙示的な表現であり、歴史上起こる出来事の予測ではないことに留意する必要があります。しかし、エホバの証人の人々は「キリストの再臨とその後に起きるハルマゲドン(黙示録16:16、終末における神の裁き)へ備えて生きよ」と唱えています。彼らは「ハルマゲドンが切迫している」と繰り返すことを通して、教団を拡大させてきました。最初のハルマゲドン予測は1914年で、年代計算が期待外れに終わるたびに(1920年、1925年、1975年など)、新たな年代預言や解釈が更新されています。そして脱会を目論む者には「ハルマゲドンが来た時に滅ぼされる」と警告し、教団から離れることを困難にしています。ヨハネ黙示録の誤った読み方がそこにあります。

・この世には悪が満ちているとしか思えない現実があることを私たちは知っています。黙示録の書かれた時代にはローマ皇帝を礼拝しないという理由で、キリスト教徒が殺されました。そのヨハネに神は天上の幻を見せ、神がいつまでも悪の存在を許される方ではないことを示されました。ヨハネは、与えられた黙示を文字にして、諸教会に書き送りました。それから200年後、ローマ帝国はキリストの前に跪きます。キリストを殺し、キリストに従う者たちを殺し続けたローマ帝国が、紀元313年にはキリスト教を公認し、380年には国教としました。そして今、ローマ繁栄の跡は遺跡に残るだけであり、他方キリストの教会は世界中に立ちます。正に黙示録の預言が成就し、「神の言葉は生きている」ことを示しました。

 

3.生きた神の言葉を信じ切る

 

・「神の言葉は生きている」、そのことにより頼む生き方こそ教会の信仰です。今日の招詞にマタイ5:43-44を選びました。次のような言葉です「あなたがたも聞いている通り、『隣人を愛し、敵を憎め』と命じられている。しかし、私は言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」。マルテイン・ルーサー・キングは、1963年に「汝の敵を愛せよ」という説教を行いました。当時、キングはアトランタのエベニーザ教会の牧師でしたが、黒人差別撤廃運動の指導者として投獄されたり、教会に爆弾が投げ込まれたり、子供たちがリンチにあったりしていました。そのような中で行われた説教です。

・キングは言います「イエスは汝の敵を愛せよと言われたが、どのようにして私たちは敵を愛することが出来るようになるのか。イエスは敵を好きになれとは言われなかった。我々の子供たちを脅かし、我々の家に爆弾を投げてくるような人をどうして好きになることが出来よう。しかし、好きになれなくても私たちは敵を愛そう。何故ならば、敵を憎んでもそこには何の前進も生まれない。憎しみは憎しみを生むだけだ。また、憎しみは相手を傷つけると同時に憎む自分をも傷つけてしまう悪だ。自分たちのためにも憎しみを捨てよう。愛は贖罪の力を持つ。愛が敵を友に変えることの出来る唯一の力なのだ」と彼は聴衆に語りかけます。前にご紹介しましたが、2001年以来のアフガニスタン・イラクとの戦争で死亡したアメリカ兵は総計6316名ですが、帰国後に自殺した米軍帰還兵は6570名です。200万人の米軍帰還兵のうち50万人がPTSDを病み、薬物中毒やアルコール依存になり、その果てに自殺しています。キングが語るように、「憎しみは相手を傷つけると同時に憎む自分をも傷つけてしまう悪」なのです。

・説教の最後で彼は敵対者に語りかけます「我々に苦難を負わせるあなた方の能力に対し、苦難に耐える我々の能力を対抗させよう。あなた方のしたいことを我々にするがいい。そうすれば我々はあなた方を愛し続けるだろう。我々はあなた方の不正な法律には従わない。我々を刑務所に放り込むがいい。それでも我々はあなた方を愛するだろう。我々の家庭に爆弾を投げ、我々の子供らを脅すがいい、それでも我々はあなた方を愛するだろう。覆面をした暴徒どもを真夜中に我々の家庭に送り込み、我々を打って半殺しにするがよい、それでも我々はなおあなた方を愛するだろう。しかし、我々は耐え忍ぶ能力によってあなた方を摩滅させることを覚えておくがいい。何時の日か我々は自由を勝ち取るだろう。しかし、それは我々自身のためだけではない。我々はその過程であなた方の心と良心に強く訴えて、あなた方を勝ち取るだろう。そうすれば我々の勝利は二重の勝利となろう」(信教出版社「汝の敵を愛せよ」から)。

・キングは「歴史を導く」神の力を信じました。だから自らの手で敵に報復しないで、裁きを神に委ねました。人間の愛は「隣人を愛し、敵を憎む」愛です。しかし、キングはそれを超える神の愛、アガペーを求めよと言います。彼は語ります「あなたがたは信仰者ではないか、信仰者であれば歴史は神が導かれることを信じて行け」と。キングの言葉にアメリカは変わりました。キングは1968年に暗殺されて死にましたが、アメリカは20年後の1986年に、キングの誕生日である1月15日を国民の祝日にしました。キングによって実践された神の言葉は、黙示録がローマを変えたように、アメリカを変えたのです。

・ヨハネ黙示録は単なる幻想の書ではありません。「イエスは生きておられ、勝利される」という現実の出来事がヨハネの時代に起こり、現代でも起こり続けているのです。そのことを私たちが知った時、天上の勝利が地上の勝利に変わります。その時、神の国がこの地上に降りてきます。ヨハネは語ります「私はまた、新しい天と新しい地を見た。最初の天と最初の地は去って行き、もはや海もなくなった。更に私は、聖なる都、新しいエルサレムが、夫のために着飾った花嫁のように用意を整えて、神のもとを離れ、天から下って来るのを見た」(21:1-2)。この世には闇の力としか思えないような苦難が現実にあります。その時、苦難だけを見つめていれば、その苦難は人を殺します。その時、「神には出来ないことはない」と信じて行為していった時、現実が変えられていきます。信仰とは、日曜日に教会に来て個人的な慰めを受ける、ただそれだけではない広がりを持ちます。私たちが毎日の生活の中で生きて働かれる神を証し続ける時、私たちを取り巻く現実が変わり始める出来事であることを今日確認したいと思います。

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