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日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2015年11月8日説教(創世記6:5-22、ノアの洪水と私たち)

投稿日:2015年11月8日 更新日:

2015年11月8日説教(創世記6:5-22、ノアの洪水と私たち)

 

1.洪水伝承

 

・創世記を読み続けています。今日から3回にわたって「ノアの洪水物語」を見ていきます。洪水伝説は世界各地に伝わっています。おそらくは氷河期末期に起こった地球温暖化により世界各地で氷河が融けて大洪水が起こり、その記憶が伝説となって伝わったものと思われます。物語は6章5節から始まります。創世記は語ります「主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。主は言われた『私は人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。私はこれらを造ったことを後悔する』」(6:5-7)。すべてが「良し」として創造された世界なのに(1:31)、いまや人は自分が神になろうとして、隣人を支配し、搾取する存在になり果てている。その事実を神は見られ、この世界をいったん滅ぼすことを決意されたと創世記記者は記します。

・創世記は6章9節から祭司資料と呼ばれる記事になります。この記事を書いたのはバビロン捕囚期の祭司たちで、彼らはイスラエルという国が滅亡し、自分たちが捕囚としてこのバビロンに流されたのは、自分たちが犯した罪の故だと考えています。6:11-13にその罪責告白があります「この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。神はノアに言われた『すべて肉なるものを終わらせる時が私の前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、私は地もろとも彼らを滅ぼす』」。捕囚地の祭司たちは自分たちの罪の現実を洪水物語という形で記述しているのです。しかし同時に、彼らは「神は一人の正しい者(ノア)に眼を留められ、彼を通して世界を再創造された」と記します。神が「すべて肉なるものを終わらせる」と宣言されたにもかかわらず、ノアを助けて下さったように、自分たちもいつの日か罪を赦されて故国に帰ることができる、その希望がノアの生存に託されています。

・この理解の根拠は箱舟の大きさです。神が指示された箱舟の大きさは次の通りです「箱舟の長さを三百アンマ(135メートル)、幅を五十アンマ(22.5メートル)、高さを三十アンマ(13.5メートル)にし、箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい」(6:3-5)。その大きさはエゼキエル40-43章、列王記上6-7章にあるエルサレム神殿と同じ大きさなのです(月本昭男「創世記注解」)。創世記記者(祭司資料記者)は箱舟の大きさをエルサレム神殿と同じくすることによって、箱舟建設の中にエルサレム神殿の再建、捕囚からの解放を祈願しています。その箱舟にはすべての生き物のつがいが一組ずつ入るように命じられます(6:17-22)。

 

2.洪水の始まり

 

・洪水の具体的な記事は創世記7章10節から始まります。「七日が過ぎて、洪水が地上に起こった。ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた」(7:10-11)。いよいよ雨が降り始めます。創世記は記します「雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。神が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた」(7:12-16)。「主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた」、ノア一族と動物たちの箱舟生活が始まったのです。

・創世記(祭司資料)によれば洪水は1年間続いたとあります(7:24、8:3)。何百種類の動物たち、大きいものから小さいものまで様々な動物たちに、毎日の食料を与え、排泄物の世話をするのは、大変な労力です。箱舟の中では動物たちの鳴き声が響き、騒々しい日々が続いていたことでしょう。神の眼から見れば、この地球はまさに宇宙船「地球」号という箱舟です。現在地球上には70億人の人が住んでいます。その日ごとの食料たるや膨大なものであり、その配分を巡ってあちらこちらで争いが起きています。「世界がもし100人の村だったら」という詩があります「100人のうち20人は栄養が十分ではない生活を送り、1人は飢餓の危機に瀕し、15人は肥満状態です」。仮に現実の箱舟の中でこのような不公平があれば混乱が収まることはないでしょう。神の眼から見れば、私たち人間は宇宙船・地球号に乗り込んで争いを繰り返している、箱舟の住民と同じです。

・ノア一族と動物たちの箱舟生活が始まった一方、箱舟の外では洪水が荒れ狂っています。創世記記者は書きます「地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った」(7:21-23)。ノアと箱舟にいたものたちを除いて、すべての生き物が死に絶えるという悲惨な出来事が起こされたのです。

 

3.晴れた日に箱舟を造る

 

・ノアの洪水物語は現代の私たちに何を語るのでしょうか。今日の招詞にマタイ24:37-39を選びました。次のような言葉です「人の子が来るのは、ノアの時と同じだからである。洪水になる前は、ノアが箱舟に入るその日まで、人々は食べたり飲んだり、めとったり嫁いだりしていた。そして、洪水が襲って来て一人残らずさらうまで、何も気がつかなかった。人の子が来る場合も、このようである」。今日科学者の間で「ノアの箱舟」の再評価が起きているそうです。地球温暖化により氷河や凍土が解け、海水面が上昇し、水没する島も出てきており、再び大洪水が起こることが懸念されているからです。地球温暖化の原因は二酸化炭素等の温室効果ガスの大量排出に伴うものだとされています。日本政府は、地球温暖化による影響をまとめ、2015年10月23日公表しました。それによれば「日本の年平均気温は19世紀末以降1.14度上昇し、温室効果ガスの排出が多いままだと今世紀末には20世紀末より4.4度上昇する。その結果、洪水、水害については、時間雨量が50ミリを超える短時間豪雨や総雨量が1000ミリを超える豪雨は現在より頻繁に発生して、降雨総量も今世紀末には最大3割増加し、防水施設の能力を超えた水害が頻発する。また高温による死亡リスクは、今世紀末には最大3.7倍になり、熱中症は、今世紀半ばに全国の大半の地域で搬送者が2倍以上になる」との予測をしています。

・地球温暖化の危険性に対応して、各国は1992年より気候変動枠組条約を結び、温室効果ガスの排出量抑制のための会議(地球サミット)を毎年開催しています。また前米国副大統領のアル・ゴアは「不都合な真実」(2006年)という映画を製作し、それを映像化しました。もはや「晴れた日に箱舟を造る」ノアを笑えない現実が来つつあるのです。招詞の言葉は、イエスが「人は危機が迫らないと行動しない。そして晴れた日に洪水の準備をするノアを笑った。しかし笑った人たちはみんな亡くなっていった。ノアの出来事は終末に向けて備えるように促している」との使信です。

・私たち日本人も2011年3月11日に千年に一度ともいわれる大津波(大洪水)を経験しました。ケセン語訳新約聖書を著した医師の山浦玄嗣さんは大洪水時の経験を語ります「3月11日午後2時46分、私が理事長の山浦医院の午後の診察が始まる時間でした。自宅のすぐ隣にある医院に入ると間もなく、大きな横揺れを感じました。揺れはいつまでも収まらず、船酔いみたいに吐き気がしてきた頃、ようやく静まりました。幸い自宅も医院も床上に浸水しただけで済みました。でも、津波でたくさんの友だちが死に、ふるさとは根こそぎ流された。黒い津波が押し寄せるのを見て、イエスが十字架で叫んだ『私の神よ、私の神よ、なぜ私をお見捨てになるのか』を思い出しました」(朝日新聞2011年5月16日夕刊から)。

・当時高校生だった芝田万奈さんは2011年夏に被災地を訪れた時の衝撃を次のように語ります「テレビの画面からは伝わってこなかった震災の現実がそこにあった。2011年の夏、当時高校三年生だった私が母親の実家である宮城県の東松島を訪れた際に目の当たりにしたのは、何もかも破壊された人々の生活そのものだった。他人ごとじゃない。親戚の赤ちゃんが亡くなったことを私はフィクションとしか受け入れることができなかった。あまりにも残酷すぎる事実を前に、私は人生を、以前のように何も考えずに送ることができなくなった。生きることの意味を考えるたびに自分を見失い、過ぎ去っていく厖大な時間と情報を私は焦点の合わない目で見つめていた」(「現代思想」2015年10月臨時増刊号から)。

・山浦さんも芝田さんも震災を契機に生きかたが変わってきました。もう「以前のように何も考えずに人生を送ることができなくなった」のです。私たちも洪水や災害を通して人生を変えられました。神はなぜノアを選ばれたのでしょうか。神は実はすべての人に箱舟の建造を命じられたのかもしれません。しかし多くの人はそれをあざ笑った。その中でノアだけが愚直にも「晴れた日に箱舟を造り始めた」。それを見て神はノアを正しい者と認められたのではないかと思います。そして私たちも「晴れた日に箱舟を造る」ことを命じられています。それは「いつ来るかわからない死に備えて、現在を大切に生きるように」との命令です。その生き方は、世の人々から見れば、窮屈な生き方でしょう。だからクリスチャン人口は全体の1%を超えません。私たちは「毎主日に教会の礼拝に参加し、収入の十分の一を献金として捧げ、自分がこの世では寄留者であることを認識し、まだ見ぬ永遠の国を熱望して」います。ノアの洪水をそれぞれに与えられたメッセージと読み替えるとき、私たちの生き方もまた変えられていくのです。私たちもまたノアのように、晴れた日に箱舟を造る生き方に変えられたのです。

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