江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2003年11月30日説教(ヨハネ7:25-31、キリストを待つ)

投稿日:2003年11月30日 更新日:

1.アドベントの時

・教会では、クリスマスの4週間前から、「アドベント(待降節)」に入る。アドベントはラテン語で「到来」と言う意味で、キリストが来られる時を待つことである。アドベント初日には講壇に4本のローソクを立て、1本だけに火をつける。そして、1週ごとに火をつけるローソクを増やしていき、クリスマス主日には4本のローソクみんなに火をともして、光であるイエス・キリストの来臨を祝う。教会暦はこのアドベントから始まる。私たちの1年は、正月に始まるのではなく、主が来られる時を待つことから始まる。

・旧約の人々も、聖書に予言されたメシヤ(救い主)が来られる日を待っていた。イエスが病人をいやされ悪霊を追い出されるのを見て、ある人は「この人こそメシヤだ」と信じたが、別の人は「この人は民衆を惑わす偽預言者だ」と信じなかった。それから2000年の時がたち、私たちは今「この人こそキリスト=救い主」と信じている。しかし、キリストが来られて、私たちはそれを信じる者とさせられたのに、私たちの日常生活は、キリストを知らない人々と同じように過ぎていく。私たちは本当に「キリストが来られた」ことを知っているのだろうか。今日はヨハネ福音書7章を通じて、そのことを考えてみたい。

・ヨハネ7章で描かれているのは、仮庵祭にエルサレムに行かれたイエスをめぐる騒動である。仮庵祭はぶどうや穀物の実りを感謝する秋の収穫祭であり、10月のエルサレムは神殿に参拝する人々で混雑していた。そのエルサレムでは、ユダヤの役人たちがイエスを捕らえようとして探していた(ヨハネ7:11)。当時の支配階層であった祭司やパリサイ人の偽善を批判されたイエスは、当局にとっては、憎らしい存在であった。他方、民衆の間でもイエスの評価は分かれていた。ある人は「イエスは良い人だ」といい、別の人は「イエスは世を騒がす偽メシヤだ」と言っていた。ただ、どちらもユダヤ当局の目を恐れて、公然と語る人はいなかった。

・ユダヤ当局からにらまれ、その所在を探されているイエスが、祭りの時にエルサレムに来られ、しかも人の集まる神殿の庭で教え始められた。群衆はイエスの大胆な行為に驚いた。「これは人々が殺そうとねらっている者ではないか。あんなに公然と話しているのに、何も言われない。議員たちは、この人がメシヤだということを、本当に認めたのではなかろうか」(ヨハネ7:25-26)。この人は誰だろう、本当にこの人はメシヤなのか、当局もこの人がメシヤであることを認めたのか。しかし、そんなことはない。メシヤは天から来ると言われているが、この人はガリラヤ出身だ。ガリラヤから預言者は出ない(ヨハネ7:41−42)。人々はイエスが来られたことは知っている。しかし、この方がメシヤ=キリストであるのかは知らない。だから、まだ傍観者、評論家だった。


2.人はどこから来て、どこへ行くのか

・人々のつぶやきを聞かれたイエスは大声で言われた「あなたたちは私のことを知っており、また、どこの出身かも知っている。しかし、・・・あなたたちは(私を遣わされた)その方を知らない。私はその方を知っている。私はその方のもとから来た者であり、その方が私をお遣わしになったのである。」(7:28-29)。人々はイエスが肉的にはガリラヤ生まれであることを知っているが、霊的にどこから来られたのかは知らない。信仰にとって、どこで生まれたかはたいした問題ではない。私は熊本の生まれであるが、私の生まれが東京であろうと熊本であろうと、私の本質には重要な意味は持たない。しかし、私の霊の故郷がどこであるかは、私の本質を決める問題だ。イエスがここで問われているのは「人間はどこから来て、どこに行くのか」という問いである。私たちは両親から生まれて、この世に来たことは知っている。しかし、生まれる前にどこにいたのかは知らない。また、私たちが自分が死ぬことは知っているが、死んだ後どこに行くのかは知らない。ただ、イエスだけはそれを知っておられた。イエスはご自分が「父から遣わされてここにいること、使命を終えれば父の元に帰る」ことを明確に認識しておられた。

・前に、人々はイエスの権威ある教えに驚いて言ったことがある。「この人は、学問をしたわけでもないのに、どうして聖書をこんなによく知っているのだろう」(7:15)。それに対しても、イエスは答えられている「私の教えは、自分の教えではなく、私をお遣わしになった方の教えである。この方の御心を行おうとする者は、私の教えが神から出たものか、私が勝手に話しているのか、分かるはずである」(7:16-17)。パリサイ派の人々はイエスが安息日に病人をいやされたことを問題にした。安息日は聖なる日であり、仕事をしてはいけないと律法に定めてあるのに、それを無視して安息日にいやしの業をされたからだ。イエスは言われる「父なる神が安息日に良いことをするのを、本当に禁じられると思うか。思わないだろう。思わないのに、何故律法を破ったことを問題にするのか」。

・これは今日でも問われなければいけない問題だ。中世の僧侶達は、神の名の下に、異端と目される人々を殺した。現代のアメリカは、神の名の下に、イラクに侵攻してイスラム教徒を殺している。しかし、神がそれを喜んでおられるのかは考えていない。聖書が教えることは、神が喜ばれることは他者を愛することであり、他者を殺すことではない。異端や異教の人々であれ、彼らが苦しむことを神が喜ばれるはずがない。人間は神を愛すると言いながら、結局は自分を愛し、自分と違う存在である人々を憎む存在なのだ。神の御心よりも、自分の思いの方が大事なのだ。私たちはそのような罪人なのだ。だから、神の子が死ななければ、救いに預かることが出来ない存在なのだ。

3.キリストを生きる

・今日の招詞にヨハネ7:37―38を選んだ。今日の話の結論部分だ。ヨハネは記す「祭りが最も盛大に祝われる終わりの日に、イエスは立ち上がって大声で言われた。『渇いている人はだれでも、私のところに来て飲みなさい。私を信じる者は、聖書に書いてあるとおり、その人の内から生きた水が川となって流れ出るようになる。』」

・仮庵の祭りは、収穫祭であるが、同時にイスラエルの民がエジプトを出て、荒野を旅したときに仮庵=天幕で過ごしたことを記念する時だ。荒野であるから、水は乏しかった。民は水がなくなると、「何故我々をエジプトから連れ出したのか。私や子供達を渇きで殺すためか」とつぶやいた(出エジプト記17:3)。神はモーセに「岩を杖で打て」と命じられ、モーセが打つとそこから水が出て、民は飲むことが出来た。それを記念して、仮庵の祭りの最終日には水注ぎの儀式が行われた。シロアムの池から採られた水が神殿に運ばれ、祭壇に注がれる。この水運びの行列を見て、イエスが立ち上がって言われた言葉が今日の招詞だ。

・「渇いている人は私のところに来なさい。私が生命の水である聖霊をあなたに与える。聖霊はあなたに満ち、もうあなたは一人で生きるのではなく、私と共に生きるようになる」。キリストが私の内に住まれるということは、私がもう傍観者ではなく、当事者になることだ。この人は「私の救い主なのだろうか」と議論するのではなく、この方を救い主として受け容れることだ。受け容れなければ、その人に恵みの水は来ず、その人はキリストを知らない。キリストが来られても、それが受容されない限り、私たちはキリストを無縁のままだ。ユダヤ人はイエスをキリストとして受け容れず、今日でもまだ待っている。彼らはまだ傍観者の人生を送っている。

・先日のラジオ番組(11月27日、21時、J-WAVE)で「出生前診断の是非」をめぐる話し合いが行われた。妊娠した母親の血液をトリプルマーカーという方法で検査すれば、胎児に遺伝子異常があるかどうかの診断が出来るようになり、検査の普及によって妊娠中絶が増えている。番組の中である婦人は言った「私の息子は重い障害を持って生まれた。もし、子供を生んだ10年前にこのような検査が可能であれば、悲劇は防げた」。この婦人は当事者だろうか。まだ、傍観者だ。その婦人に対して一人の青年が語りかけた「私は二分脊椎症として生まれた。障害があるため不自由な生活ではあるが、生まれてきて良かったと思っている。二分脊椎症は出生前診断で事前に判明する病気だ。もし、私が今の時代に生まれてこようとしたら、障害児として生まれることを許されなかったのだろうか」。婦人はこの発言の前に沈黙した。婦人には子供の命を奪う権利はないのだということを、当事者が述べたからだ。当事者として生きるとは、この青年のように、自分が生かされている存在であることを知ることだ。

・私たちは、神の憐れみにより生かされている。私たちは罪のために死ぬべき存在であるのに、イエスが代わりに死んでくれたことにより、今を生かされている存在なのだ。この生命は私たちのものではなく、神から預かったものだ。それを知った時、私たちはイエスに対して傍観者にはなれない。アドベントは待つ時であると言った。何を待つのか、キリストが来られる時を待つ。キリストはいつ来られるのか。キリストは私たちが、イエスを救い主と受け容れた時に、私たちのところに来られる。聖書は語りかける。「キリストに対して、当事者になりなさい。教会は来ても来なくとも良いような場所ではなく、キリストを通して父と出会う場所だ。私たちが当事者として人生を生きるための場所なのだ。」

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