江戸川区南篠崎町にあるキリスト教会です

日本バプテスト連盟 篠崎キリスト教会

2015年10月7日祈祷会(使徒言行録7:1-60、ステファノの説教と殉教)

投稿日:2019年8月21日 更新日:

1.ステファノの説教、アブラハムからモ−セへ

・大祭司が始めた審問を遮るようにステファノは説教を始めた。ステファノは律法に違反し、神殿を冒涜した罪で告発されたが、実はモーセを軽視し、神殿をないがしろにしているのはユダヤ人であることを立証するために、イスラエルの歴史を回顧する。イスラエルの信仰の歴史を通してユダヤ人たちがいかに神に逆らってきたかを論証するためである。
―使徒7:1-3「大祭司が『訴えのとおりか』と尋ねた。そこで、ステファノは言った。『兄弟であり父である皆さん、聞いてください。私たちの父アブラハムがメソポタミアにいて、まだ、ハランに住んでいました時、栄光の神が現れ、「あなたの土地と親族を離れ、私が示す土地へ行け」と言われました。』」
・ステファノは、アブラハムの人生を語り続ける。アブラハムの名は「多くの国民の父」を意味し、偶像崇拝の地カルデアに生まれたが、「約束の地カナンに行け」との神の声を聴いて出立する。
―使徒7:4-5「『アブラハムはカルデア人の土地を出て、ハランに住みました、神はアブラハムを・・・ハランから今あなたがたが住んでいる土地にお移しになりましたが、そこでは財産を何もお与えになりませんでした。一歩の幅の土地さえも。しかし、その時、まだ子供のいなかったアブラハムに対して「いつかその土地を所有地として与え、死後には子孫たちに相続させる」と約束なさったのです』」。
・神はアブラハムと契約を結び、契約はイサクからヤコブへと代々伝承され、ヤコブから生まれたヨセフは奴隷に売られ、エジプトに渡る。やがて来るイスラエル一族の受け皿となるためである。
―使徒7:8―10「『そして、神はアブラハムと割礼による契約を結ばれました。こうして、アブラハムはイサクをもうけて八日目に割礼を施し、イサクはヤコブを、ヤコブは十二人の族長をもうけて、それぞれ割礼を施したのです。この族長たちはヨセフを妬んで、エジプトへ売ってしまいました。しかし、神はヨセフを離れず、あらゆる苦難から助け出して、エジプト王ファラオのもとで恵みと知恵をお授けになりなした。そしてファラオは、彼をエジプトと王の家全体をつかさどる大臣に任命したのです。』」
・その後に起こったカナンの飢饉がイスラエル民族のエジプト定住を導く。
―使徒7:11-14「『ところが、エジプトとカナンの全土に飢饉が起こり、大きな苦難が襲い、私たちの先祖は食糧を手に入れることができなくなりました・・・そこで、ヨセフは人を遣わして、父ヤコブと七十五人の親族一同を呼び寄せました。』」
・やがてヤコブ(イスラエル)一族はエジプトに定住する。神がエジプトでイスラエルを民族として育んでくださったとステファノは歴史を振り返る。
―使徒7:15-17「『ヤコブはエジプトへ下って行き、やがて彼も私たちの先祖も死んで、シケムへ移され、かつてアブラハムがシケムで・・・買っておいた墓に葬られました。神がアブラハムになさった約束の実現する時が近づくつれ、民は増え、エジプト中に広がりました。』」
・時代が移るに従い、ヨセフのことを知らない王たちはイスラエル民族を迫害し始める。モ−セはイスラエルの民の危難の時、救済者として生まれた。
―使徒7:18-22「『それは、ヨセフのことを知らない別の王が、エジプトの支配者になるまでのことでした。この王は、私たちの同朋を欺き、先祖を虐待して乳飲み子を捨てさせ、生かしておかないようにしました。このときに、モ−セが生まれたのです・・・モ−セはエジプト人のあらゆる教育を受け、すばらしい話や行いをする者となりました。』」
・ステファノは当初は、御言葉を語る側ではなく、民の世話をする執事として選ばれた。しかし賜物を与えられ、使徒に負けない働きをしたと使徒言行録は伝えている。そのステファノが語った長い弁明が「ステファノの説教」として7章に記されている。

2.ステファノの説教、モ−セからソロモンまで

・ステファノは「神はモーセを立てて先祖をエジプトから救い出されたが、それでも民はモーセを拒否して偶像礼拝にふけった」とユダヤ人批判の方向に話しを移し始める。
―使徒7:23−29「『四十歳になった時、モ−セは兄弟であるイスラエルの子らを助けようと思いたちました。それで、彼らの一人が虐待されているのを見て助け、相手のエジプト人を打ち殺し、ひどい目に遭っていた人の仇を討ったのです。モ−セは、自分の手を通して、神が兄弟たちを救おうとしておられることを、彼らが理解してくれると思いました。しかし、理解してくれませんでした・・・モ−セは・・・逃げ出し、そして、ミディアン地方に身を寄せている間に二人の子をもうけました。』」
・神はモ−セを指導者に選び、民をエジプトから救い出した。神の恩寵が民族を自立させた。
―使徒7:30−36「『四十年たったとき、シナイ山に近い荒野において、柴の燃える炎の中で、天使がモ−セの前に現れました。モ−セはこの光景を見て驚きました。もっとよく見ようとして近づくと、主の声が聞こえました。「私は、あなたの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である」と。モ−セは恐れおののいて、それ以上見ようとしませんでした。そのとき、主はこう仰せになりました。「・・・私は、エジプトにいる私の民の不幸を確かに見届け、また、その嘆きを聞いたので、彼らを救うために降って来た。さあ、今あなたをエジプトへ遣わそう。」・・・この人がエジプトの地でも紅海でも、また四十年の間、荒野でも、不思議な業としるしを行って人々を導き出しました。』」
・ステファノはアモス書5:25−26を引用してユダヤ人の偶像礼拝の罪を痛烈に批判した。
―使徒7:38−43「『けれども先祖たちはこの人に従おうとせず、彼を退け、エジプトを懐かしく思い、アロンに言いました。「私たちの先に立って導いてくれる神々を造って下さい・・・そこで神は顔を背け、彼らが天の星を拝むままにしておかれました。それは預言者の書にこう書いてある通りです。「イスラエルの家よ。お前たちは荒れ野にいた四十年の間、私に生贄と供え物を、献げたことがあったか。お前たちは拝むために造った偶像、モレクの御輿やお前たちの神ライファンの星を担ぎ回ったのだ。だから、私はお前たちを、バビロンの彼方へ移住させる。」』」
・モーセを冒涜したのは私ではなく、あなた方の先祖たちだと論証した後、ステファノは神殿の問題に切り込む「あなたがたは私が神殿を冒涜したというが、人の造った神殿に神が住まわれないと最初に言ったのはソロモン王ではなかったか」と。
―使徒7:46−50「『ダビデは神の御心に適い、ヤコブの家のために神の住まいが欲しいと願っていましたが、神のために家を建てたのはソロモンでした。けれども、いと高き方は人の手で造ったようなものにはお住みになりません。これは、預言者も言っているとおりです。「主は言われる。『天は私の王座、地は私の足台、お前たちは、私にどんな家を建ててくれると言うのか。私の憩う場所はどこにあるのか。これらは、すべて手で造ったものではないか。』」

3、ステファノの殉教

・ステファノはユダヤの指導者を告発する「モーセと神殿を冒涜しているのは、まさにあなたたちなのだ」。
―使徒7:51−53「かたくなで、心と耳に割礼を受けていない人たち、あなたがたは、いつも聖霊に逆らっています。あなたがたの先祖が逆らったように、あなたがたもそうしているのです。いったい、あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が一人でもいたでしょうか。彼らは正しい方が来られる事を預言した人々を殺しました。そして今や、あなたがたはその方を裏切る者、殺す者となった。天使たちを通して律法を受けた者なのに、それを守りませんでした。」
・自分たちの罪を批判されたユダヤ人は、理性を失い、怒りに燃えて、ステファノ目がけ殺到した。ステファノは逃げることなく、この苦難を受けていく。彼の最後は十字架のイエスと重なる(ルカ23:34「〔そのとき、イエスは言われた「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです。〕」)。
―使徒7:54−56「人びとはこれを聞いて激しく怒り、ステファノに向かって歯ぎしりした。ステファノは聖霊に満たされ、天を見つめ、神の栄光と神の右に立っておられるイエスとを見て、『天が開いて、人の子が神の右に立っておられるのが見える』と言った。人々は大声で叫びながら耳を手でふさぎ、ステファノ目がけて一斉に襲いかかり、都の外に引きずり出して石を投げ始めた。証人たちは、自分の着ている物をサウロという若者の足元へ置いた。人々が石を投げつけている間、ステファノは主に呼びかけて、『主イエスよ、私の霊をお受けください』と言った。それから、ひざまずいて、『主よ、この罪を彼らに負わせないでください』と大声で叫んだ。ステファノはこう言って眠りについた。」
・このステファノ殺害にパウロも参加している(8章1節前半「サウロは、ステファノの殺害に賛成していた」)。ここに初めてサウロ、後のパウロが登場する。教父アゥグスティヌスは「教会にパウロが与えられたのは、ステファノの祈りによる」と述べている。アメリカ聖公会の司祭バーバラ・テイラーは語る「ユダヤ教徒とキリスト教徒を分けたのは『モーセを通して語られた神の言葉に忠実であり続けるか、それとも神がイエスを通して言葉を新しく語り直しておられると信じるか』である」(バーバラ・テイラー「天の国の種」)。ステファノの信仰は旧来の律法観の中にあるユダヤ教徒には受け入れ難いものだった。いつかは対立が起きる。それをルカはステファノの長い弁明を通して説明している。

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