1.イエスの誕生
・イエスはローマ皇帝アウグストゥスの時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとルカは記す。
−ルカ2:1-4「そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た。これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。人々は皆、登録するためにおのおの自分の町へ旅立った。ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った」。
・ベツレヘムこそメシアが生まれると預言された場所であった(ミカ5:1)。ルカは皇帝の勅令によって、メシアは神が選んで置かれた場所に生まれられたと述べる。当時の人々はローマ皇帝を救い主と呼んだ。しかしルカは武力で支配するローマ皇帝がメシアではなく、イエスこそメシアであり、その支配は永遠に続くと宣言する。
−ルカ2:11「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである」。
・ところがベツレヘムには、イエスが宿るべき場所はなく、幼子は家畜小屋でお生まれになったとルカは記す。
−ルカ2:6-7「彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである」。
・宿屋には彼らの泊まるべき場所はなかった。人の子には枕するところもなく、十字架以外の王座もなかった。神はその子を極貧の中で、最も卑しい者として生まれさせた。初代教会はここに神の恵みを見た。
−ピリピ2:6-8「キリストは、神の身分でありながら、神と等しい者であることに固執しようとは思わず、かえって自分を無にして、僕の身分になり、人間と同じ者になられました。人間の姿で現れ、へりくだって、死に至るまで、それも十字架の死に至るまで従順でした」。
・イエスの誕生を見守ったのは、当時の社会から排除されていた羊飼いたちだった。世の支配者たちは誰もメシアの誕生を知らなかった。
−ルカ2:8-12「その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。天使は言った『恐れるな。私は、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである』」
2.イエスの幼年・少年時代
・イエスは8日目に割礼を受けられ、ヨシュア(主は救い)と名づけられた。そして清めの期間(40日)が過ぎて、神殿に奉げものを捧げるために連れて行かれた。両親が奉げたのは貧者の奉げものとされた鳩であった。
−ルカ2:21-24「八日たって割礼の日を迎えたとき、幼子はイエスと名付けられた。これは、胎内に宿る前に天使から示された名である。モーセの律法に定められた彼らの清めの期間が過ぎたとき、両親はその子を主に献げるため、エルサレムに連れて行った。・・・山鳩一つがいか、家鳩の雛二羽をいけにえとして献げるためであった」。
・その神殿で不思議な出来事があった。老預言者シメオンは「自分はメシアに出会った」と讃歌を歌い始める。
−ルカ2:28-32「シメオンは幼子を腕に抱き、神をたたえて言った『主よ、今こそあなたは、お言葉どおり、この僕を安らかに去らせてくださいます。私はこの目であなたの救いを見たからです。これは万民のために整えてくださった救いで、異邦人を照らす啓示の光、あなたの民イスラエルの誉れです』」
・シメオンは神を讃美するが、讃美の後半はイエスの十字架を預言している。メシアは信じる者には救いの石であるが、信じないものにはつまづきの石になると彼は預言する。
−ルカ2:34-35「シメオンは彼らを祝福し、母親のマリアに言った『御覧なさい。この子は、イスラエルの多くの人を倒したり立ち上がらせたりするためにと定められ、また、反対を受けるしるしとして定められています。あなた自身も剣で心を刺し貫かれます。多くの人の心にある思いがあらわにされるためです』」。
・人々が求めたのは「自分たちをローマの支配から解放し、ダビデ・ソロモンの栄華をもたらすメシア」であった。それに対してイエスは「平和の君」であった。不満な人々は神の救済を拒否し、救主を磔にする。私たちも自己の栄華をイエスの中に求めた時、同じようにつまづくだろう。救いは心の問題であり、物質の問題ではない。
−イザヤ53:8「捕らえられ、裁きを受けて、彼は命を取られた。彼の時代の誰が思い巡らしたであろうか。私の民の背きのゆえに、彼が神の手にかかり、命ある者の地から断たれたことを」。